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第2章:魔道具変革
21・人と人たらしめる物
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アイルとカイルの短所と長所を受けとめ、それらを死なせない魔道具を作るのが目的だということが分かった。
「つまりアイル殿……アイルは魔力の制御を、カイル殿下は魔力がないことをどうにかしたいってことでいいのね?」
「大体そうね、私はまずは制御というか出力の部分だけでもどうにか出来れば魔道具は使えるようになると思うのだけど、カイルは魔力そのものがないから、どうしようもないの」
ふむぅ? そんなに難しいことかな?
「あのー、ちょっと考えが……あと次女さんも呼んで貰っていいかな?」
「? なにをするつもり?」
「即席で簡単な魔道具を作っちゃおうかな……っと?」
「なんで疑問形なのよ!」
「いやぁ……そりゃまぁいきなりだから期待だけさせてから失敗しちゃったら悪いかなって」
「アイル、いいだろ? おい、そこの者」
カイル殿下はそう言って訓練場に控えていた兵士のような人に次女を呼びに行かせた」
「それじゃちょっと作業するね」
ハンカチ大の布を用意して……取り出したりますは魔力ペン。
魔力を集める『●』を書いてその外に円を描いて制御の『Ω』も書いておくかな、あとはゴニョゴニョして……よし! 出来た。
「リッカ? 次女が来たわ」
「うん、こっちも出来た、あのね? 次女の……」
「いまは名前はいいから、用件だけでいいわ」
「はぁ、ではカイル殿下の肌着の内側にこのパッチを当ててもらっていいですか? 陣を描いてあるほうが肌にあたるようにおへそのあたりに縫い付けてください」
「は? はい、かしこまりました」
「早め頼むわね」
「よし! カイル殿下のは準備完了、次女さんが戻ってきたら肌着を着替えていただいていいですか?」
「お? おう……いいだろう」
「それでですね? アイルなんですが……」
「なに? 私のは解決方法がないとでもいうの?」
「とっても簡単に解決できる予定です、私の実験中の『魔道具学III』が正しければ」
「『魔道具学III』って? そんな学問ないでしょう」
「まぁまぁ……私が提唱しようとしてる理屈なの、とにかく騙されたと思って一回試しませんか? ただ……」
「ただ?」
「はい! お肌に魔法陣を書かせてください!」
「「!?」」
はぁ?! って顔で同じ顔2つに見られた。
「リッカ……私も一応王族よ、ほとんど貰い手のない嫁ぎ先をさらに減らすようなことはないわよね」
「それは大丈夫、数日で消えるインクで試験的に描くだけです!」
「……それでも騒ぐ貴族はいるのだけれど、まぁ乗り掛かった舟ね? どうすればいいの」
「肩までなんですが肌をさらすことになるんですが……ここでやって問題にならないですか?」
「それは描く時だけ?」
「そうです」
「なら控室に行きましょう、そこでお願い、幸いあなたは女の子だもの、不貞にはならないわ」
ということで控室に行きアイルの利き腕に付け根に近いほうから手首に等間隔くらいで5本円を描いた、そして付け根のほうは大きな『Ω』を線に重ねて書いて、手首のほうは魔道具に書くような大きさの『Ω』に縮めた。
書かれたくすぐったさで大笑いしていたアイルを落ち着かせて訓練場に戻ると、次女さんがもどっていたので入れ替わりでカイル殿下に着替えてきてもらった。
「カイル殿下、体調は大丈夫ですか?」
「ああ……これは……どういうことだ」
「お腹が温かいですか?」
「……そうだ、いつも友人が魔力を注いでくれているときの荒々しさはないが、なにか同じような感覚は感じるぞ」
「それじゃアイル、カイル殿下? さっきの授業で使ってたコレを持って、やってみちゃって下さい」
「これは?」
「授業の時の」
さっきの授業で使っていた旧光の魔道具、魔力を注ぐと光るタイプだ。
「お二人に少しだけアドバイスです、今の状態のお二人の魔力を見たところアイルは思いっきり魔力を出そうとしても大丈夫だよ、カイル殿下もお腹の温かさを操るイメージでやれば……できるよ!」
「カイル」
「なんだアイル」
「緊張してきた、もしかしたら自分の出来ることが……」
「俺は早く試してみたい……だが、もし出来たらこれからあいつらとどう付き合えばいいのか……」
そうか、カイル殿下は取り巻きがいたからその安心感もあった、でもアイルはその助けになる人もいなかったんだ。
「おっほん! カイル殿下! アイルが不安そうでしょ! 手を握ってあげなよ」
「はぁ?! 未婚の女子の手をか!?」
「姉弟なら関係ないでしょ!」
「……! そういえばそうだな……いいか?」
カイル殿下の右手にアイルの左手が繋がれた。
「ん!」
「おし!」
あ……いまさらだけど魔力の流れが変わるな……でもこのタイミングで言うことじゃないか。
「うん、準備完了だよ、そこで隠れて見てるカイル殿下の側近の人、アイルの護衛の人、次女の人、とっくに見てるのは気が付いてるんだからね、二人の融資を見届けてよね、それじゃ……いい?」
「うん!」
「あぁ!」
「うん、二人とも落ち着いて……信じて」
「ひかって……」
「ひかれ!」
ぎゅっと祈るようにして閉じた目を開いたとき。
二つの光と、泣きながら笑っている二人の様子は、たくさんのいろいろな思惑の人たちから見られていた……だが今この時だけは暖かく見守られていたのは間違いない。
「つまりアイル殿……アイルは魔力の制御を、カイル殿下は魔力がないことをどうにかしたいってことでいいのね?」
「大体そうね、私はまずは制御というか出力の部分だけでもどうにか出来れば魔道具は使えるようになると思うのだけど、カイルは魔力そのものがないから、どうしようもないの」
ふむぅ? そんなに難しいことかな?
「あのー、ちょっと考えが……あと次女さんも呼んで貰っていいかな?」
「? なにをするつもり?」
「即席で簡単な魔道具を作っちゃおうかな……っと?」
「なんで疑問形なのよ!」
「いやぁ……そりゃまぁいきなりだから期待だけさせてから失敗しちゃったら悪いかなって」
「アイル、いいだろ? おい、そこの者」
カイル殿下はそう言って訓練場に控えていた兵士のような人に次女を呼びに行かせた」
「それじゃちょっと作業するね」
ハンカチ大の布を用意して……取り出したりますは魔力ペン。
魔力を集める『●』を書いてその外に円を描いて制御の『Ω』も書いておくかな、あとはゴニョゴニョして……よし! 出来た。
「リッカ? 次女が来たわ」
「うん、こっちも出来た、あのね? 次女の……」
「いまは名前はいいから、用件だけでいいわ」
「はぁ、ではカイル殿下の肌着の内側にこのパッチを当ててもらっていいですか? 陣を描いてあるほうが肌にあたるようにおへそのあたりに縫い付けてください」
「は? はい、かしこまりました」
「早め頼むわね」
「よし! カイル殿下のは準備完了、次女さんが戻ってきたら肌着を着替えていただいていいですか?」
「お? おう……いいだろう」
「それでですね? アイルなんですが……」
「なに? 私のは解決方法がないとでもいうの?」
「とっても簡単に解決できる予定です、私の実験中の『魔道具学III』が正しければ」
「『魔道具学III』って? そんな学問ないでしょう」
「まぁまぁ……私が提唱しようとしてる理屈なの、とにかく騙されたと思って一回試しませんか? ただ……」
「ただ?」
「はい! お肌に魔法陣を書かせてください!」
「「!?」」
はぁ?! って顔で同じ顔2つに見られた。
「リッカ……私も一応王族よ、ほとんど貰い手のない嫁ぎ先をさらに減らすようなことはないわよね」
「それは大丈夫、数日で消えるインクで試験的に描くだけです!」
「……それでも騒ぐ貴族はいるのだけれど、まぁ乗り掛かった舟ね? どうすればいいの」
「肩までなんですが肌をさらすことになるんですが……ここでやって問題にならないですか?」
「それは描く時だけ?」
「そうです」
「なら控室に行きましょう、そこでお願い、幸いあなたは女の子だもの、不貞にはならないわ」
ということで控室に行きアイルの利き腕に付け根に近いほうから手首に等間隔くらいで5本円を描いた、そして付け根のほうは大きな『Ω』を線に重ねて書いて、手首のほうは魔道具に書くような大きさの『Ω』に縮めた。
書かれたくすぐったさで大笑いしていたアイルを落ち着かせて訓練場に戻ると、次女さんがもどっていたので入れ替わりでカイル殿下に着替えてきてもらった。
「カイル殿下、体調は大丈夫ですか?」
「ああ……これは……どういうことだ」
「お腹が温かいですか?」
「……そうだ、いつも友人が魔力を注いでくれているときの荒々しさはないが、なにか同じような感覚は感じるぞ」
「それじゃアイル、カイル殿下? さっきの授業で使ってたコレを持って、やってみちゃって下さい」
「これは?」
「授業の時の」
さっきの授業で使っていた旧光の魔道具、魔力を注ぐと光るタイプだ。
「お二人に少しだけアドバイスです、今の状態のお二人の魔力を見たところアイルは思いっきり魔力を出そうとしても大丈夫だよ、カイル殿下もお腹の温かさを操るイメージでやれば……できるよ!」
「カイル」
「なんだアイル」
「緊張してきた、もしかしたら自分の出来ることが……」
「俺は早く試してみたい……だが、もし出来たらこれからあいつらとどう付き合えばいいのか……」
そうか、カイル殿下は取り巻きがいたからその安心感もあった、でもアイルはその助けになる人もいなかったんだ。
「おっほん! カイル殿下! アイルが不安そうでしょ! 手を握ってあげなよ」
「はぁ?! 未婚の女子の手をか!?」
「姉弟なら関係ないでしょ!」
「……! そういえばそうだな……いいか?」
カイル殿下の右手にアイルの左手が繋がれた。
「ん!」
「おし!」
あ……いまさらだけど魔力の流れが変わるな……でもこのタイミングで言うことじゃないか。
「うん、準備完了だよ、そこで隠れて見てるカイル殿下の側近の人、アイルの護衛の人、次女の人、とっくに見てるのは気が付いてるんだからね、二人の融資を見届けてよね、それじゃ……いい?」
「うん!」
「あぁ!」
「うん、二人とも落ち着いて……信じて」
「ひかって……」
「ひかれ!」
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二つの光と、泣きながら笑っている二人の様子は、たくさんのいろいろな思惑の人たちから見られていた……だが今この時だけは暖かく見守られていたのは間違いない。
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