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FS作戦
作戦前夜
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軍令部と参謀本部の協議の結果、次の作戦はFS作戦、つまり米豪遮断作戦と決まった。
これに山本五十六をはじめとする連合艦隊司令部は難色を示した。
「豪州など捨て置けば良い。我々がなさねば成らないのはハワイの占領だ!」
ただこればかりは永野も頑として譲らなかった。
「ハワイ攻略中に後ろを刺されれば本末転倒だ。少なくともポートモレスビーは占領しておかねばならない」
ただし永野もそれ以上南への戦線の拡大は考えていなかった。
あくまでハワイ攻略のための前座。
永野は山本にそう伝えて、山本も仕方なく頷いた。
当初、連合艦隊司令部はポートモレスビー攻略は“軽空母2隻で十分だろう“と考えていた。
だがこれに小沢は反対した。
「前にも申しました通り、空母戦力は分散せず集中して運用すべきです。それに、米軍の空母部隊が出てこない確証はどこにもありません。もし、敵空母が出てきた時、軽空母ではただ一方的に撃破されるだけです!」
これは正論であり、山本も同意した。
それに気をよくした小沢は少し踏み込んだ要望を出した。
「ポートモレスビー攻略は言わばハワイ攻略の予行練習のようなものです。ですのでここで戦力の出し惜しみをせず、大和、長門、陸奥の3戦艦で艦砲射撃を加えてはいかがでしょう」
「なるほど確かにそれは筋が通っている。だが大和は連合艦隊の旗艦だぞ?流石に前線に出すわけには…」
「ではいっそのこと連合艦隊司令部を陸上げしては如何でしょう。米太平洋艦隊もその司令部を陸に置いていますし」
これには山本も解答に窮した。
だが考えてみると大和に司令部を置き続ける限り、大和は戦いに参加できない。
せっかく4年近くの歳月をかけて建造した戦艦を腐らせるのはいかにももったいなかった。
(ここは、大和も出すべきだな)
山本はついに決心して小沢の要望に頷いたのだった。
対するアメリカ太平洋艦隊はどうかというと、実はかなり危機的状況であった。
真珠湾空襲によって燃料タンクが全滅し、その余波で他の施設もダメージを喰らった。
また撃沈された戦艦についても、サルベージを行おうにも各種設備が壊滅的打撃を受けており費用対効果は全く見込めなかった。
そのためこれらを自沈処分としたわけだが、この瓦礫の撤去にも時間がかかった。
そして真珠湾空襲後に撃沈された空母エンタープライズとレキシントンの埋め合わせもできていなかった。
開戦前、アメリ海軍は7隻の空母を保有していたがそのうち2隻は開戦早々に撃沈され、大西洋にも空母を割かねばならないため太平洋に回せるのは多くても4隻だった。
だがその4隻も真珠湾の燃料タンクが破壊された影響で2隻ずつでしか行動できなかった。
これは燃料補給をタンカーに頼る影響である。
そんな折りに“日本軍がポートモレスビーを攻略しようとしている!“という情報が舞い込んできた。
本来なら戦力の逐次投入は避けるべきで新しく太平洋艦隊司令長官に就任していたチェスター・ニミッツ大将もそう考えていたが、ここで艦隊を出さなければアメリカがオーストラリアを見捨てたことになる。
こうなるとオーストラリアの脱落は必至であり、艦隊を向かわせないという選択肢は無かった。
(ポートモレスビーは何としてでも守らねば)
ニミッツはとにかく艦隊の準備を急いだ。
これに山本五十六をはじめとする連合艦隊司令部は難色を示した。
「豪州など捨て置けば良い。我々がなさねば成らないのはハワイの占領だ!」
ただこればかりは永野も頑として譲らなかった。
「ハワイ攻略中に後ろを刺されれば本末転倒だ。少なくともポートモレスビーは占領しておかねばならない」
ただし永野もそれ以上南への戦線の拡大は考えていなかった。
あくまでハワイ攻略のための前座。
永野は山本にそう伝えて、山本も仕方なく頷いた。
当初、連合艦隊司令部はポートモレスビー攻略は“軽空母2隻で十分だろう“と考えていた。
だがこれに小沢は反対した。
「前にも申しました通り、空母戦力は分散せず集中して運用すべきです。それに、米軍の空母部隊が出てこない確証はどこにもありません。もし、敵空母が出てきた時、軽空母ではただ一方的に撃破されるだけです!」
これは正論であり、山本も同意した。
それに気をよくした小沢は少し踏み込んだ要望を出した。
「ポートモレスビー攻略は言わばハワイ攻略の予行練習のようなものです。ですのでここで戦力の出し惜しみをせず、大和、長門、陸奥の3戦艦で艦砲射撃を加えてはいかがでしょう」
「なるほど確かにそれは筋が通っている。だが大和は連合艦隊の旗艦だぞ?流石に前線に出すわけには…」
「ではいっそのこと連合艦隊司令部を陸上げしては如何でしょう。米太平洋艦隊もその司令部を陸に置いていますし」
これには山本も解答に窮した。
だが考えてみると大和に司令部を置き続ける限り、大和は戦いに参加できない。
せっかく4年近くの歳月をかけて建造した戦艦を腐らせるのはいかにももったいなかった。
(ここは、大和も出すべきだな)
山本はついに決心して小沢の要望に頷いたのだった。
対するアメリカ太平洋艦隊はどうかというと、実はかなり危機的状況であった。
真珠湾空襲によって燃料タンクが全滅し、その余波で他の施設もダメージを喰らった。
また撃沈された戦艦についても、サルベージを行おうにも各種設備が壊滅的打撃を受けており費用対効果は全く見込めなかった。
そのためこれらを自沈処分としたわけだが、この瓦礫の撤去にも時間がかかった。
そして真珠湾空襲後に撃沈された空母エンタープライズとレキシントンの埋め合わせもできていなかった。
開戦前、アメリ海軍は7隻の空母を保有していたがそのうち2隻は開戦早々に撃沈され、大西洋にも空母を割かねばならないため太平洋に回せるのは多くても4隻だった。
だがその4隻も真珠湾の燃料タンクが破壊された影響で2隻ずつでしか行動できなかった。
これは燃料補給をタンカーに頼る影響である。
そんな折りに“日本軍がポートモレスビーを攻略しようとしている!“という情報が舞い込んできた。
本来なら戦力の逐次投入は避けるべきで新しく太平洋艦隊司令長官に就任していたチェスター・ニミッツ大将もそう考えていたが、ここで艦隊を出さなければアメリカがオーストラリアを見捨てたことになる。
こうなるとオーストラリアの脱落は必至であり、艦隊を向かわせないという選択肢は無かった。
(ポートモレスビーは何としてでも守らねば)
ニミッツはとにかく艦隊の準備を急いだ。
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