腐れヤクザの育成論〜私が育てました〜

古亜

文字の大きさ
12 / 23

第5段階②

しおりを挟む
サングラス越しに目が合った。深田さんは私のいるブースに近付いてくる。

「えーっと……」

知り合いと明かしてはいけない気がする。しかし普通に「参加者」としての対応すれば難しくないか。

「全部2部ずつくれ」
「それはちょっと……」

林檎先生がちょっとビビりながらも、一旦止めようとする。多分これは深田さんが転売ヤーだと疑われているな。私は深田さんのこと知ってるから違うって断言できるけど……側から見たら男性が複数部買いにくるって、まず疑ってかかってしまう。

「1部ずつでしたら」
「汚すかもしれねぇだろ。そんなの耐えられねぇ」
「既刊は少しなら通販にも在庫がありますから」
「じゃあ新刊3冊」

あ、これは双方よろしくない方に向かってる……こうなったら私が。

「あの、林檎先生。この人がコピー本手伝ってはくれた人です」
「え、ねこみや先生彼氏いたの?」
「なんでそうなるんですか!?いやこちらのふ……この人は腐った知り合いです」

どうして鬼槍オンリーにいらっしゃるのかは後で聞こう。ついでにその手に既に下げてる薄い本についても後で見せ……問いたださなくては。

「まあ、ねこみや先生のお知り合いなら……ああでも既刊がもう少ないから1冊だとありがたいんですけど」
「既刊なら私も持ってるので、言ってくださればお貸ししますよ」
「……そうか?じゃあ新刊2冊と既刊1冊で頼む」

そうして無事お会計は終了。しかし私は林檎先生とちょうど戻ってきたなべしき先生に囲まれる。

「え、このどっからどう見てもヤバい人だけど、知り合い?しかもコピー本手伝わせたって」
「戻ってきたらヤクザに恫喝されてるみたいでびっくりしたよ。ねこみや先生の知り合いなんですか?」
「まあ、そうです……」

ヤクザっぽい見た目ですけどれっきとしたヤクザで組長です!なんて言えるわけがない。しかし今はイベント中。これでなんとかなるか……?

「イベント初めてみたいで、コスプレできるって聞いて再現しやすそうなあの、クロキの黒服で来ちゃったみたいですね」

咄嗟に浮かんだ強面スーツが某賭博漫画の黒服だったので、そういうことにしておく。というかそういうことにしといて深田さん!

「本気すぎて怖かったけど、コスプレかぁ。そういうことなら納得。本物っぽさならヨカゼさんといい勝負だよ」

その回答を聞いて一安心した。とりあえず誤魔化せた……かな?
本物っぽいというか、本物ですからねこの人。
バレやしないかと内心冷や汗が。というかお付きの人……榎木さんとかこのこと知ってるのか?
聞きたいことが多すぎるけど、とりあえず今日はコスプレということで通すしかない。

「コスプレは知ってるんだが、そういうつもりは……」
「あ、そういえばあっちのブースでロロック先生が新刊出してるみたいですけど行かれました?」

わざとらしかったかな。いやしかし、実際これが普段着なんだよね。少しずつ見慣れてきたとはいえ、こんばイベントにいらっしゃると改めて存在感あるなこの人。
深田さんはまだロロック先生のところには行っていなかったようで、そちらに向かって下さった。
とりあえずこれで安心……

「えっと、ねこみやさんが一緒の方がいいんじゃない?」

あ。
しまった、とりあえずこの場をなんとか……って思ったけど、ロロック先生にはよろしくないよね。
ロロック先生は個人参加でブースには一人きり。しかも線の細いちょっと気が弱そうな女性。深田さん行かせたのまずかったかもしれない。
ちなみにロロック先生はそんな見た目とは裏腹に結構際どい……乱れる汗と筋肉など、時に激しめの尊い描写がお得意なお人。
フォローしてます好きです。

「私と林檎さんでしばらく見てるから行ってきたら?」

戻ってきたばかりのなべしき先生まで気を利かせてくださった。

「ありがとうございます。ちょっと話をしてきます!」

思った通り、ロロック先生は突然近づいてきた怖すぎる男に怯えていた。

「えと……お金は持ってません」

カツアゲか何か勘違いされている。申し訳ないので私はすぐに間に入った。

「すみませんロロック先生、この人私……あ、私にゃの輪ってサークルのねこみやって者なんですけど、見た目が怖いだけで立派に腐った人です。この格好はうっかりクロキの黒服のコスプレをしてしまったからです」
「は、はあ……?」

ロロック先生の頭には疑問符が。当然だ。

「おい、コスプレってどういうことだよ」
「もはやコスプレより目立ってるからです!今はそういうことにしておいてください!」

小声で釘を刺して、私はロロック先生の方を見る。

「すみません。ただ新刊をいただきたかっただけなんです」
「既刊も1部ずつくれ」

わお爆買い。
まあ常識の範囲内なら深田さんが何買おうが自由なんですけどね。でもあとで見せてください。

「ありがとうございます。えーっと、すごい、リアルですね」
「本物みたいですよね。私も知り合いながらびっくりしましたから。あ、これよろしければうちの新刊です」

迷惑?をおかけしたのでとりあえず手渡させていただく。

「こちらこそ驚きすぎちゃってすみません。あの、よろしければ参考までにお写真撮らせていただいても……」
「写真?何に使う気だ?」
「い、いえ!やっぱり大丈夫です……!」

声があんまりにも低かったからか、ロロック先生はまだ何も言ってないのに写真はやめた。まあ、一応リアル組長さんだから、こんなところにいる写真が撮られたら困るだろうに。
私はロロック先生にお礼を伝えてブースを離れる。

「どうしてわざわざ来られたんですか?というかそもそも、深田さんって鬼槍読んだんですか?」
「先生の作業手伝った後に調べたら、このイベント限定も多いんだろ?逃したら後悔する気がしたんだ。あと鬼槍は……先生の過去絵にある作品は大体読んでる。むしろそっちから入ったから鬼槍に関しては竹×梅で問題ない」

……え、私のせいで相当毒されていらっしゃる?また逆カプ問題が生じなかったのは喜ばしいけど、私が過去に描いたやつ全部、原作読んでくださってたの?
まさかここまでとは……

「あ、そうだ。深田さんって梅次郎推しですか?」
「推し……?ああ、まあ気に入ってるが、鬼槍は全体的に面白いからな」

箱推しですねありがとうございます。ちなみに私は霧時さんって毒舌系クールキャラが好きです。

「じゃあ少し外行きませんか?コスプレ参加の人たちが集まるみたいです」

林檎先生となべしき先生にはお店番の時間を変えてもらったので、さっきヨカゼさんが教えてくれた合わせに行けるかもしれない。

「あー、竹浪とか霧時とかの格好したやついたな。正直これまではキャラの格好して何が楽しいんだか分からなかったが、知ってるキャラだと『おっ』ってなるよな……」

これは興味があるということで良いのかな?じゃあ善は急げと言うし、行ってみよう!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています

紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、 ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。 「もう君は、僕の管理下だよ」 退院と同時に退職手続きは完了。 住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。 外出制限、健康管理、過保護な独占欲。 甘くて危険な“保護生活”の中で、 私は少しずつ彼に心を奪われていく――。 元社畜OL×執着気味の溺愛社長 囲い込み同棲ラブストーリー。

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

ことりの古民家ごはん 小さな島のはじっこでお店をはじめました

如月つばさ
ライト文芸
旧題:ことりの台所 ※第7回ライト文芸大賞・奨励賞 都会に佇む弁当屋で働くことり。家庭環境が原因で、人付き合いが苦手な彼女はある理由から、母の住む島に引っ越した。コバルトブルーの海に浮かぶ自然豊かな地――そこでことりは縁あって古民家を改修し、ごはん屋さんを開くことに。お店の名は『ことりの台所』。青い鳥の看板が目印の、ほっと息をつける家のような場所。そんな理想を叶えようと、ことりは迷いながら進む。父との苦い記憶、母の葛藤、ことりの思い。これは美味しいごはんがそっと背中を押す、温かい再生の物語。

処理中です...