51 / 85
【ヤンデレβ×性悪α】 高慢αは手折られる
第五話
しおりを挟む
「つっ…」
身じろぎした時に腰回りに鈍い痛みを感じ、目が覚めた。頭を撫でられる感覚の心地よさにまどろみ始めた。
「セラフ様?」
それなのに頭上から呼びかけられた声に、本能が警報を鳴らす。そして頭は一気に覚醒し、飛び起きたのだが
「いたぁっ…」
上半身を起こしたら腰や下腹部、そして先程まで彼を受け入れていた場所に激痛が走った。そのまま下腹部をおさえ、そのままうずくまったため、脱走は失敗に終わる。
「大丈夫か?体まだ痛むだろうから無理しない方がいいぞ」
「誰のせいだと思っているんだ!」
バナトは私の背中を優しくさする。だがそもそも、この男のせいなのだ。そう思うとイライラが募り、バナトの手を跳ね除け睨みつける。
「それはもちろん俺のせいだな。睨んでる顔も綺麗だ。セラフ様は、どんな表情をしても美しいな」
「怒られているのに、なんでそんなに嬉しそうなのですか。それに敬語はもう辞めたのですね」
「そりゃ、セラフ様と俺はもう一線を超えた仲だし。だから、セラフ様も敬語じゃなくていいんだぜ」
ベッドに腰掛けていたバナトは、躊躇いなく私の肩を抱き自分の方へ引き寄せる。そしてバナトに抱きしめられる。
「一線は超えましたね。あんなに手酷く抱かれたのは初めてです。だからもう二度とあなたとは寝ません」
「え、セラフ様、待って。確かにわざと痛くしたけど、それはセラフ様が愛おしいからで…」
バナトは焦った様子で抱きしめていた私の顔を覗き込み弁解をする。その様子は面白いが、流石にあの抱き方をまたされるのは堪らない。でもバナトが反省して、抱き方を改めるなら次を考えてやらないでもない。前戯までは、頭が狂いそうになるくらい気持ちよかったし。
そんなことを考えながら、バナトが焦る様を楽しむ。すこし心がくすぐられる雰囲気だったのだが、それをぶち壊す様に扉が勢いよく開けられた。
「フェナ!噂の伴侶様を見に来てやったわ!」
ウェーブのかかった茶髪のポニーテールを揺らし、勝ち気な態度の女性が扉の向こうから現れた。
「うわ…なんで来るんだよ。今、俺はセラフ様のご機嫌取るのに忙しい。お前の相手をしている暇なんてないから帰れ!」
バナトは私を抱きしめたまま、女性に手で追い払う仕草をする。
「はぁ⁈わざわざ私が出向いてやったのに、その態度はなんなの?それに、いつまで抱きしめてるのよ。私は、あんたじゃなくて、そこの泥棒猫に用があんのよ!」
「誰も来てくれなんて頼んでないだろ!だいたい、お前にセラフ様を泥棒猫呼ばわりする筋合いはないだろ!それに初対面の相手を指差すな、失礼だぞ」
女性から敵意の眼差しを向けられる。私を泥棒猫扱いするということは、この女性はバナトの恋人だったのかもしれない。そしてバナトが私を伴侶にしたため泣く泣く別れた。それなら、私を泥棒猫と呼ぶ辻褄も合う。
私はバナトの腕の中から抜け出し、女性に向き合う。そして、そこでハタと思い出す。私のコートもブラウスもバナトに引きちぎられていた。慌てて自分の身なりを確認すると、バナトが着せてくれたのかシルクの夜着を身に纏っていた。初対面の相手に夜着姿を見せるのは、すこし気がひけたが引き裂かれたブラウス姿よりはマシだろう。
「あんた、さっきからなに一人で百面相してるの」
「あぁ、これは失礼しましたお嬢様。少し考え事をしていまして。ええと、失礼ながら、あなたとバナトは恋人関係にあったと私は考えているのですが間違いないでしょうか?」
「セラフ様、それは」
「はっ⁈なに言っているの⁈恋人なんかじゃないわ!
