瀬戸内の勝負師

ハリマオ65

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7話:クリスマスパーティーと岡山の漁の1年

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 うちでもケーキ買ってきて、クリスマス会をやろうと、健一が言うと、健二が、ケーキと鶏の唐揚げも食いたいと言った。そこで、近くのスーパーで、12月24日、昼間に、良江さんが健一と健二の要望にい答えて、たくさんの鶏の唐揚げとケーキを買って帰ってきた。

 学校から帰ってそれを見た健一と健二が、旨そうと笑った。その晩19時過ぎに父が帰ってきて風呂に入り、出ると、クリスマスケーキと鶏の唐揚げが用意してあった。ロウソクに火をつけ電気を消して火をつけると格好いいと健一が言い、行きで吹き消しても良いよと母が言うと、賢一と賢二が一気に消した。

 それを見ていた姫子が、大きな声で笑った。ケーキを6つに分けて、更に置くと、健一は、一気に食べ、健二は、少しずつ味わって食べていた。父は、唐揚げと御飯を食べていて、ケーキは、入らないと言うと、男の子が、俺食べるというので半分に分けて、渡した。姫子も、ゆっくりと笑顔で、美味しそうに食べていた。

ニンニクの香りが強い唐揚げも、男の子の大好物で、多いかなと思った分量だったが、完食した。やがて、1987年が終了し、1988年を迎えた。この年、漁の安全を祈願しに、小山田家では、少し離れた祇園神社に、初詣でに行った。この周辺では、冬にはチヌ「クロダイ」漁が盛んだが、今年は大きいのが少なかった。

 その代わり、イイダコ、マダコ、シャコが良く取れて、年の初めとしては、まずまずの滑り出しだった。岡山のさわら漁師は使命感とプライドを持って、春の便りのメインランナー「朝干『あさび』のさわら」を届けるために。さわら漁に臨む。

「そりゃあ朝干『あさび』のさわらが一番じゃ。さっきまで泳いどったのがぐしゃっと網に突き刺さって気が付きゃ夜明けの市場に並べられ、売られて買われて刺身にされて、見てみいあそこで親父が食よおるがな」。朝干『あさび』とは。夜明けごろに干潮を迎える頃の事。

 岡山では、朝が干底になるのは大潮の時。大潮には、鳴門や豊後水道から強い潮が流れ込み、それに乗ってさわらがたくさん入りこんでくる。さわらも活発に泳ぎ、網にかかる量も多くなる。夜明け前が干潮の潮止まりとなるので網を揚げるとすぐに港に水揚げし、競りに間に合うタイミングで中央卸売市場に出荷される。

 さわらは身の柔らかい魚です。刺身での消費がメインの岡山では、その身質の良し悪しが値段に響きます。漁師や市場の人々のさわらの扱いは格別で、船の上で網に刺さったさわらを網からはずすときも、体を握って引き抜くようなことは絶対にない。

「網から外したさわらは、締めて血抜きをした後、頭から尻尾まで延髄に針金を通し『神経抜き』『延髄を破壊する事で、魚体の自己消化を止める』」
 その後、海水氷に漬け込む。 

「わしらはさわらの扱いを見たらそいつが素人かどうかすぐわかる尻尾を持ち、ぶら下げとる様な奴は素人じゃ」
「さわらは両手で抱いてやれ」
岡山のさわら食文化には古い歴史があり、かつて江戸時代初期に使われていた岡山城の台所跡で発掘調査を行った折、ゴミ捨て場跡からカキやハマグリなどの貝殻や瀬戸の小魚とともに、さわらの骨がたくさん出てきたそうだ。

 いかなごのふるせ「親」に始まり、しんこ「しらす」
「そろそろ、おおぶく『とらふぐ』の走りが入り始め、待って焦がれた、ふぐの季節」
「岡山では3月下旬から5月下旬まで漁獲される雄の白子は大きく絶品、この時期にしか手に入らない貴重な味」
「1から3kgに育った『白子持ち』の雄のトラフグが、岡山の春の魚の代表」

「やがて、3月になり、暖かくなると、おおぶく『下津井のとらふく』の漁が始まる」
「春の潮に乗っていろいろな魚が群れになって、島のように目の前の海に押し寄せ、浜は日に日に活気づく」
 玉野市の沖から水島諸島のあたりまでが漁場で、児島・下津井の漁協に水揚げされる

「漁法は、速い潮流の中へ間口を開けた大きな網をこいのぼりの要領で仕掛ける方式」
「潮をさかのぼるように泳いでいる魚を待ち受ける『袋待網・バッシャ網』」と『底曳網』で漁獲する」
「袋待網」は、あまりの潮の流れの速さに泳いでも前に進まず、後ずさりする魚を待ち受けて捕獲する。

「干満の区切りの潮止まり『一時的に潮が止まった状態』に魚を船に獲りこむ。
「そして、潮の向きが変わるタイミングで網を大きく反転させて潮を受け、さらに次の潮止まりまで待つ」。
 水揚げは、その日の一番ゆるい潮時に帰港して行い、また、すぐに漁場に帰って漁を続行。
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