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ヤクザさんとおでん2
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お風呂掃除を終えて戻ってきたら、テーブルの上にグツグツと煮えるおでんが堂々と鎮座していた。
その横には千切りにしたキャベツの胡麻和えと焼きナスが。おでんだけでも十分嬉しいのにさらに2品も。
「やっぱり頭の料理は美味そうだな」
小原さんが嬉しそうにテーブルの端に座る。私もおでんを前に正座した。
「お前の分の玉子ねぇからな」
「そこはちゃんと我慢します」
「あ、半分ずつしますか?」
「嬢ちゃん、あんまりこいつを甘やかすな」
別に甘やかしてるつもりはありませんけど……あ、小原さんちょっと残念そう。小原さんを見ているとどうも犬っぽいなと思ってしまう。犬というか、お腹空かしたわんこ?見た目完全に借金取りの怖いお兄さんなのに。
「にしてもおでんですか。あいつ思い出しますね」
「あいつ?」
「ウチの組、犬みたいなやつがいるんだよ」
「え、自覚あったんですか小原さん」
「……は?」
しまった。ちょうど考えてたからつい……
「ええと、なんですかあの白いふわふわしたの」
誤魔化そう。そうだそれがいい。
小原さんは怪訝そうに私を見つつ、ちらっと鍋を確認する。
「はんぺんだろ」
「はんぺんって練り物じゃないんですか?」
「練り物だぞ」
「いや、私の知ってるはんぺんは茶色い……」
「茶色?はんぺんは白だろ」
小原さんは不思議そうに言う。どういうことだろう。
「地域差あるからな。嬢ちゃん、出身どこだ」
「名古屋ですけど」
「え、じゃあ味噌か?味噌で茶色いだけじゃねぇの?」
「いえ、家のおでんは普通に出汁でしたけど……あ、でも大根とかは味噌つけて食べます」
「これに味噌付けるのか?確かに何にでも味噌とか小豆乗せてるイメージあるが」
いや、なぜここで小豆。さすがにおでんには乗せませんからね?
にしても、そうか地域差か。あんまり意識してなかったな。わざわざ外でおでん食べたりしないし。
「じゃあこれ嬢ちゃんには味濃いかもしれねぇな」
「あ、確かに汁の色濃いですね」
「濃いのかこれ」
「そういえばうどんの汁もこんな感じなような……甘辛いんですか」
「そういや西の方行った時にコンビニの食ったら物足りなかったな」
「関東風と関西風とあるからな。嬢ちゃん家は関西風だったんだろ」
なんだろう。こののほほんとしたおでん談義。まさかヤクザさんたちとおでんの地域差について話す日が来るとは。
とりあえず犬云々については誤魔化せたし食べようかな。おでんの話で小原さんの注意は完全におでんに向かっていた。
吉崎さんがおたまを鍋に入れて箸を手に取ったから、私も箸を取る。
「いただきます」
私が手を合わせると、2人も倣うようにして手を合わせる。小原さんもいただきますってする人だったんだ。ちょっと意外。見かけで判断しちゃダメだね。
「うわ、すごいふわふわしてる……」
とりあえず話題にのぼったはんぺんとやらをチョイスしてみる。けっこう一切れ大きくないですかこれ。しかもふわふわしててつかみどころがない。
味の想像がつかない。まあ、食べてみればわかるかな。
見るからに熱そうだから、箸で切って一口サイズにする。ふわふわしてるけど、確かに練り物っぽさがあった。
「へえ……味染みてて美味しいですね」
ふわふわなだけあって、甘辛い出汁が染み込んでてそれが溢れてくる。
にしても、汁の味が家のとは全然違うなぁ。でもこれはこれで美味しい。さすがにこれに味噌はつけない。
けっこうはんぺんが大きいから残して次の具材へ。やっぱりここは王道の大根だよね。
ああ、大根おたまですくったら柔らかいのか横にいた大根を削ってしまった。ごめんなさい。でもすごく美味しそうなのはわかった。
器に移した大根に箸を入れる。綺麗にぱかっと割れて、出汁が染み込んでる黄金色の部分が内側まで広がっていた。中心の方に少し白っぽい部分が残ってるけど、むしろそれも嬉しい。
口に入れるとほろほろ解けて、出汁の旨味が広がる。中心の方に残る大根の風味と食感もたまらない。
次いで取った玉子も、半分に割って黄身に出汁を染み込ませると……あー、美味しい。なんで黄身ってこうも合うんだろ。丼ものとか汁物とか、とりあえず玉子乗せとけば正解ってとこあるよね。
「美味いですね。頭の料理食えるとか、走り回って情報集めてきた甲斐がありました」
「じゃあ明日は倍走れ」
「明日もこの時間に報告に来ていいってことですか」
「お前は飯食ってから来い」
「別腹です」
うーん、この短時間でなんとなく小原さんという人のことがなんとなくわかった気がする。
その横には千切りにしたキャベツの胡麻和えと焼きナスが。おでんだけでも十分嬉しいのにさらに2品も。
「やっぱり頭の料理は美味そうだな」
小原さんが嬉しそうにテーブルの端に座る。私もおでんを前に正座した。
「お前の分の玉子ねぇからな」
「そこはちゃんと我慢します」
「あ、半分ずつしますか?」
「嬢ちゃん、あんまりこいつを甘やかすな」
別に甘やかしてるつもりはありませんけど……あ、小原さんちょっと残念そう。小原さんを見ているとどうも犬っぽいなと思ってしまう。犬というか、お腹空かしたわんこ?見た目完全に借金取りの怖いお兄さんなのに。
「にしてもおでんですか。あいつ思い出しますね」
「あいつ?」
「ウチの組、犬みたいなやつがいるんだよ」
「え、自覚あったんですか小原さん」
「……は?」
しまった。ちょうど考えてたからつい……
「ええと、なんですかあの白いふわふわしたの」
誤魔化そう。そうだそれがいい。
小原さんは怪訝そうに私を見つつ、ちらっと鍋を確認する。
「はんぺんだろ」
「はんぺんって練り物じゃないんですか?」
「練り物だぞ」
「いや、私の知ってるはんぺんは茶色い……」
「茶色?はんぺんは白だろ」
小原さんは不思議そうに言う。どういうことだろう。
「地域差あるからな。嬢ちゃん、出身どこだ」
「名古屋ですけど」
「え、じゃあ味噌か?味噌で茶色いだけじゃねぇの?」
「いえ、家のおでんは普通に出汁でしたけど……あ、でも大根とかは味噌つけて食べます」
「これに味噌付けるのか?確かに何にでも味噌とか小豆乗せてるイメージあるが」
いや、なぜここで小豆。さすがにおでんには乗せませんからね?
にしても、そうか地域差か。あんまり意識してなかったな。わざわざ外でおでん食べたりしないし。
「じゃあこれ嬢ちゃんには味濃いかもしれねぇな」
「あ、確かに汁の色濃いですね」
「濃いのかこれ」
「そういえばうどんの汁もこんな感じなような……甘辛いんですか」
「そういや西の方行った時にコンビニの食ったら物足りなかったな」
「関東風と関西風とあるからな。嬢ちゃん家は関西風だったんだろ」
なんだろう。こののほほんとしたおでん談義。まさかヤクザさんたちとおでんの地域差について話す日が来るとは。
とりあえず犬云々については誤魔化せたし食べようかな。おでんの話で小原さんの注意は完全におでんに向かっていた。
吉崎さんがおたまを鍋に入れて箸を手に取ったから、私も箸を取る。
「いただきます」
私が手を合わせると、2人も倣うようにして手を合わせる。小原さんもいただきますってする人だったんだ。ちょっと意外。見かけで判断しちゃダメだね。
「うわ、すごいふわふわしてる……」
とりあえず話題にのぼったはんぺんとやらをチョイスしてみる。けっこう一切れ大きくないですかこれ。しかもふわふわしててつかみどころがない。
味の想像がつかない。まあ、食べてみればわかるかな。
見るからに熱そうだから、箸で切って一口サイズにする。ふわふわしてるけど、確かに練り物っぽさがあった。
「へえ……味染みてて美味しいですね」
ふわふわなだけあって、甘辛い出汁が染み込んでてそれが溢れてくる。
にしても、汁の味が家のとは全然違うなぁ。でもこれはこれで美味しい。さすがにこれに味噌はつけない。
けっこうはんぺんが大きいから残して次の具材へ。やっぱりここは王道の大根だよね。
ああ、大根おたまですくったら柔らかいのか横にいた大根を削ってしまった。ごめんなさい。でもすごく美味しそうなのはわかった。
器に移した大根に箸を入れる。綺麗にぱかっと割れて、出汁が染み込んでる黄金色の部分が内側まで広がっていた。中心の方に少し白っぽい部分が残ってるけど、むしろそれも嬉しい。
口に入れるとほろほろ解けて、出汁の旨味が広がる。中心の方に残る大根の風味と食感もたまらない。
次いで取った玉子も、半分に割って黄身に出汁を染み込ませると……あー、美味しい。なんで黄身ってこうも合うんだろ。丼ものとか汁物とか、とりあえず玉子乗せとけば正解ってとこあるよね。
「美味いですね。頭の料理食えるとか、走り回って情報集めてきた甲斐がありました」
「じゃあ明日は倍走れ」
「明日もこの時間に報告に来ていいってことですか」
「お前は飯食ってから来い」
「別腹です」
うーん、この短時間でなんとなく小原さんという人のことがなんとなくわかった気がする。
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