お隣さんはヤのつくご職業

古亜

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吉崎さんサイド(微笑み)2

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……こいつが佐々木か。
用があり偶然立ち寄った歓楽街で、嬢ちゃんが男と歩いていた。
嬢ちゃんが言っていた通り、ムカつくくらい爽やかな優男だった。
そして嬢ちゃんの方も俺に気付いたらしい。笑いを堪えるような表情で俺の方を見ていた。だがそれに一緒に歩いていた亀田が気付く。


「おい、何笑ってんだ。さっきから頭の顔見てニヤニヤしやがって」
「た、ただの通りすがりです!そこの方のことなんてこれっぽっちも知らないデスよ!」

嬢ちゃんの声は若干裏返っている。わかるやつが見たらバレるぞ。

「き、気のせいですよ」
「は?さっきからこっちガン見してたろ」

していないと嬢ちゃんは首を振るが、嘘が下手すぎる。さっきから目が泳ぎまくって疑わない方が難しいレベルだ。

「亀田、カタギの嬢ちゃんに迷惑かけんな」

その辺にしておけと静止するが、嬢ちゃんが怪しすぎるせいで亀田は引き下がらなかった。

「でも頭、こいつ明らかに頭の顔見て笑ってたんですよ」
「人の顔を見て笑うなんて、おかしな顔だなんて思ってませんよ」
「ああ?」

悪気はないんだろうが、もうちょっと落ち着け。
今すぐその辺の路地裏に引っ張りこんで説教でもしたいところだが、さすがに犯罪だなそれは。

「今ガン付けてるのはテメェだろ」
「でも頭……」
「また吹っ飛ばされてぇか?」

亀田には悪いが、この場で俺が止められるのはこっちの方だから仕方がない。
渋々ながらも嬢ちゃんたちを無視しようとして、ここまではよかった。

「あっ」

嬢ちゃんは思わずといった様子で亀田の顔を見る。
さっきの吹っ飛ばすという俺の発言で思い出してしまったらしい。俺が嬢ちゃんの部屋の壁を破壊した時に吹っ飛ばされてきたのがこいつだということに。

「何思い出したんだ?やっぱりどっかの組の女か?」

亀田は完全に嬢ちゃんに疑いの目を向けている。今のは俺も少し悪かったとはいえ、頼むから嬢ちゃんはこれ以上喋るな。
それが通じたのか、嬢ちゃんは目をばたばたと泳がせたままわざとらしく手を叩く。

「ちょっと急用が……明日のお弁当の材料買わないと」
「明日は日曜なのに弁当か?」
「会社がブラックなので日曜も仕事です!」

まあそれは事実だな。でもそれ持ち帰り残業だろ。家でやるだろその仕事。
亀田は懐に手を伸ばしかけている。さすがにまずい。

「お前はなんなんだ?」

そこで亀田は佐々木の存在に目を留めて凄んでみせる。

「こいつの男か?彼氏なら色々と知って……ぐふっ」

しまった思わず手が出た。この優男が嬢ちゃんの彼氏?二度と聞きたくねぇ。

「か、頭……?」
「だからカタギをビビらせんな。だいたいこんな単純すぎるわかりやすいいかにも能天気でアホっぽい女に俺をどうこうできるわけねぇだろ」
「演技って可能性も」
「こんなアホの演技する意味があるか?名女優でもここまで真性のアホの演技は難しいぞ」
「……確かに」

嬢ちゃんは散々アホと言われたせいか何か言いたげに若干俺を睨んでいる。だから、その顔を亀田こいつに見られるとまずいんだよ。

「アホな嬢ちゃんはほっといて行くぞ」

亀田はまだ疑いを残しつつも嬢ちゃんがアホであることに納得はしたらしく大人しく従った。
後ろで優男が嬢ちゃんに大丈夫かと声をかけていたが、気にしないようにした。
そうして途中で余計なトラブルを挟みつつ、目的の店に到着した。ビルの地下に入っている目立たないバーだ。

「あら遠野組の。ママなら恋の病で奥で休んでるわ」

ドアを開けると店員の男が妙に上手いウィンクをきめつつ言った。

「わかった。俺が奥に行く」

この店は昔からあるゲイバーだった。ここなら程よく目立たず、男同士の距離が多少近くても違和感はないから時折密会場所として使っていた。その代わりに用心棒として組が店を守る、そういう約束だ。
今日はここの店主と話し合いがしたかったんだが、前に小原が言っていたのはマジだったのか。
カウンターの裏に回って奥に入ろうとした時だった。ドアベルが鳴り、来客を知らせる。

「あらトシちゃん。悪いんだけど開店時間まだなのよ」

どうやら常連がフライングをしたらしい。まあ、俺の知ったことじゃねぇか。そう思ったが。

「待ってください」

そいつはどういうわけか俺の腕を掴んできやがった。

「悪いが俺は店員じゃねぇ」

そう言って腕を振り払いつつ振り返ると、そこにはさっきまで嬢ちゃんと一緒にいたはずのあの優男がいた。
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