龍青学園GCSA

楓和

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第4章の2「同じ影の者」

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 日が暮れ、辺りは暗くなっていた。
龍青学園校門付近に教師や生徒数名が集まっている。皆が見ている先には救急車が停まっていた。そしてサイレンを鳴らして動き出す救急車。

 「甲…」

運ばれていったのは甲であった。
心配そうに見送る竜沢達。甲は、屋上に行く手前の階段下で額から血を流し、気を失って倒れているところを発見された。発見したのは学美で、昼休み以降何処に行ったのか分からなかった甲を捜索しての結果だった。



 「本当に階段の途中で滑った…のか?」

生徒指導室で考えている竜沢。何か腑に落ちない。

 「制服や手足に擦り傷すらなかった…ですね。」

鏡が言った。そう、確かに階段から転げ落ちたとしたら、怪我をしているのが額だけというところは少しおかしい。

 「あれは…誰かにやられたんじゃないか?」

竜沢の言葉に『まさか』という顔をする隆正達。

 「あの甲がやられるって…誰にや?!」
 「確かに、谷角くんをそう簡単に倒せる人はいません。もしあるとしたら不意打ちで武器を使って…ぐらいですかね。」
 「それって背後からとか?でも傷は額だよね…」

学美の言葉に考え込む竜沢。

 「無理矢理こじつけて誰かにやられたんだとして…それでもどうしても分からないところは、何で甲はあの場所に行ったんだ…ってとこだ。」

竜沢の疑問に対し皆が考えている中、流香は何かを見つけた。

 「これ…」

流香はたった今拾った物を皆に見せた。

 「それは…折り鶴か。」

それは、全体が銀色をした折り鶴だった。

 「鉄?にしては軽いな。けど…硬い。」

銀の折り鶴を色々な角度から見る竜沢。

 「ふぅ~…とにかくその銀色の折り鶴が甲くんの件に関わっている可能性はかなり高いわね。」
 「そうだな。よし、明日全員で調査しよう。」

竜沢の言葉に、うなずくGCSAと七月&学美。


 その日、甲が運び込まれた病院に行った後、竜沢は七月を家まで送っていた。
医者の話しによると、額の傷以外に損傷は見られず、それ故、逆に意識が戻るかどうかといった結論は出せないとのことだった。意識が戻ればそれで良し、そうでなければ…

 「このまま意識が戻らなければ…か。」
 「そ、そんな事ない!甲くんなら絶対復活するよっ。」
 「ははっ、そ、そうだよな。」
 〝あの甲が…くそっ〟

苦笑いしながら考え込んでいる竜沢に、七月の表情は更に曇る。

 「嫌だよ、こんなの。」

早歩きになる七月。

 「七月?ま、待てよ七月っ。」
 「…」

竜沢に呼び止められ、七月は立ち止まった。

 「…こんな感じ、嫌だよ。」

甲が目覚めない事も不安だが、もし甲が誰かにやられたのであれば次も誰かが狙われるんじゃないか…もしかしたら竜沢もやられてしまうんじゃないか…七月は不安になり、涙ぐんでいた。

 「……大丈夫だ!」

急に声を張り上げる竜沢。

 「神ちゃん…?」
 「俺は甲を信じる。あいつなら絶対復活するっ、大丈夫だ!それと…俺も鏡も隆正も、流香も学美も、絶対に大丈夫だ!」

全く根拠のない『大丈夫』を連発し、思い切り笑顔を見せる竜沢。

 「あと七月は…俺が、守るから…だから、もう泣くなっ。」
 「……ぷっ。」

ニカッとする竜沢に、思わず吹き出す七月。

 「お、お前なぁ!ふき出すとこじゃねーだろーがっ!」
 「あはっ、ごめんごめんっ。」

怒る竜沢に、七月は涙を拭いて笑顔で答えた。その七月の笑顔に竜沢はドキっとした。

 「や、あっ、え~…」
 「何?どうしたの神ちゃん。」
 「は、ははっ、いや~。」

焦っておかしくなる竜沢。しかし、実は七月もこの時ドキッとしていたのだ。

 〝さっきの言葉…ホント、昔のまんまだね〟

七月は心の奥にある暖かさを感じ、不思議な程安心できた。


 次の日、龍青学園では竜沢達による聞き込みが始まっていた。部室に落ちていた銀色の折り鶴…それが唯一の手がかり。

 「どう?何か分かった?」
 「いや、全くダメだな。」

朝一から休み時間の度に聞き込みし、昼休みも半分費やした竜沢達だったが、得られた情報はゼロ。

 「こっちもや。あ~くそっ!」

その時、流香のスマホが鳴る。メールが入ったようだ。

 「…どうやら一つ、有力な情報をつかんだようね。」
 「本当か?!」
 「ええ。内容は直接会わないと分からないけど、文面からしてそこそこ確かなモノのようね。」

スマホをしまう流香。

 「…なぁ流香、前から気になってたんだけど…情報っていつもどっから?」

学美に聞かれ、ニコッとする流香。それはいつもの、絶対教えてくれない時の顔だった。

 「とにかく会ってくるから、みんなは待ってて。」

そう言うと流香は足早に部室を出て行った。

 「つーか直接会わんでもメールとかラインに書き込んでくれりゃ済むんじゃ…?」

竜沢の素朴な疑問。

 「それも謎よね。」

七月も首をひねる。

 「う~む、こっそり見に行こうかなー。」
 「やめた方がいいよ神ちゃん。見付かったら流香に…のされるよ。」

そう言われて冷や汗を垂らし、『こ、怖っ…』と思う竜沢であった。

直接会って話す…それは高瀬が流香に惚れ、初めて流香の『影』と化した時の、たった一つの約束であった。
そのご褒美さえあれば高瀬は、何度でも『影』となり闇を駆け抜ける!…いや、そんなカッコいいもんではない。ただ単に流香の香りを近くで嗅ぎたい変態野郎である。


 龍青学園裏庭。

 「高瀬くん?何処にいるの。」

流香の問いに反応がない。

 「高瀬くん?」

沈黙が続く。

 「ふぅ~…変ね。いつもは絶対先に来てる高瀬くんが…」

しかし、しばらく待っても高瀬は来なかった。昼休みも終わりかけ、仕方なく教室へ戻ろうとしたその時、流香を呼ぶ声が。

 「…高瀬くん?」

しかしまたも沈黙。しばらく黙って耳を澄ましていると…

 「…りゅ…うか…さん…」
 「高瀬くん?!何処にいるの?!」

確かに高瀬の声だった。だがその声はあまりに小さく、蚊の羽音程しか聞こえない。

 「た、高瀬くん!」

流香は草むらに倒れている高瀬を見付けた。

 「い、一体どうしたの?!」

高瀬の傍に膝をつく流香。

 「す、すいや、せん…やられ…」
 「しっかりして!」

高瀬の言葉をしっかり聞く為に顔を近付ける流香。

 「つ、つる…う、つくし…」
 「え?」
 「え…に…にお、い…」

そこまで言うと、高瀬は気を失った。

 「高瀬くん!」

高瀬はもう、流香の声に反応しなかった。

 「…高瀬くん。」

流香は言葉を詰まらせた。

さらば影!安らかに眠れ影!最後絶対流香の匂い嗅いだ影!


 またも龍青学園の校門前に救急車が停まっている。今、甲に続いて高瀬が運ばれて行った。

 「くそっ!」

悔しがる竜沢達。そしてその日は午後の授業がなくなり、竜沢達は帰宅する事になった。

 「甲に続いて高瀬か…。しかし流香の飼ってる情報屋が高瀬だったとはな。」
 「いや、飼ってるて…」

竜沢に一応ツッコミを入れる隆正。竜沢達はそろって帰っていた。

 「でも高瀬くんが私の影って事…どうやって調べたのかしら。念には念を入れて、誰にも高瀬くんの事は言って無かったのに。」

真剣に悩む流香に七月がこう言った。

 「相手はきっと同じ影の者…忍者よ。」

しーん…。

 「ちょっと~、何で黙るかな~。」
 「ああっ?!何言ってんだい、あんたは!」
 「どーどー。」

キレる学美を抑える竜沢。

 「てへっ。」
 「ぶるなっ!…ったくこんな時に。七月には呆れるよ。」
 「そんな言い方ないでしょ?!私だって真剣に考えてんだから!」
 「余計悪いわ!時代劇好きだったからね、あんたは!」

マジで言い合う七月と学美。

 「ほっほ~、じゃあ私の言う通り本当に忍者だったらどうするのよ?」
 「へっへ~、そん時はこの前の萌え系の服着てフラメンコでも踊ってやるよ。」
 「よ~しっ、しかと聞いたわよ。」
 「七月こそ、忍者じゃなかったらどうする?」
 「その時は安来節(やすきぶし)の衣装着てどじょうすくいやってやるわよ。」
 「よ~しっ、そん時ゃ鼻に一文銭付けろよ?勝負だ七月!」
 「おうよっ!」

火花散らす二人!そんな二人を放っておき、竜沢達はさっさと歩いて行く。

 「あ~!みんなひどいっ。場を和まそうとしてたのに~っ。」
 「待てよーっ。」

竜沢達を追い掛ける七月と学美。


その日の晩。竜沢の家。

 「あ~、よっこらしょっと。」
 「おばはんだな。」
 「何でやねん!」

ズゴッ!

椅子に座る時に年寄りの様な声を出した暮巴にツッコミを入れた竜沢は、次の瞬間凄まじいツッコミ返し(正確にはボディブロー)をくらって倒れた。その時、電話が鳴った。

 「おい、電話出ろよ。」
 「ぐぬぬ…」

苦しみながらも何とか電話までたどり着く竜沢。

 「も、もしもし。」
 「…預かった。」
 「はぁ?」

小さく、しかも機械のような声だったので始めの部分を聞き逃す竜沢。

 「…園花咲子を預かった。」
 「はぁ?」

次はちゃんと聞こえたが、そのドラマでしか聞いた事がないセリフに、竜沢はまた聞き返した。

 「龍青学園に来い。校門から屋上までたどり着いたら園花咲子を返してやる。」

そして電話は切れた。

 「…いたずら、じゃない?いや…うーん。」

突拍子もない内容に信じきれない竜沢は、とりあえず鏡と隆正に連絡をとってみるのであった。
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