8 / 30
MINORIと薫くんはスマートにセックスする
しおりを挟む
さっきは上手く書けなかったけれど、今なら大丈夫な気がする。そうだ、今日は恋愛小説じゃなくて、官能小説を書こう。とびきりエッチなの。主人公をわたしだと思って、たくさん満足させてあげよう。そうしたら、きっと薫くんに「感情移入ができない」なんて言われることはない。だって感情しか詰まっていないんだから。その上もしかしたら、興奮した薫くんが四ヶ月と十三日ぶりにセックスしてくれるかもしれない。
わたしは意気揚々と官能小説を連載しているページをひらいた。そしてがっかりする、そうだった、ちょうど男が射精した場面まで投稿していたことを思い出した。
「はあはあ……お前、今日、どうしちゃったんだよ」
朝の日差しがまぶしい中で、海斗はそっと玲奈を抱きしめたのだった。続く。
って、今わたしが書きたいのはセックスのシーンなんですけど。
仕方ないからもう一回セックスさせるか。でも、朝っぱらから? ロマンチックなデートのあとに夜景を見ながらセックスしたって場面なんですけど、ていうか朝からもう一発って暇な大学生かよ。あれ、ていうかこれだと朝までずっとセックスしてたってことになってない?
辻褄を合わせようと四苦八苦しているうちに、気持ちが萎えてしまった。もうセックスシーンなんてどうでもいい。パソコンをシャットダウンする。わたしと薫くんの夜みたいな間の悪さだった。MINORIと薫くんはもっとスマートにセックスするんだろうな。
気がついたら外はもうオレンジ色だった。
三人できゃっきゃとはしゃいだのが昨夜のこととは思えない。薫くんに、もう一ヶ月くらい会っていないような気がする。
同時に、一日が過ぎたのに何も生み出していないことに気がつき、なにをしてたらこんなにも簡単に時間をワープできるのだろうと不思議に思う。時計の針がスローモーションのように動いていたOLのわたしに、その方法を教えてあげられたらいいのに。もしワープの方法を知っていたら、わたしは仕事を続けていただろうか。
会社で働いていたときは、ちっとも小説を書く時間がとれなかった。土日になったら書こうと思いながら平日を過ごし、休日になるとだらだらと過ごしてまた平日が始まる、その繰り返し。
電車に揺られて出勤して仕事して、みたいな無駄な時間を全部小説に捧げられたら、どれだけ筆が進むだろうと思っていた。それから、どんなに幸せだろう、とも。
紗奈ちゃんはわたしに似ていると勝手に思っていたけれど、それはそう思いたかっただけで、本当はちっとも似ていない。だって紗奈ちゃんは絵が描きたくて苦しんでいるのに、わたしは小説が書けなくて苦しんでいる。こういうのが才能だというのなら、わたしは永遠に本当の小説なんて書けない。
お前、書く気なんて、最初からないんじゃないか。脳内のお父さんが知ったような顔をして言ってくる。うるさい、あんたとはとは違うんだから。いつもならそれで幻影を振り払えるのに、だけどお前は俺のこどもだからなあ、本質はおなじなんだよ、今日のお父さんはしぶとくて化け物みたいにわたしを煽る。
わたしは意気揚々と官能小説を連載しているページをひらいた。そしてがっかりする、そうだった、ちょうど男が射精した場面まで投稿していたことを思い出した。
「はあはあ……お前、今日、どうしちゃったんだよ」
朝の日差しがまぶしい中で、海斗はそっと玲奈を抱きしめたのだった。続く。
って、今わたしが書きたいのはセックスのシーンなんですけど。
仕方ないからもう一回セックスさせるか。でも、朝っぱらから? ロマンチックなデートのあとに夜景を見ながらセックスしたって場面なんですけど、ていうか朝からもう一発って暇な大学生かよ。あれ、ていうかこれだと朝までずっとセックスしてたってことになってない?
辻褄を合わせようと四苦八苦しているうちに、気持ちが萎えてしまった。もうセックスシーンなんてどうでもいい。パソコンをシャットダウンする。わたしと薫くんの夜みたいな間の悪さだった。MINORIと薫くんはもっとスマートにセックスするんだろうな。
気がついたら外はもうオレンジ色だった。
三人できゃっきゃとはしゃいだのが昨夜のこととは思えない。薫くんに、もう一ヶ月くらい会っていないような気がする。
同時に、一日が過ぎたのに何も生み出していないことに気がつき、なにをしてたらこんなにも簡単に時間をワープできるのだろうと不思議に思う。時計の針がスローモーションのように動いていたOLのわたしに、その方法を教えてあげられたらいいのに。もしワープの方法を知っていたら、わたしは仕事を続けていただろうか。
会社で働いていたときは、ちっとも小説を書く時間がとれなかった。土日になったら書こうと思いながら平日を過ごし、休日になるとだらだらと過ごしてまた平日が始まる、その繰り返し。
電車に揺られて出勤して仕事して、みたいな無駄な時間を全部小説に捧げられたら、どれだけ筆が進むだろうと思っていた。それから、どんなに幸せだろう、とも。
紗奈ちゃんはわたしに似ていると勝手に思っていたけれど、それはそう思いたかっただけで、本当はちっとも似ていない。だって紗奈ちゃんは絵が描きたくて苦しんでいるのに、わたしは小説が書けなくて苦しんでいる。こういうのが才能だというのなら、わたしは永遠に本当の小説なんて書けない。
お前、書く気なんて、最初からないんじゃないか。脳内のお父さんが知ったような顔をして言ってくる。うるさい、あんたとはとは違うんだから。いつもならそれで幻影を振り払えるのに、だけどお前は俺のこどもだからなあ、本質はおなじなんだよ、今日のお父さんはしぶとくて化け物みたいにわたしを煽る。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる