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第2章:魔道具変革
26・謁見と変わりつつある国
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「うん、これを真魔道具学IIって命名してなるはやで王国に広めようか」
それはまさに鶴の一声だった。
多くの貴族が集まり、さらに教育にかかわる教師や次世代を担う学生達が一堂に集まっている場所で陛下直々の勅命だ。
この学問が広がると誰でも魔道具を使うことが容易になる、もちろんその他の大勢も魔力の出力量の調整ができるようになり、魔力量の補填までもが可能になるのだ、王国は屋台骨である一般市民から豊かになっていくことだろう。
「あ、そうそう、リッカちゃんのところの光の魔道具、夜になると自動でつくようにできる?」
「はい? そうですねぇ、暗くなったらくらいの精度でよければ」
「うんうんいいねぇ、宰相君? 王都の主要な道ってどれくらいあったっけ? 裏道はとりあえずいいから……あ、貴族街は除外していいよ」
「そうですね、馬車がすれ違うことができる道ということでしたら11本程で、少々お待ちを……凡そ115キロほどになります」
「115もあるのかぁ、たしか大きめの光の魔道具で100メートルくらいだったかな……」
「陛下、一応確認ですが夜の暗闇を照らす魔道具をお考えで?」
「うん、王都を照らす灯りっていうのかな、篝火以外でやる方法を考えてたんだけどね? 市民に真魔道具学IIによる恩恵をすぐに理解してもらうにはなにがいいかなーって思ったんだ、犯罪も減るし事故も減りそうだし丁度よかったね」
馬車通りのガス灯のようなイメージのようだ、確かに夜でも活動できるようになると利点は数知れない。
「なるほど……しかし夜間に強い灯りは睡眠を阻害してしまう懸念がありますね」
「地面だけを照らせばよくない? そしたらぼわっとまわりもほんわりと明るくならない?」
間接照明みたいな感じかな? それだと照らす距離が短くなっちゃうけど。
「問題点が多そうですが、案は非常に面白いですな、いったん持ち帰って検討しましょう、ちなみにこのプロジェクトの名前はいかがしますか?」
「王都を照らす灯りだから王灯? なんかちがうな……都灯? なんか嫌な響きだね……」
「王都と括らずに街で暮らす市民を照らす灯りと考えて『街灯』などいかがでしょうか」
「お! いいねぇ宰相のその固い頭からそんなのが出てくることもあるんだね、じゃあ後で予算面とかいろいろと詰めていくかな」
すごいことがさらっと決まっていくね。
「じゃ、次ね? 忌子って言葉を廃止、っていうか禁止する」
ホール内はざわめいた。
「前から調査はしてたんだけどね、双子に生まれたときには確かに欠けた才能もあるけど、別に特化した才能もあったよね、アイルとカイルのことで証明された」
「アイル殿下は魔力制御が不得手でしたが魔力量は常人の数倍、カイル殿下は魔力は限りなく少ないが、その制御技術に至っては特筆するものがあった、カイル殿下の側近4人から雑に注がれる魔力を制御していたのだからな」
「確かに、そもそもカイル殿下への魔力供給はアイル殿下がすれば良かったのです」
あ……確かに、他人と触れ合うのはダンスと治療以外にはいけないこととはいえ、異性とはいえ姉弟なら話は違ったのか――。
「うん、だからこれに反対する団体は王国内での土地や建物の所有は禁止だね」
ホールはさらに大きなざわめきに包まれた。
「陛下、教会所有の聖水についてはどのようなお考えでしょうか?」
「やっぱりそうなるよね、ライいるでしょ? 持ってきてよ」
忌子を嫌う最大の勢力は教会、正教国が各国に派遣していて、怪我や病を癒す聖なる水、つまり聖水を独占していて聖水は献金を払うことで与えられる仕組みになっていたのだ。
「公的な場所ではラインハルトとお呼びくださいと何度言えばわかるんですか、陛下」
「そんなかしこまった言葉遣いよりもさっさと話が伝わったほうがいい、僕は効率重視だよ――で? ものは?」
再三繰り返されたやり取りなのだろう、ライ君はため息をついた。
「これです」
「うん、いいね熟成されてるみたいだね……古臭いやつと違って」
「陛下? どういう話なのですか?」
宰相も大臣も聞いていたいみたいで不可解な顔をしている。
「ちょっと長い独り言になるけど聞いてね?」
「はぁ」
「はっ」
「ライとその愉快な仲間たちがムコーノ村の救援に行ってゴブリンをせん滅! ここまではさっきまで話してたよね」
その節は地味にパール商会の宣伝ありがとうございました。
「ライ達はそのままゴブリンの異常発生の原因の調査をしたんだけどね? そこでアッチノ村が発生源だってわかったんだ」
ムコーの次はアッチか……。
「アッチノ村には教会の支部があってね……もちろん教会も壊滅してたんだ、それでね? ライ達は生存者の確認の目的で教会の調査をしたんだけど、厳重に封じられてた扉の奥にあったのは、水を貯める桶があったんだよね……でライ?」
「そこだけ俺が話すのか……教会が作ってる聖水の材料は、水と――教会の『信者』そのものだった」
……つまり。
「調査していたとおり、教会は人を材料にして聖水を作ってたんだよね」
それはまさに鶴の一声だった。
多くの貴族が集まり、さらに教育にかかわる教師や次世代を担う学生達が一堂に集まっている場所で陛下直々の勅命だ。
この学問が広がると誰でも魔道具を使うことが容易になる、もちろんその他の大勢も魔力の出力量の調整ができるようになり、魔力量の補填までもが可能になるのだ、王国は屋台骨である一般市民から豊かになっていくことだろう。
「あ、そうそう、リッカちゃんのところの光の魔道具、夜になると自動でつくようにできる?」
「はい? そうですねぇ、暗くなったらくらいの精度でよければ」
「うんうんいいねぇ、宰相君? 王都の主要な道ってどれくらいあったっけ? 裏道はとりあえずいいから……あ、貴族街は除外していいよ」
「そうですね、馬車がすれ違うことができる道ということでしたら11本程で、少々お待ちを……凡そ115キロほどになります」
「115もあるのかぁ、たしか大きめの光の魔道具で100メートルくらいだったかな……」
「陛下、一応確認ですが夜の暗闇を照らす魔道具をお考えで?」
「うん、王都を照らす灯りっていうのかな、篝火以外でやる方法を考えてたんだけどね? 市民に真魔道具学IIによる恩恵をすぐに理解してもらうにはなにがいいかなーって思ったんだ、犯罪も減るし事故も減りそうだし丁度よかったね」
馬車通りのガス灯のようなイメージのようだ、確かに夜でも活動できるようになると利点は数知れない。
「なるほど……しかし夜間に強い灯りは睡眠を阻害してしまう懸念がありますね」
「地面だけを照らせばよくない? そしたらぼわっとまわりもほんわりと明るくならない?」
間接照明みたいな感じかな? それだと照らす距離が短くなっちゃうけど。
「問題点が多そうですが、案は非常に面白いですな、いったん持ち帰って検討しましょう、ちなみにこのプロジェクトの名前はいかがしますか?」
「王都を照らす灯りだから王灯? なんかちがうな……都灯? なんか嫌な響きだね……」
「王都と括らずに街で暮らす市民を照らす灯りと考えて『街灯』などいかがでしょうか」
「お! いいねぇ宰相のその固い頭からそんなのが出てくることもあるんだね、じゃあ後で予算面とかいろいろと詰めていくかな」
すごいことがさらっと決まっていくね。
「じゃ、次ね? 忌子って言葉を廃止、っていうか禁止する」
ホール内はざわめいた。
「前から調査はしてたんだけどね、双子に生まれたときには確かに欠けた才能もあるけど、別に特化した才能もあったよね、アイルとカイルのことで証明された」
「アイル殿下は魔力制御が不得手でしたが魔力量は常人の数倍、カイル殿下は魔力は限りなく少ないが、その制御技術に至っては特筆するものがあった、カイル殿下の側近4人から雑に注がれる魔力を制御していたのだからな」
「確かに、そもそもカイル殿下への魔力供給はアイル殿下がすれば良かったのです」
あ……確かに、他人と触れ合うのはダンスと治療以外にはいけないこととはいえ、異性とはいえ姉弟なら話は違ったのか――。
「うん、だからこれに反対する団体は王国内での土地や建物の所有は禁止だね」
ホールはさらに大きなざわめきに包まれた。
「陛下、教会所有の聖水についてはどのようなお考えでしょうか?」
「やっぱりそうなるよね、ライいるでしょ? 持ってきてよ」
忌子を嫌う最大の勢力は教会、正教国が各国に派遣していて、怪我や病を癒す聖なる水、つまり聖水を独占していて聖水は献金を払うことで与えられる仕組みになっていたのだ。
「公的な場所ではラインハルトとお呼びくださいと何度言えばわかるんですか、陛下」
「そんなかしこまった言葉遣いよりもさっさと話が伝わったほうがいい、僕は効率重視だよ――で? ものは?」
再三繰り返されたやり取りなのだろう、ライ君はため息をついた。
「これです」
「うん、いいね熟成されてるみたいだね……古臭いやつと違って」
「陛下? どういう話なのですか?」
宰相も大臣も聞いていたいみたいで不可解な顔をしている。
「ちょっと長い独り言になるけど聞いてね?」
「はぁ」
「はっ」
「ライとその愉快な仲間たちがムコーノ村の救援に行ってゴブリンをせん滅! ここまではさっきまで話してたよね」
その節は地味にパール商会の宣伝ありがとうございました。
「ライ達はそのままゴブリンの異常発生の原因の調査をしたんだけどね? そこでアッチノ村が発生源だってわかったんだ」
ムコーの次はアッチか……。
「アッチノ村には教会の支部があってね……もちろん教会も壊滅してたんだ、それでね? ライ達は生存者の確認の目的で教会の調査をしたんだけど、厳重に封じられてた扉の奥にあったのは、水を貯める桶があったんだよね……でライ?」
「そこだけ俺が話すのか……教会が作ってる聖水の材料は、水と――教会の『信者』そのものだった」
……つまり。
「調査していたとおり、教会は人を材料にして聖水を作ってたんだよね」
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