私とフェナは幼馴染で婚約者なのよ!」
口を挟もうとしたバナトの声を遮って女性は私を指さし高らかにそう宣言した。
侯爵家出身だったので、今までこんな口のききかたをされた経験はなかった。私より下の階級の貴族は私のご機嫌をとるようにゴマをすってきたのだ。それが貴族でもない庶民の小娘にこんな物言いをされるなんて。そのことに少し不快になった。
決して、この小娘が婚約者だったと聞かされイラついたわけだじゃない。そう私は、この小娘の態度が気に食わないのだと、私はなぜか自分に言い聞かせていた。
身じろぎした時に腰回りに鈍い痛みを感じ、目が覚めた。頭を撫でられる感覚の心地よさにまどろみ始めた。
「セラフ様?」
それなのに頭上から呼びかけられた声に、本能が警報を鳴らす。そして頭は一気に覚醒し、飛び起きたのだが
「いたぁっ…」
上半身を起こしたら腰や下腹部、そして先程まで彼を受け入れていた場所に激痛が走った。そのまま下腹部をおさえ、そのままうずくまったため、脱走は失敗に終わる。
「大丈夫か?体まだ痛むだろうから無理しない方がいいぞ」
「誰のせいだと思っているんだ!」
バナトは私の背中を優しくさする。だがそもそも、この男のせいなのだ。そう思うとイライラが募り、バナトの手を跳ね除け睨みつける。
「それはもちろん俺のせいだな。睨んでる顔も綺麗だ。セラフ様は、どんな表情をしても美しいな」
「怒られているのに、なんでそんなに嬉しそうなのですか。それに敬語はもう辞めたのですね」
「そりゃ、セラフ様と俺はもう一線を超えた仲だし。だから、セラフ様も敬語じゃなくていいんだぜ」
ベッドに腰掛けていたバナトは、躊躇いなく私の肩を抱き自分の方へ引き寄せる。そしてバナトに抱きしめられる。
「一線は超えましたね。あんなに手酷く抱かれたのは初めてです。だからもう二度とあなたとは寝ません」
「え、セラフ様、待って。確かにわざと痛くしたけど、それはセラフ様が愛おしいからで…」
バナトは焦った様子で抱きしめていた私の顔を覗き込み弁解をする。その様子は面白いが、流石にあの抱き方をまたされるのは堪らない。でもバナトが反省して、抱き方を改めるなら次を考えてやらないでもない。前戯までは、頭が狂いそうになるくらい気持ちよかったし。
そんなことを考えながら、バナトが焦る様を楽しむ。すこし心がくすぐられる雰囲気だったのだが、それをぶち壊す様に扉が勢いよく開けられた。
「フェナ!噂の伴侶様を見に来てやったわ!」
ウェーブのかかった茶髪のポニーテールを揺らし、勝ち気な態度の女性が扉の向こうから現れた。
「うわ…なんで来るんだよ。今、俺はセラフ様のご機嫌取るのに忙しい。お前の相手をしている暇なんてないから帰れ!」
バナトは私を抱きしめたまま、女性に手で追い払う仕草をする。
「はぁ⁈わざわざ私が出向いてやったのに、その態度はなんなの?それに、いつまで抱きしめてるのよ。私は、あんたじゃなくて、そこの泥棒猫に用があんのよ!」
「誰も来てくれなんて頼んでないだろ!だいたい、お前にセラフ様を泥棒猫呼ばわりする筋合いはないだろ!それに初対面の相手を指差すな、失礼だぞ」
女性から敵意の眼差しを向けられる。私を泥棒猫扱いするということは、この女性はバナトの恋人だったのかもしれない。そしてバナトが私を伴侶にしたため泣く泣く別れた。それなら、私を泥棒猫と呼ぶ辻褄も合う。
私はバナトの腕の中から抜け出し、女性に向き合う。そして、そこでハタと思い出す。私のコートもブラウスもバナトに引きちぎられていた。慌てて自分の身なりを確認すると、バナトが着せてくれたのかシルクの夜着を身に纏っていた。初対面の相手に夜着姿を見せるのは、すこし気がひけたが引き裂かれたブラウス姿よりはマシだろう。
「あんた、さっきからなに一人で百面相してるの」
「あぁ、これは失礼しましたお嬢様。少し考え事をしていまして。ええと、失礼ながら、あなたとバナトは恋人関係にあったと私は考えているのですが間違いないでしょうか?」
「セラフ様、それは」
「はっ⁈なに言っているの⁈恋人なんかじゃないわ!
