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25話 新王国を作ろう

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 ボクたちが覚醒して数日が経ったある日、猫王たち3人とフェリクス、ウォルト、アンナを3階の玉座の間へと集めた。

「みんな色々忙しいと思うけど、聞いてほしい」
 ボクはそう話を切り出す。

「ボクは……ここの正式な国王になろうと思う」

「おぉ!」
「やっとか」
「うむ、良いのう」

 みんなそれぞれ賛成の意を示してくれる。

「町のものは皆、その時を待ち望んでいたよ」
 と、フェリクス。

「そ、そうかな……。流石さすがにこればっかりはちゃんとみんなの前で演説したい。だから明日、バルコニーの前で拡声魔導具かくせいまどうぐを使ってみんなに説明するから、そういうふうに町の人たちに知らせておいて」

「了解」
 フェリクスは短く返事をすると、すぐに行動に移った。


 ちなみに、この島を4分割して猫王たちで統治しようと提案したけど、それは何故なぜか断固拒否された。



⸺⸺翌日。


 みんなボクの話を聞こうとして、パラディリアの町中が人で埋め尽くされている。

『みんな、聞こえる? 今から重大な発表をする』
 ボクが城のバルコニーからそう呼びかけると、町中の人々が城へと身体を向けた。
 古くからこの町にいる人たちは、ボクの姿を見てかなり驚いている様だった。

『みんなの協力があって、この町だけではなく、島全体が驚くほどの発展を遂げた。今日この時を持って、この島を“パラディース島”と命名する』

 わぁっと歓声が上がる。

『そして、ここに“パラディース王国”の建国を宣言し、このボク、レクスが初代国王として君臨する! 賛成のものは拍手を!』

 その瞬間、町中で大拍手喝采はくしゅかっさいが起こり、それは10分以上経ってもやむことはなかった。

 ボクはしばらくその鳴り止まない拍手を堪能たんのうする。

 そして、演説を締めくくるためにその拍手を制して再び口を開いた。

『皆、ありがとう! ボクはこの島がもっともっと自由で楽しい楽園になるよう精進していく。みんなこれからもボクに信じてついてきてほしい!』

 再び沸き起こる歓声。

『ありがとう、本当にありがとう! これをもって王としての宣言を終了する!』

 ボクがそう言って城内に戻っても、しばらく歓声がやむことはなかった。


⸺⸺パラディリア城内⸺⸺


「レクス、貴様大成功だったな!」
「レクス、良かったぞ」
「王様、おめでとう」

 城内へ戻ると早速猫王たちのみんながねぎらいの言葉をかけてくれた。

「うん、ありがとう。それで今後のことなんだけど……」

 ボクがそう話を振ると、ルナがそれを制した。
「焦ることはない。今日は、記念すべきお主の国王即位の日じゃ。今は皆で喜びを分かち合い、この島中に知らせにゆこうぞ」

「ルナ……ありがとう。うん、そうだね、辺境の村や町にも通達はいってると思うけど、直接挨拶に行ったほうがいいよね。それに、商人や観光の人たちにも挨拶できる」

「そういうことだ。早速行くぞ“竹猫たけねこの友”よ」
 アビスにぽんと背中を押されて、みんなのその好意に甘えることにした。

⸺⸺

 そしてボクたちはその日1日かけて、島中の町や村を回ってボクの即位の挨拶をした。

 みんな自分の事のように喜んでくれて、今の今まで頑張ってきて良かったと心の底から思った。

 ずっと挨拶出来なかったエーベル商会の人たちにも挨拶をすることができた。
 エーベル商会は初めてこの町の港を訪れてくれた商人で、今はこの町に新たな拠点も置いて、この町の経済に多大な貢献をしてくれている。

 この町でのエーベル商会を取り仕切るデニーロとも熱い握手を交わし、彼は演説も聞いていてくれたようで、これからも頑張れと鼓舞こぶしてくれた。

 そのため、他言無用の約束付きでエーベル商会の人には猫の姿も披露をすると、みんな驚いてひっくり返っていた。
 しかし、だからいつまで経っても代表に会えなかったのかと、妙に納得もしていた。


 こうしてボクは国王即位初日の公務を終えて、みんなで宴を行い、疲れ果てて死んだように眠った。


⸺⸺


 翌朝、再び猫王たちを集めると、昨日保留になっていた話を振る。

「今度は君たちについてだよ。ボクはてっきりこの島を4分割して4つの国を作るんだと思ってた。でも君たちはそろってそれを拒否した。その理由をちゃんと聞かせてほしい」

 まずはアビスが口を開く。
「俺様は、この島の深淵しんえんの下の力持ちでいたいと思っている。貴様がこの島を表から支配し、俺様は裏から支配したいのだ」

「えっと、つまりどういうこと……?」
 ボクは首をかしげる。

「つまり、俺様はあの“カオスキングダム”の守護に専念したいということだ。俺様はあの場所を超絶気に入っている。俺様の配下も連れてあの場に住むつもりだ」

「そっか、一応キングダムって名前は付いてるけど、誰もがそこに住める訳じゃないから国としては成り立たないよね」

「それもあるが、俺様は人の上に立つよりも下僕しもべを増やす方に興味がある。まぁ、俺様はカオスキングダムを守る代わりに好き勝手やらせてもらうぞ、ということだ」

「下僕を増やす方ってのがよく分かんないけど、でも分かった。これからもアビスにはカオスキングダムをお願いするよ」
「うむ、任せておけ」


「それで、ルナはどうしたいの?」
 ボクは今度はルナに話を振る。

わらわは……しばらくは白月しろつきやしろの経営に専念するつもりじゃ。本当は他の島と白月の社を繋いで自由に行き来ができたら、他の島にも妾の好きな町並みを広げるのだが……それは流石さすがに夢物語じゃのう」

「え、待って、他の島と繋ぐって何?」

「我らが通ってきた転移トラップや、ダンジョンの転送装置のようなものがあれば、瞬時に行き来ができて海外進出もできるのであるが……と、言うことじゃ」

「おぉ、ルナ、海外に興味があったんだ!」
「まぁのう」
 ルナは少し照れくさそうに相槌あいづちを打った。


「で、ナーガは?」
 ボクは最後にナーガに話を振る。

「妾があそこまで打ち明けたのじゃ。お主も少しでも野望があれば申してみよ」
 と、ルナ。
 どうやら恥ずかしかったようで、ナーガを道連れにしようとしているようだ。

「ワシ……ワシは空に興味ある」

「おぉ!」
 ナーガの楽しそうな野望にボクたちはワクワクした。

「それで、それで、ナーガは何したいの?」
 ボクは胸をときめかせながら彼へと迫る。


 ……が。


「え? それだけ。特に何がしたいか、とかはない……」

「ぐああっ」
 ボクたちは3人そろって後ろにズッコケた。

 そしてボクはナーガに“何がしたいかを考える”という宿題を課すのであった。




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