24 / 67
夜間防衛
しおりを挟む
「やはり来たか。」
撤退の連絡が司令部を埋め尽くす中、石原は冷静に現状を分析する。
「敵軍の推定兵力は10万、ただこれには民兵も多く含まれることを考えるとこの敗北はこちらの兵力不足ということか。」
報告をみていると、まだ大多数の部隊は前線に到着できていなかった。
それなら時間が解決するのだが、この作戦自体にある問題を抱えていた。
「兵力が揃ったとしても、平坦が持つかどうかですね。」
辻も同じことを考え二ていたようだ。
二号作戦は電撃戦に近いという性質上、平坦線が伸び切ってしまう。
それを解消するために、列車なども総動員していたが鉄道が少なく遅延が発生していた。
「空輸はどうだ?」
こうなることを見越して、100式輸送機を用いた輸送作戦を事前に計画していた。
「それが、天候の急変などで思うように輸送できていません。」
石原は2択を迫られた。
防戦に徹して平坦が回復するまで待つか、このまま全兵力が前線に到着した次第攻撃を行うかだった。
防戦に徹した場合、敵に損害を与えつつ継続的な作戦が実行でき2号作戦の成功確率は高い。
だが、湖北から突出部に配備されている部隊が脱出する恐れがあり蒋介石の心を動かすことは難しくなる。
なので、こちらの選択肢はできるだけ選びたくない。
自ずと、1つに絞られた。
「全部隊が前線に到着したのち、直ちに湖北周辺で防衛線を築いているだろう10万の敵と決戦を挑む!」
「では、そのように伝えておきます。私たちも動きますか?」
石原は荷物をまとめながら答えた。
「無論だ!」
「上からは何と?」
部隊長が電報を読み終えると少しやつれた顔の兵士が聞く。
「全軍が集結するまで、現在地を防衛せよとのことだ。」
その兵士は暗い顔をした。
「増援が到着するのは早くても明日、ということは今日の夜が正念場ですね。」
すでに、斥候兵から敵部隊が攻撃の準備をしている情報を得ていた。
「そうだ。総員持ち場につけ。我々は周辺に展開する友軍を合計しても1万にも満たない。チハ車があり、榴弾砲もあるがやはり兵力の差は覆し難い。だが、ここで敗北すれば作戦にも大きく支障が出る。踏ん張れ。」
あたりを暗闇が包み、小銃を持つ手もかじかんで震えるほどの寒さになったころ。
突如として、上空に閃光が走った。
照明弾だ。
「来るぞ!射撃用意!」
号令を聞き、精神を集中させる。
日本軍は、比較的に標高が高い場所に防衛陣地を置いており、有利ではあった。
ラッパの音と共に、幾万もの雄たけびが近づいてきた。
「射撃始め!」
引き金を引き、反動を抑えながら弾倉を変える。
戦車は砲台の役割を果たし、榴弾砲も次々に敵兵士を空へ高くつき上げる。
だが、敵の砲撃も各所に命中していた。
「くそっ!第7小隊の半分がやられた!誰か援護を!」
それを聞き、隣の兵士たちに後は任せ移動する。
「来てくれたか!ありがたい!」
礼を最後まで聞かずに向かってくる敵兵士に発砲した。
その後は、地獄だった。
そこかしこから叫ぶ声が聞こえた。
「東で防衛線が突破された!」
「大丈夫だ。戦車が制圧してくれる。」
「負傷者多数!救護班、早く来てくれ!」
「しっかりしろ!死ぬな!」
「俺の足がっ!」
それらが収まったのは日の出近くだった。
「何とか生き残った…。」
陣地には、かなりの負傷者と戦死者が並べられていた。
それでも、敵軍と比べれば幾分もましだ。
陣地の下では、おびただしい数の死体が地表を覆っていた。
足の踏み場もないほどに。
この戦いでは、一部は撤退したものの戦線の維持には成功。
死傷者は1000人ほどだった。
国民党軍の死傷者はいまだ定かではない。
だが、1万は優に超える兵士の亡骸が転がっているのは誰もが分かった。
撤退の連絡が司令部を埋め尽くす中、石原は冷静に現状を分析する。
「敵軍の推定兵力は10万、ただこれには民兵も多く含まれることを考えるとこの敗北はこちらの兵力不足ということか。」
報告をみていると、まだ大多数の部隊は前線に到着できていなかった。
それなら時間が解決するのだが、この作戦自体にある問題を抱えていた。
「兵力が揃ったとしても、平坦が持つかどうかですね。」
辻も同じことを考え二ていたようだ。
二号作戦は電撃戦に近いという性質上、平坦線が伸び切ってしまう。
それを解消するために、列車なども総動員していたが鉄道が少なく遅延が発生していた。
「空輸はどうだ?」
こうなることを見越して、100式輸送機を用いた輸送作戦を事前に計画していた。
「それが、天候の急変などで思うように輸送できていません。」
石原は2択を迫られた。
防戦に徹して平坦が回復するまで待つか、このまま全兵力が前線に到着した次第攻撃を行うかだった。
防戦に徹した場合、敵に損害を与えつつ継続的な作戦が実行でき2号作戦の成功確率は高い。
だが、湖北から突出部に配備されている部隊が脱出する恐れがあり蒋介石の心を動かすことは難しくなる。
なので、こちらの選択肢はできるだけ選びたくない。
自ずと、1つに絞られた。
「全部隊が前線に到着したのち、直ちに湖北周辺で防衛線を築いているだろう10万の敵と決戦を挑む!」
「では、そのように伝えておきます。私たちも動きますか?」
石原は荷物をまとめながら答えた。
「無論だ!」
「上からは何と?」
部隊長が電報を読み終えると少しやつれた顔の兵士が聞く。
「全軍が集結するまで、現在地を防衛せよとのことだ。」
その兵士は暗い顔をした。
「増援が到着するのは早くても明日、ということは今日の夜が正念場ですね。」
すでに、斥候兵から敵部隊が攻撃の準備をしている情報を得ていた。
「そうだ。総員持ち場につけ。我々は周辺に展開する友軍を合計しても1万にも満たない。チハ車があり、榴弾砲もあるがやはり兵力の差は覆し難い。だが、ここで敗北すれば作戦にも大きく支障が出る。踏ん張れ。」
あたりを暗闇が包み、小銃を持つ手もかじかんで震えるほどの寒さになったころ。
突如として、上空に閃光が走った。
照明弾だ。
「来るぞ!射撃用意!」
号令を聞き、精神を集中させる。
日本軍は、比較的に標高が高い場所に防衛陣地を置いており、有利ではあった。
ラッパの音と共に、幾万もの雄たけびが近づいてきた。
「射撃始め!」
引き金を引き、反動を抑えながら弾倉を変える。
戦車は砲台の役割を果たし、榴弾砲も次々に敵兵士を空へ高くつき上げる。
だが、敵の砲撃も各所に命中していた。
「くそっ!第7小隊の半分がやられた!誰か援護を!」
それを聞き、隣の兵士たちに後は任せ移動する。
「来てくれたか!ありがたい!」
礼を最後まで聞かずに向かってくる敵兵士に発砲した。
その後は、地獄だった。
そこかしこから叫ぶ声が聞こえた。
「東で防衛線が突破された!」
「大丈夫だ。戦車が制圧してくれる。」
「負傷者多数!救護班、早く来てくれ!」
「しっかりしろ!死ぬな!」
「俺の足がっ!」
それらが収まったのは日の出近くだった。
「何とか生き残った…。」
陣地には、かなりの負傷者と戦死者が並べられていた。
それでも、敵軍と比べれば幾分もましだ。
陣地の下では、おびただしい数の死体が地表を覆っていた。
足の踏み場もないほどに。
この戦いでは、一部は撤退したものの戦線の維持には成功。
死傷者は1000人ほどだった。
国民党軍の死傷者はいまだ定かではない。
だが、1万は優に超える兵士の亡骸が転がっているのは誰もが分かった。
9
あなたにおすすめの小説
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記
糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。
それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。
かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。
ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。
※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。
小日本帝国
ypaaaaaaa
歴史・時代
日露戦争で判定勝ちを得た日本は韓国などを併合することなく独立させ経済的な植民地とした。これは直接的な併合を主張した大日本主義の対局であるから小日本主義と呼称された。
大日本帝国ならぬ小日本帝国はこうして経済を盤石としてさらなる高みを目指していく…
戦線拡大が甚だしいですが、何卒!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。
世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記
颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。
ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。
また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。
その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。
この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。
またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。
この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず…
大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。
【重要】
不定期更新。超絶不定期更新です。
天竜川で逢いましょう 〜日本史教師が石田三成とか無理なので平和な世界を目指します〜
岩 大志
歴史・時代
ごくありふれた高校教師津久見裕太は、ひょんなことから頭を打ち、気を失う。
けたたましい轟音に気付き目を覚ますと多数の軍旗。
髭もじゃの男に「いよいよですな。」と、言われ混乱する津久見。
戦国時代の大きな分かれ道のド真ん中に転生した津久見はどうするのか!!???
そもそも現代人が生首とか無理なので、平和な世の中を目指そうと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる