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吉崎さんサイド(微笑み)
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「佐々木さんにカフェに行かないかって誘われたんです」
聞いてくださいとか言うから聞いたら、突然そんなことを言った。
しかしその直後には自分の言ったことなど忘れたように炊き込みご飯を美味そうに頬張り、食べ過ぎは良くないと自問自答している。
「佐々木?」
誰も何も言わないからか、偶々報告のために部屋に来ていた小原が嬢ちゃんに誰だそれはと尋ねている。
「あ、小原さんは知らないですよね」
嬢ちゃんは当たり前のように小原に佐々木の説明をし始める。ヤクザ2人と並んで平然とメシを食っているというこの状況に嬢ちゃんはいつの間にか順応していた。
いや、そもそも嬢ちゃんが慣れるほど来てる小原がおかしいんだがな。この頃は俺に用事があると見計らったように飯の用意ができた頃に現れる。確信犯だろお前。
「王子ぃ?てことは男か。もしかして嬢ちゃんついに男が……」
ガタッと音がした。どうやら俺が膝で机を蹴ってしまったらしい。
「大丈夫ですか?」
「……ああ」
何かを勘違いしたらしい小原は俺と目が合うと、つくねの乗った皿を嬢ちゃんの方に押した。
まあそれでいいか。
「吉崎さんのこのつくね美味しいですからね。お弁当にもよく入ってますけど、冷めても美味しいんです」
嬢ちゃんは誰も何も言っていないのにつくねは美味しいと連呼している。悪い気はしなかった。
「ああ、そりゃあよかった」
とりあえず落ち着こうと残っていた汁物を一息で飲み干す。
「で?行くのか?」
「せっかく誘っていただいたので……」
そう言って嬢ちゃんは誘われるに至った経緯を話し始める。
「これがオフィスラブってやつか」
何を思ったのか、小原はそう言って大根の漬物に箸を伸ばす。お前、さっきからそれ何枚目だ。あとなんだその感想、頭に米でも詰まってるのか。
嬢ちゃんは羨ましげに小原と手元の米を交互に見ている。またダイエットだとか考えているんだろう。嬢ちゃんは痩せる必要ないと思うが、どうやらこの頃服がきついらしい。俺には縮んだか服がそもそも小さい気がしてならない。
「普通の色恋話なんて長いこと聞いてねぇな」
「いや、まだ色恋とかそんなのでは……佐々木さんのお姉さんの代わりみたいですし。それより普通じゃない色恋話って、むしろそちらの方が気になるんですが」
何が恥ずかしいのかわからないが嬢ちゃんは話題を変える。小原はしばらく脳内でネタ探しをすると、笑いながら話し始めた。
「某俳優の愛人が実はこっちの関係者のオンナで、早い話が美人局だったとか」
手始めなのかわりと有名な話から話し始める。怪しげな話に嬢ちゃんが食いついたからか、小原は饒舌になっていた。
「アイドルがスポンサーの社長に枕しようとして本気になっちまった話とか」
段々とゴシップ記事の記者でも知らない情報になっていってるが、まあ嬢ちゃんが誰かに話すとも思えねぇからほっとくか。
「変わり種だと、ゲイバーのママが客の一人に惚れ込んで商売になってねぇとか」
変わり種すぎるだろそれは。
知らなくてもいいことを知り過ぎる前にやめとけと嬢ちゃんを見ると、何を思ったのか少し考えた末に言った。
「ハーブとか覚えた方がいいんでしょうか」
「は?」
どうしてそうなった。
嬢ちゃんに限って薬に興味持つわけがねぇだろと思ったら、その通りだった。料理の話かよ。
「これはその、もし料理の話題になったらどうしようって話で」
「話を逸せばいいだろ」
「それもそうですけど」
そこで嬢ちゃんは自分の茶碗の中身が空になっている事に気付いたらしい。名残惜しげに茶碗を置いた嬢ちゃんはどこからかメモとペンを取り出して俺の方を見る。
「作り方、教えてください」
教えたところで全く別のものが出てくる気がしてならないんだが。
先週俺が留守にしている間に嬢ちゃんが作った自称ポテトサラダを思い出す。あれは悲劇だった。
