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君を思って全力疾走すると
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カランカラン
「いらっしゃいませ。」
「いらっしゃいませ~。」
「こんにちは...。」
ここは悩みを抱えるお客様が来店される喫茶店。本日のお客様はこのお店に恋のお悩みを相談しに来る常連さん、バイトの野咲いちごの友達、木下杏です。今日も一段と恋に恋する乙女の顔でご来店です。
「杏ちゃん!いらっしゃいませ!今日も乙女の顔だね。」
「えっ、そんなに顔に出てるかな?」
「とても可愛らしいと思いますよ。いつもの紅茶でよろしいですか?」
「あっ、はい、お願いします。」
薔薇紳士は杏と軽く挨拶を交わすと紅茶の準備を始めました。杏はいちごに促されるままいつものようにカウンター席に座りました。
「それでそれで?今日はどんなお悩みかな?」
「そ、そんなに前のめりにならないでよ、恥ずかしいから...。でも、んっとね、その、もっと近づきたいなーと思ってて...。」
「おおっ!連絡を取り合うだけでなくついにもっとお近づきになりたい、と!うんうんいいね!それでそれで?」
「手作りのお菓子作ったり、一緒に帰ろうって誘ってみたりしようとは思ってるんだけど、心臓バクバクしちゃって一歩踏み出せなくて...。」
「おお!恋に向かって全力疾走だね!でもそっかぁ...やっぱり勇気出ないよね。」
「いつも心臓痛くて無理!ってなっちゃうんだ...。」
いちごと杏はピンクの声を上げながら初心な恋愛相談を展開させています。そんな2人の話を聞きながら薔薇紳士は淹れたての紅茶の香りをふわりと香らせました。
「杏様、まずはこちらを飲んで一息どうぞ。」
「あ、ありがとうございます...。薔薇紳士さんは近づくだけで心臓が痛くなるような恋愛はしたことありますか?」
「私は杏様のようなまっすぐで素敵な恋愛体験はありませんね...参考にならずすみません。」
「あっ、いえいえ、私こそプライベートな質問を失礼しました...。」
「ですが杏様の話を聞いて私が思ったことでもよろしければ。杏様、相手を思って全力疾走すると心臓の鼓動は早くなります。その心臓は痛くて痛くてたまらないでしょう。だから、ゆっくりでいいんですよ。痛くならない速さでゆっくりゆっくり近づければいいと思います。走っていては見られない景色も、歩いていれば見られるかもしれませんよ。」
薔薇紳士の言葉を聞きながら杏はゆっくり紅茶を飲んでいました。そして飲み終わると、がたッと音を立てて立ち上がりました。
「杏ちゃん?」
「ごめん、私図書館行ってくる。彼、この間好きな本の話してくれたの。その時はそうなんだ、好きなこと知れて嬉しいとしか思ってなかったんだけど、ゆっくりでいいもんね。彼の好きな本、私も読んでみる。小さなきっかけで話せるようになれると思うから。...ってことですよね、薔薇紳士さん。」
「ふふ、私は何も。杏様がそうしたいならそれがきっと正解ですよ。」
「...っ、はい!」
早く追いつきたくて、早く近くに行きたくて、時には全力で走るでしょう。でも走れば胸は痛くなります。息も苦しく足も動かなくなる。たまには歩いていいんです、ゆっくり自分のペースでもいいんです。走っていれば過ぎ去ってしまう景色も歩いていれば綺麗に見れます。そんな景色が大事に思える何かになるかもしれません。
「いらっしゃいませ。」
「いらっしゃいませ~。」
「こんにちは...。」
ここは悩みを抱えるお客様が来店される喫茶店。本日のお客様はこのお店に恋のお悩みを相談しに来る常連さん、バイトの野咲いちごの友達、木下杏です。今日も一段と恋に恋する乙女の顔でご来店です。
「杏ちゃん!いらっしゃいませ!今日も乙女の顔だね。」
「えっ、そんなに顔に出てるかな?」
「とても可愛らしいと思いますよ。いつもの紅茶でよろしいですか?」
「あっ、はい、お願いします。」
薔薇紳士は杏と軽く挨拶を交わすと紅茶の準備を始めました。杏はいちごに促されるままいつものようにカウンター席に座りました。
「それでそれで?今日はどんなお悩みかな?」
「そ、そんなに前のめりにならないでよ、恥ずかしいから...。でも、んっとね、その、もっと近づきたいなーと思ってて...。」
「おおっ!連絡を取り合うだけでなくついにもっとお近づきになりたい、と!うんうんいいね!それでそれで?」
「手作りのお菓子作ったり、一緒に帰ろうって誘ってみたりしようとは思ってるんだけど、心臓バクバクしちゃって一歩踏み出せなくて...。」
「おお!恋に向かって全力疾走だね!でもそっかぁ...やっぱり勇気出ないよね。」
「いつも心臓痛くて無理!ってなっちゃうんだ...。」
いちごと杏はピンクの声を上げながら初心な恋愛相談を展開させています。そんな2人の話を聞きながら薔薇紳士は淹れたての紅茶の香りをふわりと香らせました。
「杏様、まずはこちらを飲んで一息どうぞ。」
「あ、ありがとうございます...。薔薇紳士さんは近づくだけで心臓が痛くなるような恋愛はしたことありますか?」
「私は杏様のようなまっすぐで素敵な恋愛体験はありませんね...参考にならずすみません。」
「あっ、いえいえ、私こそプライベートな質問を失礼しました...。」
「ですが杏様の話を聞いて私が思ったことでもよろしければ。杏様、相手を思って全力疾走すると心臓の鼓動は早くなります。その心臓は痛くて痛くてたまらないでしょう。だから、ゆっくりでいいんですよ。痛くならない速さでゆっくりゆっくり近づければいいと思います。走っていては見られない景色も、歩いていれば見られるかもしれませんよ。」
薔薇紳士の言葉を聞きながら杏はゆっくり紅茶を飲んでいました。そして飲み終わると、がたッと音を立てて立ち上がりました。
「杏ちゃん?」
「ごめん、私図書館行ってくる。彼、この間好きな本の話してくれたの。その時はそうなんだ、好きなこと知れて嬉しいとしか思ってなかったんだけど、ゆっくりでいいもんね。彼の好きな本、私も読んでみる。小さなきっかけで話せるようになれると思うから。...ってことですよね、薔薇紳士さん。」
「ふふ、私は何も。杏様がそうしたいならそれがきっと正解ですよ。」
「...っ、はい!」
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