薫くんにささぐ

七草すずめ

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【Kくんとのセックス、すき!】

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 それからわたしは、アカウントをあと四つ作った。ノーマクン、さにゃ、それからKくん。ひとつひとつにメールアドレスが必要だから、Gメールのアカウントをいちいち作った。わたしは律儀にも、それぞれのつけそうなメールアドレスをわざわざ考えた。
 しばらく、五つのアカウントを切り替えて切り替えて、それらしいことを呟かせて、ときどき会話をさせて、遊んだ。小さい頃あそんだお人形遊びみたいだった。好きなように喋らせて、動かして、人形たちの神になるあの遊び。人形と違うのは、それぞれの人に基となる設定があって、わたしが心から好きなように動かすのはむずかしいということだった。
【Kくんとのセックス、すき!】
【@ミノリちゃん やめろよ笑】
 ほら、こうやって、勝手にいちゃいちゃしだすんだもの。ミノリちゃんも、Kくんも、ミュートしてブロックしてやりたい衝動に駆られる。ついでに適当な理由で通報してやりたい。しかたないから、かわりに誰かに制裁を下してもらう。
【こういうやりとりほんと馬鹿馬鹿しい。】
 さにゃは――本物の紗奈ちゃんがそうであるように――思ったことをきっぱり言うタイプだから、二人のいらだたしいやりとりを引用RTで晒すこともあるのだ。いい年してくだらないやりとりをしている男女なんて、叩かれろ、炎上してしまえ。作ったばかりのアカウントだから、さにゃにフォロワーがちっともいないのが悔しい。もっと多ければ、瞬く間に拡散されて炎上したに違いない。
 五人を操りながら、スマホの画面はびしょびしょになっていた。ここが地の底でなければなんだ。そして、ここから健全かつ安定した生活に戻れるルートなんて、どうしたって見つかるはずがなかった。
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