薔薇紳士の興じ事

世万江生紬

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君を想うと夜も

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 カランカラン

「いらっしゃ…あぁ、いらっしゃいませ。」

 ここは悩みを抱えるお客様が来店される喫茶店。来店されたお客様、を見た薔薇紳士はいつもの紳士な口ぶりを少し崩し、砕けた口調で挨拶します。

「ああって何よ~。ま、いいけど…いつものちょうだい♪えーっと、ダージリンだっけ?」

本日のお客様はほんの少しだけ日本語がカタコトな女性。露出は少ないけれど体のラインが出る服を来ており、大人の雰囲気漂う美女、といった感じです。話し方はどこか軽く、本心が見えない印象があります。

「それで、今日はなぜここに?お客様。」

「んふふ?なになに~多忙な幼馴染が時間作って会いに来たのにツレないナ~♪」

「いえ、そういう意味ではなく。確かフランスに行かれていたのでは?」

彼女の名前は鬼灯シアン。薔薇紳士の古くからの知り合い、幼馴染です。職業はピアニストをしており、しょっちゅう世界中を飛び回っています。

「帰ってきたの♪で、まずロゼに会いたくなっちゃったから来ちゃった♪」

彼女はどこか楽しそうに話します。幼馴染ならではの距離の近い話し方です。

「そうでしたか。…いちご君がいない時で良かったです。」

「いちご?あぁ、バイトの子だっけ?なになに~ワタシと仲良いところ見せたくないとか?ツレない~!私はこんなにもロゼのこと想っているのに♪」

「そうですね…私も、シアンのことを想うと夜も8時間しか眠れませんよ。」

「本当!?…って、8時間も寝れば充分じゃないのサ。…ホント、ツレないな~。」

シアンはおどけた口調で返答した後、薔薇紳士にも聞こえないくらい小さな声でボソッと呟きました。その声色は本当に寂しそうで、まるでちょっと拗ねている子どもの様でした。

「ふふ、さ、ダージリン入りましたよ。お召し上がりください。お客様。」

「はいはい。…ん~やっぱり紅茶は最高なのネ♪」


 本日の『Rose』は大人の時間。ゆっくり紅茶と、その時間と、他愛もない話を嗜む2人なのでした。
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