だが教えてほしいと言われて無下にもできねぇから、俺は参考にしたサイトを教えることにした。
聞いてくださいとか言うから聞いたら、突然そんなことを言った。
しかしその直後には自分の言ったことなど忘れたように炊き込みご飯を美味そうに頬張り、食べ過ぎは良くないと自問自答している。
「佐々木?」
誰も何も言わないからか、偶々報告のために部屋に来ていた小原が嬢ちゃんに誰だそれはと尋ねている。
「あ、小原さんは知らないですよね」
嬢ちゃんは当たり前のように小原に佐々木の説明をし始める。ヤクザ2人と並んで平然とメシを食っているというこの状況に嬢ちゃんはいつの間にか順応していた。
いや、そもそも嬢ちゃんが慣れるほど来てる小原がおかしいんだがな。この頃は俺に用事があると見計らったように飯の用意ができた頃に現れる。確信犯だろお前。
「王子ぃ?てことは男か。もしかして嬢ちゃんついに男が……」
ガタッと音がした。どうやら俺が膝で机を蹴ってしまったらしい。
「大丈夫ですか?」
「……ああ」
何かを勘違いしたらしい小原は俺と目が合うと、つくねの乗った皿を嬢ちゃんの方に押した。
まあそれでいいか。
「吉崎さんのこのつくね美味しいですからね。お弁当にもよく入ってますけど、冷めても美味しいんです」
嬢ちゃんは誰も何も言っていないのにつくねは美味しいと連呼している。悪い気はしなかった。
「ああ、そりゃあよかった」
とりあえず落ち着こうと残っていた汁物を一息で飲み干す。
「で?行くのか?」
「せっかく誘っていただいたので……」
そう言って嬢ちゃんは誘われるに至った経緯を話し始める。
「これがオフィスラブってやつか」
何を思ったのか、小原はそう言って大根の漬物に箸を伸ばす。お前、さっきからそれ何枚目だ。あとなんだその感想、頭に米でも詰まってるのか。
嬢ちゃんは羨ましげに小原と手元の米を交互に見ている。またダイエットだとか考えているんだろう。嬢ちゃんは痩せる必要ないと思うが、どうやらこの頃服がきついらしい。俺には縮んだか服がそもそも小さい気がしてならない。
「普通の色恋話なんて長いこと聞いてねぇな」
「いや、まだ色恋とかそんなのでは……佐々木さんのお姉さんの代わりみたいですし。それより普通じゃない色恋話って、むしろそちらの方が気になるんですが」
何が恥ずかしいのかわからないが嬢ちゃんは話題を変える。小原はしばらく脳内でネタ探しをすると、笑いながら話し始めた。
「某俳優の愛人が実はこっちの関係者のオンナで、早い話が美人局だったとか」
手始めなのかわりと有名な話から話し始める。怪しげな話に嬢ちゃんが食いついたからか、小原は饒舌になっていた。
「アイドルがスポンサーの社長に枕しようとして本気になっちまった話とか」
段々とゴシップ記事の記者でも知らない情報になっていってるが、まあ嬢ちゃんが誰かに話すとも思えねぇからほっとくか。
「変わり種だと、ゲイバーのママが客の一人に惚れ込んで商売になってねぇとか」
変わり種すぎるだろそれは。
知らなくてもいいことを知り過ぎる前にやめとけと嬢ちゃんを見ると、何を思ったのか少し考えた末に言った。
「ハーブとか覚えた方がいいんでしょうか」
「は?」
どうしてそうなった。
嬢ちゃんに限って薬に興味持つわけがねぇだろと思ったら、その通りだった。料理の話かよ。
「これはその、もし料理の話題になったらどうしようって話で」
「話を逸せばいいだろ」
「それもそうですけど」
そこで嬢ちゃんは自分の茶碗の中身が空になっている事に気付いたらしい。名残惜しげに茶碗を置いた嬢ちゃんはどこからかメモとペンを取り出して俺の方を見る。
「作り方、教えてください」
教えたところで全く別のものが出てくる気がしてならないんだが。
先週俺が留守にしている間に嬢ちゃんが作った自称ポテトサラダを思い出す。あれは悲劇だった。
だが教えてほしいと言われて無下にもできねぇから、俺は参考にしたサイトを教えることにした。
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