その令嬢、商会長につき

かぼす

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第1章:魔道具の夜明け

7・新商品と冒険者

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 その後も増え続けるニーズに合わせて誰にでも作れる魔道具のレシピを考案し5年間有効な特許の取得していった。

 魔力を込め無くても火を出す魔道具から始まり、物を出す系は水、冷気、熱気、光、風が作られ、これらが主力商品の軸となった。

 開店から3か月たったころには魔力を込め無くても何かできるシリーズはいったん中止し、魔力を込めることでより利便性の上がる魔道具の製作をすることになった。

 その理由としては、まだ魔力の通電つうまの絞りをレバーにするギミックを作ることに難航していたため、一旦考え方を変えてリフレッシュしてみましょうということだったのだ。

 それで考え付いたのはいいのだが……。

「リッカ様! これは私たちが使うのには危険すぎます!」
「そうよ、リッカちゃん、娘を思う母親の気持ちは無下にしないでほしいわ」

 出来上がったのは地面を蹴るときに魔力を込めることで靴底から風の魔力を発生させて走ったりジャンプするときの脚力を補助するものなのだ。

「でもぅ……試さないとクレームが来るよ?」
「それは分かっています! でもその実験をお嬢様がやるのは断固反対です、ただでさえ体内魔力が多いのですから」
「そんなときは冒険者に依頼するといいわよ、時々新しい薬の実験とか新しい武器の試し切りなどで危険なことを代行する依頼も出るんだから」

 あぁ、治験とかスタントとかそんな感じの人なのか……なら確かにそれでもいいかも?

「わかった、でもちゃんとせつめいしてあげてね」
「うふふ、分かったわ、リッカちゃん」

 ◇ ◇

 新しい組織が出てきたのでまた説明をしておきますね。

 ファンタジーの大定番の『冒険者』、この職業はまさに何でも屋で日々町のお手伝いをしたり、薬草採集をしたり、魔物の間引きをしたり、護衛をしたり、強い魔物を倒したり、 その功績をもとにSから下はGまでの冒険者が日々日銭を稼いでいるのだ。

 そうして集められた冒険者は最低でもEランク、単独での魔物討伐経験のあるある程度身体能力のある人たちに集まってもらったのです。

「それでは本日皆様に集まっていただいたのは、募集要項に書いてあったと思いますが、パール商会の新しい魔道具の検証をしてもらうためです」

「その魔道具とはこちらの靴です、身体能力に自信のある人はこちらから、魔力操作に自信のある人はこちらの木箱からサイズの合う靴を見繕ってください」

「まだ履かないでくださいね、この魔道具は便利な点もありますが使い方を間違えると死の危険があります」

 ざわ……ざわ……。

「この魔道具は魔力を込めていなくても脚力がおよそ倍になる機構が組み込まれています、そこにご自身の魔力を付加することで最大10倍まで脚力を高めることができるのです……普段50cmジャンプできる場合、最大出力では5Mもジャンプすることになります、当然バランスを崩したり飛びすぎてケアをする危険性を伴いますが、この検証に同意していただける冒険者の方は署名の上、効果をお試しください」

「本当にそんな効果があんのかよ」
「だがここの魔道具は最近評判だぜ?」
「とりあえずやるだけやってみようぜ? 手付金は貰えるんだしな」

 集まった30人の冒険者は誰一人として棄権することはなく、最初のテストである『その場ジャンプ』に参加してくれた……のだが、しょっぱなから躓いてしまったのです。
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