私とフェナは幼馴染で婚約者なのよ!」
口を挟もうとしたバナトの声を遮って女性は私を指さし高らかにそう宣言した。
侯爵家出身だったので、今までこんな口のききかたをされた経験はなかった。私より下の階級の貴族は私のご機嫌をとるようにゴマをすってきたのだ。それが貴族でもない庶民の小娘にこんな物言いをされるなんて。そのことに少し不快になった。
決して、この小娘が婚約者だったと聞かされイラついたわけだじゃない。そう私は、この小娘の態度が気に食わないのだと、私はなぜか自分に言い聞かせていた。
2
あなたにおすすめの小説
婚約破棄を提案したら優しかった婚約者に手篭めにされました
多崎リクト
BL
ケイは物心着く前からユキと婚約していたが、優しくて綺麗で人気者のユキと平凡な自分では釣り合わないのではないかとずっと考えていた。
ついに婚約破棄を申し出たところ、ユキに手篭めにされてしまう。
ケイはまだ、ユキがどれだけ自分に執着しているのか知らなかった。
攻め
ユキ(23)
会社員。綺麗で性格も良くて完璧だと崇められていた人。ファンクラブも存在するらしい。
受け
ケイ(18)
高校生。平凡でユキと自分は釣り合わないとずっと気にしていた。ユキのことが大好き。
pixiv、ムーンライトノベルズにも掲載中
当たり前の幸せ
ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。
初投稿なので色々矛盾などご容赦を。
ゆっくり更新します。
すみません名前変えました。
俺はつがいに憎まれている
Q矢(Q.➽)
BL
最愛のベータの恋人がいながら矢崎 衛というアルファと体の関係を持ってしまったオメガ・三村圭(みむら けい)。
それは、出会った瞬間に互いが運命の相手だと本能で嗅ぎ分け、強烈に惹かれ合ってしまったゆえの事だった。
圭は犯してしまった"一夜の過ち"と恋人への罪悪感に悩むが、彼を傷つける事を恐れ、全てを自分の胸の奥に封印する事にし、二度と矢崎とは会わないと決めた。
しかし、一度出会ってしまった運命の番同士を、天は見逃してはくれなかった。
心ならずも逢瀬を繰り返す内、圭はとうとう運命に陥落してしまう。
しかし、その後に待っていたのは最愛の恋人との別れと、番になった矢崎の
『君と出会いさえしなければ…』
という心無い言葉。
実は矢崎も、圭と出会ってしまった事で、最愛の妻との番を解除せざるを得なかったという傷を抱えていた。
※この作品は、『運命だとか、番とか、俺には関係ないけれど』という作品の冒頭に登場する、主人公斗真の元恋人・三村 圭sideのショートストーリーです。
巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】
晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。
発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。
そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。
第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結】たとえ彼の身代わりだとしても貴方が僕を見てくれるのならば… 〜初恋のαは双子の弟の婚約者でした〜
葉月
BL
《あらすじ》
カトラレル家の長男であるレオナルドは双子の弟のミカエルがいる。天真爛漫な弟のミカエルはレオナルドとは真逆の性格だ。
カトラレル家は懇意にしているオリバー家のサイモンとミカエルが結婚する予定だったが、ミカエルが流行病で亡くなってしまい、親の言いつけによりレオナルドはミカエルの身代わりとして、サイモンに嫁ぐ。
愛している人を騙し続ける罪悪感と、弟への想いを抱き続ける主人公が幸せを掴み取る、オメガバースストーリー。
《番外編 無垢な身体が貴方色に染まるとき 〜運命の番は濃厚な愛と蜜で僕の身体を溺れさせる〜》
番になったレオとサイモン。
エマの里帰り出産に合わせて、他の使用人達全員にまとまった休暇を与えた。
数日、邸宅にはレオとサイモンとの2人っきり。
ずっとくっついていたい2人は……。
エチで甘々な数日間。
ー登場人物紹介ー
ーレオナルド・カトラレル(受け オメガ)18歳ー
長男で一卵性双生児の弟、ミカエルがいる。
カトラレル家の次期城主。
性格:内気で周りを気にしすぎるあまり、自分の気持ちを言えないないだが、頑張り屋で努力家。人の気持ちを考え行動できる。行動や言葉遣いは穏やか。ミカエルのことが好きだが、ミカエルがみんなに可愛がられていることが羨ましい。
外見:白肌に腰まである茶色の髪、エメラルドグリーンの瞳。中世的な外見に少し幼さを残しつつも。行為の時、幼さの中にも妖艶さがある。
体質:健康体
ーサイモン・オリバー(攻め アルファ)25歳ー
オリバー家の長男で次期城主。レオナルドとミカエルの7歳年上。
レオナルドとミカエルとサイモンの父親が仲がよく、レオナルドとミカエルが幼い頃からの付き合い。
性格:優しく穏やか。ほとんど怒らないが、怒ると怖い。好きな人には尽くし甘やかし甘える。時々不器用。
外見:黒髪に黒い瞳。健康的な肌に鍛えられた肉体。高身長。
乗馬、剣術が得意。貴族令嬢からの人気がすごい。
BL大賞参加作品です。
伯爵家次男は、女遊びの激しい(?)幼なじみ王子のことがずっと好き
メグエム
BL
伯爵家次男のユリウス・ツェプラリトは、ずっと恋焦がれている人がいる。その相手は、幼なじみであり、王位継承権第三位の王子のレオン・ヴィルバードである。貴族と王族であるため、家や国が決めた相手と結婚しなければならない。しかも、レオンは女関係での噂が絶えず、女好きで有名だ。男の自分の想いなんて、叶うわけがない。この想いは、心の奥底にしまって、諦めるしかない。そう思っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる