宝かごみかは、君しだい

七草すずめ

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しずかに ねむって

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 夏の歌が昇天する夕べ
 トトロに会う八月の夜
 真夏を摂取しつくして
 静かに熱がひいていく
 鮮明な花火たちの残響
 のたうち回る小とかげ
 網戸越しの風と車の音
 旧七夕の川を渡る月船
 枯れたひまわりと種に
 あいさつをしなくては


   *


 声優の石塚運昇さんが亡くなった。知ったのは、夏休みも終わりに近付いた涼しい夜だった。
 子供の頃の、果てしなく続く夏休みをつめこんだ曲がある。「ピカピカまっさいチュウ」という、わたしが小学二年生のときのポケモン映画「ピカチュウのなつやすみ」の主題歌。子供たちの明るい歌声と少しの不安が混じったコード進行の中に、不意にあらわれ優しく歌う石塚さんの声が忘れられない。
きみがいつかひらくこころのアルバムに
ことしのなつのかがやきをセーブしておこう
 訃報を知る数日前、なにが原因だったか思い出せないけれど、この曲がきちんと聴きたくなった。いつかの夏に繰り返し聴いたそれは心の中でも容易に再生できたけれど、そうではなく、ちゃんと耳で聴きたかった。そして、初めて二番の歌詞を知った。
きみがいつかであうみらいのこどもたちに
ことしのなつのものがたりきかせてあげよう
 石塚さんの声を初めて聴いたとき、わたしはまだちっぽけな子供だった。ポケモンがだいすきで、無限に広がる夏の日々とピカチュウたちが過ごす夏のある日を重ねていた。
 わたしの知らなかった歌詞を歌うその声を聴いたとき、今の学級の子供たちの笑顔と笑い声を思った。わたしは未来のこの子たちに物語を聞かせるために、あの夏を過ごしたのだ。そして、これから先もきっと、だれかがそんな夏を過ごしていくのだろう。
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