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学園入学するまであと8年。
私が婚約しているアラン王子は、将来の国王となるため、私のお妃教育が婚約と同時に始まっていて、週3日王城に行っていた。アラン王子は、私を避けているので会う事は稀、以前なら、王子を探して見つけると抱きつく私だったが、今は出来るだけ、こちらからも接点を減らして婚約の消滅を狙うのだ。
外出できるようになり、お妃教育が再開された初日。前世の恵美があまり派手な服が好きではなかったので、今までのような赤やピンクのフリフリのワンピースは着なくなり、今日は水色のシンプルなワンピースを着ている。ありふれた茶色の髪に青い瞳の私が地味なワンピースを着ると
すっかり目立たないモブ令嬢になれる。目の前を通り過ぎて行くアラン王子も私に気づかない。
アラン王子は、いつものようにアーサー、アーロン、アンディと一緒にいた。攻略対象がお兄様以外仲良くつるんでいて、ヒロインが現れたらこの人達自分が選ばれなかった時に仲良くできるのかしら?と恵美目線で見てしまう。
「アラン殿下。今日はエミルフェシア嬢は来ていないのですか。」
伯爵子息のアンディが周りを見回している。
「いや。今日から再開で歴史と外交の講義のはずだ。」
「休憩時間に飛びついてくるはずですが、姿を見ていないですね。」
「そういえば…」
「って言うか、予定時間を把握してるんだ。」
「当たり前だろう。来る日は会わないように工夫してるんだから。」
騎士団長子息のアーサーがめんどくさそうに頭をかいた。
「静かでいいじゃん。」
「そうだな。」
はいはい、いますよー。聞いてますよー。とモブ令嬢はさらに壁になってみます。
もうひとり神官長子息アーロンは呆れたように。
「熱出して寝込んで、おとなしくなったらしいけれど、いつまで続くのか。」
「無理無理、じきに元どおりだろ。」
「ですよね。」
「お前たち、他人ごとみたいに言うなよ。」
「だって殿下の婚約者じゃないですか。」
「あの気の強さとべったりは、苦手なんだよ。しかも王子としての自覚とかうるさいし、見た目も可愛くもないし。」
「じゃあ、婚約やめればいいじゃん。」
「王命だぞ。父上に逆らったらまずいだろ。」
「王子様も大変だな。」
「だろ。変われよ。」
「嫌だな。」
「僕も。」
「右に同じく。」
4人が通り過ぎると横にいた侍女のクレアが私の肩を優しく撫でてくれる。
「お嬢様。旦那様に報告しますか。」
「いいえ。私から話します。」
のんびりフェードアウトを狙うつもりだったが、馬鹿にされているのに横にいるのは、エイミーとしても恵美としても耐えれるものではない。
その夜、お父様が帰宅してきたと聞いて、書斎に向かう。
「お父様。お話があるのですが…」
「どうした?」
「アラン殿下との婚約を解消したいのです。」
「あのバカ、何をした?」
お父様はどす黒いオーラを纏い始めた。しかもバカって不敬じゃないの⁈
私は今日、聞いたことを話した。
「エイミー、そんなバカと結婚しなくていい。私から陛下には話してくる。」
「お父様、いいのですか?」
「倒れて寝込んだ婚約者に気遣いもなく、そんなことを言うバカにかわいいエイミーはやれん。」
「気遣いって、まだ8歳だし…」
「王子たるもの幼くともできて当たり前だ。」
お父様の剣幕に恵美としては、少しアラン王子がかわいそうになる。
「私は婚約解消さえ出来れば、王子に謝罪して欲しいとは言いません。私が必要以上に追いかけ回して嫌われた自覚もありますから。」
「エイミー、寝込んでから急に大人になってしまったな。やはりあのバカはしめた方が…」
「お、お父様がそんな事をしたら私はお父様ともう口をききません!」
「わかった。バカの代わりに陛下にする。だからそんな事を言うな。」
陛下を代わりですと?
