その令嬢、商会長につき

かぼす

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第2章:魔道具変革

19・ムコーノ村とゴブリン襲撃事件

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「そもそもバレバレなのよ、王族の髪の色、目の色で偽名にもなっていない縮めただけの名前なんて」

「しかもチームメンバーも近衛を使ってるいし、少なくとも貴族には全く隠してなかったはずね」
「そんな……」

 カイル殿下は動揺した様子だ……。

「だから私たちの5歳のお披露目式の前に突然冒険者になると言い出したのよ、もちろん目を引くために……今の様子を見てると半分は趣味だったのかもしれないけれど」

 カイル殿下はいまだ呆然とした様子だ。

「もう少し続きはあるんだけど、それはリッカの話でもあるの……疾風の靴をライお兄様が手に入れたのは半年前でその時はまだDランクの冒険者」

 ふむ?

「そのあとすぐにライお兄様のチームは『ムコーノ村付近にゴブリンの集落が発生した可能性、調査求む』の依頼を受けたの」
「はぁ……ようやく少し話が飲み込めた、続きを頼む」

「まず、お兄様達が村に到着した時には村はゴブリンに包囲される寸前だったみたいなの、遠くから気が付かれないように包囲する感じで近づいていたらしいわ、これは村に駐在していた冒険者からも証言が取れているの」
「すでにCランク以上の案件だな……統率の取れた軍隊じゃないか」

「うん、それでまず村に入って中から進行を抑えるために敵の集団を飛び越えて行ったみたいなの」
「包囲されてるのにそのさらに中にどうやって行くっていうんだ」

「……報告では、ジャンプで」
「はぁ?!」

 そりゃ疾風の靴を見たことがなければそういう反応にもなるかも? とりあえずフォローだ。

「あの……あの靴を履いてると助走なしの垂直飛びで最大5メートルは飛べるんです、なので助走したうえで横にそれなりの高さでのジャンプなら数十メートルいけるかも……」
「……と報告にはありました」
「はぁ……ん? ちょっと待てそういえばそのパールとこのリッカ嬢はどんな関係なのだ?」
「まだわからないの? 彼女がパール魔道具店の実質店長で商品の発明者よ」
「ふむ……それならここにいる辻褄が合うな、ふむふむ……ん? んん? んんんん? このちんちくりんが店主!?」
「ちんちくりんは余計です」
「ちなみにすでに彼女は女男爵当主よ」

「……なあぁああ!?」

 ◇ ◇

 カイル殿下がいろいろと事情を理解かつ納得して落ち着くまで数分、説明再開です。

「村は北に崖でゴブリンアーチャー、西に湿地帯で何がいるのかよくわからなかったらしいわ、それで東には森からゴブリンライダー、南の平原はゴブリンとホブゴブリンが迫って来て居て、お兄様達は北側の崖の上から飛び降りて村に突入したみたいなの」
「崖から飛び降りたのか……」
「あー、袋小路の上から逆に入ったんですね」
「ついでにアーチャーの半数はその時に打ち取ったみたいね、そのあとは垂直飛びが得意な側近がその場所を担当したそうよ、今では彼の二つ名は『無重力』ね」
「……もう今日はこれ以上何に驚けというのだ」
「東の森は何かの試験で反復横跳びの最高記録を出した人らしいわ、もちろんこれも側近かつ近衛ね、障害物を左右にひょいひょい避けて殲滅してた記録があるわね、二つ名は『残像』」
「また出たか……冒険者の二つ名持ちは数年に一度って侍従が言ってなかったか?」
「そうね、でももう今は時代が違うの、道具が進化したんだから使う人次第では化ける……そう1年と何か月か前に侍従を辞めたディル爺が言っていたわ……ちなみにそのディルはいまやリッカの後見人なのよ」

 ディル……、もしかすると王都に行った時に御者をしてくれた人かな?

「騎士団長だったディル……ディッセル・シリウスがか?!」
「さっきから思ってたけど、カイルあなたは驚きすぎよ、もう少し取り巻き以外からも情報を仕入れなさい」
「ぐ! ……そうなのかもだが……」

「とにかく――続けるわね? 南のゴブリンはともかくホブゴブリンはDランクの冒険者からすると本来同格、でもここもライお兄様の側近の『閃光』さんが何往復か行ったり来たりしてるうちに殲滅に成功したらしいの、この王都への街道はぐちゃぐちゃになってしまってみたいだけれど」
「はぁ……ならライ兄様は西に?」

「そうね、ゴブリンや変異種のサハギン、ゴブリンジェネラルや、キングが潜んでいた視界の狭いその場所に単騎で突入したの」
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