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二章 悪役令嬢との出会い
2-2 出会いは突然に
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「やっーと着いたぁ……」
森の出口、目の前は緑……ではなく、赤や青、黄なんかの色とりどりの屋根をした屋台がたくさん。
ざわざわざわ、と人の声で満ちていて、久々に都会に来たんだ、と実感させられた。
久々に街に来たので、若干テンション高めに鼻歌交じりで通りをどんどん進む。そろそろ目的の店が見えてくるはずだ。野菜と調味料は、ここの通りの店が一番安かったからあそこで買ってしまいたい。
ここらへんだよね、と一旦立ち止まって通りを見回す。
前来たときと変わっている店が数店舗あるようで、来たのがだいぶ前のせいで記憶が薄らなのもあってなかなか見つけられない。
そのうえ私、それなりの方向音痴だからそもそも場所が間違っている。とう可能性もなくはない。目的地に毎回着けない程の酷いやつではないけれども、あまり行かない場所なんかに行こうとすると一度は迷う。……あー、合っていてくれよ……
「お、あそこだ」
野菜と果物のイラストの看板。たぶんあれだ。
そう思い、店へと一歩を踏み出そうとした。……はずなのだが、私の右手は正反対の方向にくいっと引っ張られた。
……誰だろう。
「あの、どうかされましたか?」
深くフードを被った、背格好的におそらく女の子。私の服の袖をぐっと掴んでいる。その子はもごもごと口籠って数秒後、小さな絞り出すような声で、独り言のように返事が返ってくる。
「……お願い…… 助けて、ください……」
それからはどう声を掛けても、俯いて、困りきったようにしている。
「どうしたものか……」
とりあえず、そのまま手を引いて、目の前にあった喫茶店だと思われる看板の店に入った。
「いらっしゃいませ」
でも、そんなことが頭から吹き飛んでしまうほど、私を衝撃が襲っていた。
長い、丁寧に整えられたのであろう艶のある、腰のあたりまで波打った紺の髪。透き通るような、陶器のようにすべすべで真っ白い肌。少し吊っていて、長い睫毛に縁取られたアッシュグレイの瞳。
「彼女」だと、すぐに分かった。
……アンジェラ・ノワール公爵令嬢。死の森を領地の中に含む、今私の住む公爵領のご令嬢。
…………そして、彼女はこの世界の物語の悪役だ。
森の出口、目の前は緑……ではなく、赤や青、黄なんかの色とりどりの屋根をした屋台がたくさん。
ざわざわざわ、と人の声で満ちていて、久々に都会に来たんだ、と実感させられた。
久々に街に来たので、若干テンション高めに鼻歌交じりで通りをどんどん進む。そろそろ目的の店が見えてくるはずだ。野菜と調味料は、ここの通りの店が一番安かったからあそこで買ってしまいたい。
ここらへんだよね、と一旦立ち止まって通りを見回す。
前来たときと変わっている店が数店舗あるようで、来たのがだいぶ前のせいで記憶が薄らなのもあってなかなか見つけられない。
そのうえ私、それなりの方向音痴だからそもそも場所が間違っている。とう可能性もなくはない。目的地に毎回着けない程の酷いやつではないけれども、あまり行かない場所なんかに行こうとすると一度は迷う。……あー、合っていてくれよ……
「お、あそこだ」
野菜と果物のイラストの看板。たぶんあれだ。
そう思い、店へと一歩を踏み出そうとした。……はずなのだが、私の右手は正反対の方向にくいっと引っ張られた。
……誰だろう。
「あの、どうかされましたか?」
深くフードを被った、背格好的におそらく女の子。私の服の袖をぐっと掴んでいる。その子はもごもごと口籠って数秒後、小さな絞り出すような声で、独り言のように返事が返ってくる。
「……お願い…… 助けて、ください……」
それからはどう声を掛けても、俯いて、困りきったようにしている。
「どうしたものか……」
とりあえず、そのまま手を引いて、目の前にあった喫茶店だと思われる看板の店に入った。
「いらっしゃいませ」
でも、そんなことが頭から吹き飛んでしまうほど、私を衝撃が襲っていた。
長い、丁寧に整えられたのであろう艶のある、腰のあたりまで波打った紺の髪。透き通るような、陶器のようにすべすべで真っ白い肌。少し吊っていて、長い睫毛に縁取られたアッシュグレイの瞳。
「彼女」だと、すぐに分かった。
……アンジェラ・ノワール公爵令嬢。死の森を領地の中に含む、今私の住む公爵領のご令嬢。
…………そして、彼女はこの世界の物語の悪役だ。
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