その言葉の意味はすぐに分かった。
私の体調不良を理由に婚約辞退、責任をとってお父様は10日間の自宅謹慎…しかし宰相として有能なお父様が10日もいないのは、陛下にとってものすごく大変な事だったらしい。5日目には陛下から復帰要請が3時間おきくらいに来るようになった。
でもお父様は、
「しかし、私としては謹慎中ですので…」
とか言って使者を追い返してニヤリと笑っていた。
絶対、陛下に仕返ししてるわ。
私が婚約しているアラン王子は、将来の国王となるため、私のお妃教育が婚約と同時に始まっていて、週3日王城に行っていた。アラン王子は、私を避けているので会う事は稀、以前なら、王子を探して見つけると抱きつく私だったが、今は出来るだけ、こちらからも接点を減らして婚約の消滅を狙うのだ。
外出できるようになり、お妃教育が再開された初日。前世の恵美があまり派手な服が好きではなかったので、今までのような赤やピンクのフリフリのワンピースは着なくなり、今日は水色のシンプルなワンピースを着ている。ありふれた茶色の髪に青い瞳の私が地味なワンピースを着ると
すっかり目立たないモブ令嬢になれる。目の前を通り過ぎて行くアラン王子も私に気づかない。
アラン王子は、いつものようにアーサー、アーロン、アンディと一緒にいた。攻略対象がお兄様以外仲良くつるんでいて、ヒロインが現れたらこの人達自分が選ばれなかった時に仲良くできるのかしら?と恵美目線で見てしまう。
「アラン殿下。今日はエミルフェシア嬢は来ていないのですか。」
伯爵子息のアンディが周りを見回している。
「いや。今日から再開で歴史と外交の講義のはずだ。」
「休憩時間に飛びついてくるはずですが、姿を見ていないですね。」
「そういえば…」
「って言うか、予定時間を把握してるんだ。」
「当たり前だろう。来る日は会わないように工夫してるんだから。」
騎士団長子息のアーサーがめんどくさそうに頭をかいた。
「静かでいいじゃん。」
「そうだな。」
はいはい、いますよー。聞いてますよー。とモブ令嬢はさらに壁になってみます。
もうひとり神官長子息アーロンは呆れたように。
「熱出して寝込んで、おとなしくなったらしいけれど、いつまで続くのか。」
「無理無理、じきに元どおりだろ。」
「ですよね。」
「お前たち、他人ごとみたいに言うなよ。」
「だって殿下の婚約者じゃないですか。」
「あの気の強さとべったりは、苦手なんだよ。しかも王子としての自覚とかうるさいし、見た目も可愛くもないし。」
「じゃあ、婚約やめればいいじゃん。」
「王命だぞ。父上に逆らったらまずいだろ。」
「王子様も大変だな。」
「だろ。変われよ。」
「嫌だな。」
「僕も。」
「右に同じく。」
4人が通り過ぎると横にいた侍女のクレアが私の肩を優しく撫でてくれる。
「お嬢様。旦那様に報告しますか。」
「いいえ。私から話します。」
のんびりフェードアウトを狙うつもりだったが、馬鹿にされているのに横にいるのは、エイミーとしても恵美としても耐えれるものではない。
その夜、お父様が帰宅してきたと聞いて、書斎に向かう。
「お父様。お話があるのですが…」
「どうした?」
「アラン殿下との婚約を解消したいのです。」
「あのバカ、何をした?」
お父様はどす黒いオーラを纏い始めた。しかもバカって不敬じゃないの⁈
私は今日、聞いたことを話した。
「エイミー、そんなバカと結婚しなくていい。私から陛下には話してくる。」
「お父様、いいのですか?」
「倒れて寝込んだ婚約者に気遣いもなく、そんなことを言うバカにかわいいエイミーはやれん。」
「気遣いって、まだ8歳だし…」
「王子たるもの幼くともできて当たり前だ。」
お父様の剣幕に恵美としては、少しアラン王子がかわいそうになる。
「私は婚約解消さえ出来れば、王子に謝罪して欲しいとは言いません。私が必要以上に追いかけ回して嫌われた自覚もありますから。」
「エイミー、寝込んでから急に大人になってしまったな。やはりあのバカはしめた方が…」
「お、お父様がそんな事をしたら私はお父様ともう口をききません!」
「わかった。バカの代わりに陛下にする。だからそんな事を言うな。」
陛下を代わりですと?
その言葉の意味はすぐに分かった。
私の体調不良を理由に婚約辞退、責任をとってお父様は10日間の自宅謹慎…しかし宰相として有能なお父様が10日もいないのは、陛下にとってものすごく大変な事だったらしい。5日目には陛下から復帰要請が3時間おきくらいに来るようになった。
でもお父様は、
「しかし、私としては謹慎中ですので…」
とか言って使者を追い返してニヤリと笑っていた。
絶対、陛下に仕返ししてるわ。
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