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第三章 打倒、赤ずきん

34話 思わぬ護衛

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 翌日、夕方頃。その日の6時間のノルマを終えた私たちは1階の連絡通路まで来ていた。

⸺⸺1F連絡通路⸺⸺

「まず空悟が赤ずきんをこの辺りまでおびき寄せる」
 陽翔さんによる作戦の確認が行われている。
「うっす」
「そして瑠斗は少しだけ本館に入り、赤ずきんを拘束。無理だった場合、すぐに通路に避難」
「はい」
 神器のヴィランに対しての効力は本館のみで発動することが分かっているからだ。

「で、斧でのガードも出来なくなったところで俺が斬る。これでいいな?」
 そう言う陽翔さんに対し、皆緊張気味に頷く。まぁ、私は今回も見てるだけなんだけど……。私だけ神器ないし。

⸺⸺

 そして、空悟さんが鷹になり本館へと突入し、作戦が開始された。
 3分ほどで空悟さんがすごいスピードで戻ってきて、その後ろにはしっかりと斧を構えた赤ずきんちゃんが迫ってきていた。

「今だ瑠斗、頼む!」
「はい!」

 陽翔さんの合図で通路に逃げ込む空悟さんと入れ替わるように瑠斗君が前に出て指輪を発動する。

⸺⸺その瞬間、何かがムササビのように赤ずきんちゃんの前に躍り出て、瑠斗君の拘束を変わりに受けた。

「……お婆さんだ!」
 一見よぼよぼなお婆さんが、薄ら笑いを浮かべながら瑠斗君の拘束と綱引きをしている。赤ずきんちゃんに出てくるお婆さんが、赤ずきんちゃんを庇ったんだ……。

「だ、ダメです持っていかれます……!」
 瑠斗君はお婆さんとの綱引きに勝てず、ズルズルと本館に引きずられていく。
 そんな彼へ、赤ずきんちゃんの斧が振り下ろされる。

⸺⸺キンッ⸺⸺

 金属と金属の激しくぶつかり合う音。間一髪のところで陽翔さんが赤ずきんちゃんの斧を刀で受け止めたのであった。

「瑠斗、拘束を解いて下がれ!」
「はい!」
「援護するぜ!」
 空悟さんが瑠斗君を後ろから抱える。瑠斗君は指輪の発動を止めると、空悟さんによって通路へと雪崩なだれこんだ。

 しかし、陽翔さんは未だ赤ずきんちゃんと武器の押し合いをしている。
 そこへ、お婆さんの持っていた槍が飛んできて……。

⸺⸺陽翔さんの脇腹を貫通した。

「いやぁぁぁっ!」
 絶対に起こってほしくなかった事態に絶叫する私。
 陽翔さんは槍の衝撃で通路の方へと突き飛ばされていた。槍は陽翔さんが床に叩きつけられた衝撃でカランカランと音を立てて通路へと落ちる。

 赤ずきんちゃんとお婆さんは2人でしばらく嘲笑い、本館へと戻っていった。

「陽翔!」
「陽翔さん!」

 陽翔さんは苦しそうに呻き、脇腹の服にじわっと血がにじんでくる。
 私たちは空悟さんのコートを担架のように使い、急いで陽翔さんを3階の私の部屋へと連れ込んだ。

⸺⸺宿泊館3F 301号室⸺⸺

 救急セットでなんとか止血を試みると、出血は止まったようだけど、未だ陽翔さんの呼吸は苦しいままだった。

「どっか、内蔵やられてるかもな……」
 と、空悟さん。
「どうしよう……このままじゃ陽翔さんが死んじゃう……!」

「僕に、考えがあります」
 そう言う瑠斗君を、私も空悟さんも縋る様に見た。
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