連合航空艦隊

エ号作戦

エ号作戦発動

アメリカ海軍は日本海軍が東海岸を攻撃しようとしていることをすでに把握していた。
これは暗号解読による成果であったが、東海岸に兵力を集中できていないのが現実であった。
理由はイギリスにある。
イギリスは1939年からの戦いによりその兵力を消耗しており、アメリカ陸海軍の援護が無いと本土防衛が危うい情勢であった。
そのため、アメリカ軍は航空隊や護衛駆逐艦、さらには旧式戦艦などをイギリスに派遣してブリテン島を守護していたが、翻ってソ連は悲惨であった。
ソ連へのレンドリースはかなり前から行われ、ドイツ軍を大いに苦しめていたが日本が参戦してからインド洋が封鎖され、1942年にはスエズ運河が封鎖された。
これによりソ連へのレンドリースは実質的に不可能となり、ソ連は着実に弱ってきていた。
加えて”日本陸軍が北進を開始するのではないか”という情報がソ連上層部に行き渡り、極東へも兵力を配備しなければならなくなった。
実際、日本陸軍は膠着していたインド戦線以外の陸上戦線を抱えておらず、関東軍などを中心としてソ連へ侵攻する作戦計画が立案されていた。
加えて、前線に配備されている兵力も順次強化されていたが、帝国政府は対ソ戦に断固反対して結局は行われなかったのである。
だが、ソ連はもしもに備えて30万の兵力を満州国境に張り付けとおかねばならなかった。
これらが積もりに積もった結果、ソ連軍はスターリングラードを失陥。
ドイツ軍にドン・クバンからコーカサスへの侵入を許してしまい、ソ連は窮地に立たされていた。
このソ連の劣勢はドイツのイギリスへの圧力増加につながり、さらなる兵力をイギリスへ送らざるを得なかった。
そのため、東海岸には少しづつ再建されている空母機動部隊や高速戦艦などの海上兵力は十分なのに対して航空兵力はパナマ沖海戦時の基地航空隊と同等程度であった。


1943年3月2日。
この日、ついに二式艦戦が全艦に行き渡りエ号作戦が発動された。
43隻もの空母が参加するこのエ号作戦は建軍史上最大の作戦に違いなく、その航空兵力はもはや3000機を超えていた。
これほどまでの物量を支えるにはやはりそれ相応の輸送船が必要であり、また今回は大遠征となるため実に60隻以上の輸送船が作戦に参加する。
全てを合わせると実に300隻を超える艦隊兵力となるのである。
流石にこれをひとまとめにすることは至難の業の為、連合航空艦隊司令部は第一航空艦隊と第二航空艦隊をもって第一機動部隊、第三航空艦隊と第四航空艦隊をもって第二機動部隊を編成することとした。
第一機動部隊は古賀に率いられて少し早い2月15日に欧州へ向けて出立しており、3月3日には小沢率いる第二機動部隊が出港する予定だった。
「これほどの大作戦は壮観だな」
連合航空艦隊司令長官室に訪れていた堀は山本にそう声をかけた。
「あぁ、全くだ」
山本の顔に笑みは無かった。