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3話 そんだけ?

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 せめてこの世界では、ちょっとは役に立ってもらわないと。

 そう思いながら家へ帰ると、すぐに夫が迫ってきた。

「おい、家政婦! 一体どこに行っていたんだ? さっさと飯を作りやがれ! 俺は腹が減ったんだ」

「家政婦……?」

「お前サキだと言っただろう? 思い出したんだ、確か家政婦の名前だ! 思い出してやったんだぞ、さっさと飯を作りやがれ!」

「……えっと、この人なんですけど」
 私は商人さんへ首を向けて言った。

「なるほど……確かに異世界人のような、そんなオーラは感じますね。ただ……調教が必要かと思われますので、価値はガクッと下がりますよ……?」
 彼は苦い顔をしてそう答えた。

「いいわ、どのくらいなの?」
「ええ、そうですね……買取価格、150クレドと言ったところでしょうか」

「え、そんだけ!?」
 私は目をパチクリとさせる。
 人参にんじん1本30クレドの世界。人参5本分だ。

「ええ、なんせ調教に手間がかかりそうなので」
「まぁ、でしょうね……」

 私はうーんと考え込む。

「まぁ、それでいいわ。引き取ってちょうだい」
 どうせこのまま置いておいても、マイナスにしかならないだろうし。

「かしこまりました。おい、やれ」
「「はっ」」

「おい、何するんだ、やめろ!」

 動き出した作業員2人によって、薬をかがされてあっけなく眠る元夫。
 そして、ケースの中に入れられると、あっという間に持っていかれた。

「それではこちら150クレドのお渡しです」
「ええ、ありがとう。それからあの高い奴隷、いつか買ってみせるから、死なせないでちょうだいよ?」
 私がそう言うと商人さんは満面の笑みを浮かべた。
「あなた様からは何か天性の商売のオーラを感じます。そのお言葉信じて、キレイな状態を保てるよう努めましょう」
「ありがとう。それじゃぁ今後ともよろしくね」
「ええ、今後共ごひいきに。では、失礼します」

 商人さんは作業員さんを追いかけてスタコラと去っていった。

 残ったのは夫のゲーム機。
 画面を見てみると、ピチピチの金髪ギャルが『いきなり服の中に手を突っ込むとか最低なんですけど!』
 って、言っている画面だった。

 呆れた。何を一生懸命やってるかと思えばエロゲーだった訳。
 私はそれを思いっきり叩き割ると、そのままゴミ箱へポイッと捨てた。

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