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第8話 勝負
79-3、五番目の勝負(第8話完)
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化粧っけなくても、胸が大きくなくても、ルーリクの愛してきた女たちのようなあでやかな微笑みや流し目や気の利いた会話やむしゃぶりつきたいような脚をしていなくても、こんなにもルーリクの心をとらえるのだから。
この女はきっと、大きく化ける気がする。
ユーディアはゴクリと生唾ごとルーリクの提案を飲み込んだ。
「僕が王子妃になることはないけれど、それが条件ならいいよ。そんなありえない未来の約束のために、僕の秘密を守ってくれるというのなら」
ルーリクはユーディアの手を要求する。
おずおずと伸ばされた手の甲に唇を押し付けた。
指先が震えてとっさに引っ込めようとしても逃さない。
騎士のルーリクがささげるキスは、この女だけに決めてしまった。
立ち合い人は、黒目がちな軍馬たち。
「俺の姫と勝手に呼ばせてもらう。これからは姫の信頼をえられるように誠心誠意、努力させてもらうとして……」
「ひ、姫も信頼もいらない!黙っていてくれるだけでいいから。じゃ、約束したから!」
慌てて振りほどくと、ルーリクの未来の姫は厩舎から闇の中へ走り去っていく。
追いかけようにも追いつくことはできないだろう。
ルーリクの胸に、ふつふつと喜びが湧き上がっていた。
退屈だけだった人生が、予測もつかない方向へ向かい始めている。
ジプサム王子もただの坊ちゃん王子の皮を脱ぎ、その実力を美都に向かうわずかな期間で示し始めていた。
自分の姫の騎士になれなくても、王子の騎士としても、波乱がこれから起こるのだろう。
笑みが自然と口元に浮かぶ。
はたかれた衝撃で額に落ちていた、くっきりとしたウエーブの髪をかき上げた。
急に、この退屈だと思っていた刺激の少ない離宮の蟄居が、波乱に満ちた人生の始まりに思えてきたのだった。
第8話 完
この女はきっと、大きく化ける気がする。
ユーディアはゴクリと生唾ごとルーリクの提案を飲み込んだ。
「僕が王子妃になることはないけれど、それが条件ならいいよ。そんなありえない未来の約束のために、僕の秘密を守ってくれるというのなら」
ルーリクはユーディアの手を要求する。
おずおずと伸ばされた手の甲に唇を押し付けた。
指先が震えてとっさに引っ込めようとしても逃さない。
騎士のルーリクがささげるキスは、この女だけに決めてしまった。
立ち合い人は、黒目がちな軍馬たち。
「俺の姫と勝手に呼ばせてもらう。これからは姫の信頼をえられるように誠心誠意、努力させてもらうとして……」
「ひ、姫も信頼もいらない!黙っていてくれるだけでいいから。じゃ、約束したから!」
慌てて振りほどくと、ルーリクの未来の姫は厩舎から闇の中へ走り去っていく。
追いかけようにも追いつくことはできないだろう。
ルーリクの胸に、ふつふつと喜びが湧き上がっていた。
退屈だけだった人生が、予測もつかない方向へ向かい始めている。
ジプサム王子もただの坊ちゃん王子の皮を脱ぎ、その実力を美都に向かうわずかな期間で示し始めていた。
自分の姫の騎士になれなくても、王子の騎士としても、波乱がこれから起こるのだろう。
笑みが自然と口元に浮かぶ。
はたかれた衝撃で額に落ちていた、くっきりとしたウエーブの髪をかき上げた。
急に、この退屈だと思っていた刺激の少ない離宮の蟄居が、波乱に満ちた人生の始まりに思えてきたのだった。
第8話 完
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