高貴なオメガは、ただ愛を囁かれたい【本編完結】

きど

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【ヤンデレβ×性悪α】 高慢αは手折られる

第十四話 side.フェナーラ

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「あ、やだ。…まだ動かさないで」

達しても後孔は俺の指を奥深くまで飲み込もうとうねり、屹立から吐き出された白濁がうっすら筋肉のついた腹を汚す。
セラフは、まだ頭がうまく回らないのか扇情的な姿を晒したまま俺のかすかな動きにも反応する。
このまま己の熱を捩じ込んで、セラフの体の奥まで俺の存在を刻みつけたくなる。でも、セラフが嫌がることはしたくない。ギリギリの理性を何とか保ち、セラフを再び膝の上に乗せる。そして、いきりたつ俺の下半身にセラフの体が触れないようにして抱きしめた。

「可愛すぎだろ。体、平気か?」

「んっ…やっ触んないで」

落ち着かせようとセラフの背中を撫でた。それさえ刺激になってしまうようで甘い声をあげる。
全く。人の気も知らないで。頑張れ俺の理性。負けるな。
生殺しの虚しさを振り払うように、自分を鼓舞する。

少し時間が経てば、達した余韻が抜けてセラフの思考力が戻ってくる。

「……私がアルファにこだわる理由を知りたいんでしたっけ?」

「ああ」

セラフは悔しそうな表情でポツリと呟く。自分が負けたと言わないあたり、プライドの高いセラフらしい。

「それは。レトア家が血統を重視する一族だからですよ。私も幼い頃から、アルファの血統に恥じない結果を求められてきたので、自分と対等な能力をもつアルファにしか興味が湧かないだけです」

「へぇ」

セラフは俺の瞳をじっと見て言い切る。しかし、その瞳は不安で揺れていることに本人は気づいていないのだろう。だいたい現レトア家当主つまりセラフの父は周囲の反対を押し切ってベータの女性を妻に迎え入れている。セラフの母親がベータなのに、息子にアルファであることを強要するだろうか?それとも、次期当主だから敢えて厳しく育てられたのだろうか?
今ここで追求すべきか。
それともセラフと心の距離を縮めるために、適当に話を合わせるべきか。

「…貴族様は体裁とかを気にしなきゃいけないから、大変だな。そんな中、アルファらしくいたセラフはさすがだな」

「そんな…当然のことですから」

セラフが照れたのか、嘘をついた罪悪感からかどちらか分からないが、言葉が尻すぼみになる。

俺だって伊達に人生の半分の期間、セラフを追い続けてきたわけじゃない。セラフの地雷くらい分かっている。今ここでセラフのプライドを傷つけて心を閉ざされたら今までの苦労が水の泡になってしまう。

* * *
セラフを初めて見た日のことを今でも鮮明に覚えている。
あれは、父に連れられて行ったヴィルム殿下の6歳の誕生日パーティーだった。

当時のバナト商会はエステートが商圏だったから、王族やその取り巻きの貴族と懇意にしていた。もちろん今もその関係性は続いている。

ヴィルム殿下とカリーノ様は、王妃様の美貌を受け継ぎ、"白亜の天使"と巷では言われていた。俺も誕生日パーティーでお二人の姿を初めて見たときは、可愛いと素直に思った。

ちなみに、当時からアーシュはヴィルム殿下にベッタリでヴィルム殿下に近づこうとする輩な牽制しまくっていた。そのせいかヴィルム殿下とお近づきになりたい貴族達からは、"漆黒の悪魔"なんてダサいあだ名をつけられていた。それなのに、当のヴィルム殿下はアーシュの暗躍に一切気づいていないのだから、まだ面識の無かったアーシュを若干不憫だったし、そこまでする意味があるのかとも思った。でもセラフに恋してから、アーシュのあの行動の意味が痛いほどよく分かった。

会場にいる大人も子供もこぞって白亜の天使ちゃん達に媚びへつらうのが、11歳の当時の俺には汚らしく思えて仕方なかった。だから、セラフを見つけられたんだと思う。

当時のセラフは白亜の天使ちゃん達に興味を示さずにバルコニーから中庭を眺めていた。夜風に亜麻色の髪をなびかせ、月灯にてらされた横顔は綺麗で、絵画から出てきたのだと錯覚してしまいそうになる程だった。セラフをもっと知りたいと俺が思ったのは自然の流れだった。

「あの。いいのですか?」

俺は恐る恐るセラフに話しかけた。遠くで見ていたときにはだいぶ年上なのだろうと思っていたが、こちらに振り向いたセラフは俺と変わらないくらいの年齢に見えた。

「あなた誰ですか?」

俺の質問には答えず、セラフは眉間に皺を寄せ固い声で聞き返してきた。その態度は不審者に対応するものだった。

「ああ、すみません。私はバナト商会の息子のフェナーラといいます」

「バナト商会?ああ、あのベータの」

俺の出自を知るとセラフは興味を失ったように視線をまた中庭に向けた。

「あの、すみません。あなたのお名前を教えてください」

「ベータに教える義理はありません。話すこともないので、どっかにいってもらえますか?」

セラフはこちらを見る事なくはっきり言い切った。ベータだけどアルファよりも優秀だと周りにもてはやされていた俺は、セラフのまさかの対応に反応ができなかった。

「……」

「……」

幼かった俺はセラフの興味をひく術を持っていなくて、ただ未練がましく横顔を見ていることしか出来なかった。
この綺麗な子はどうしたら、自分の方に振り向くのかと一生懸命考えたが、いい案が出てくることはなかった。

父親にフィリアス卿の御子息に挨拶を促されるまで、無言でセラフを見つめていた。

俺のプライドを粉々にしたセラフに、どうしても見てほしい。幼い執着、この時はまだ自覚していなかったが、すでに恋に落ちていたのだろう。

その数年後に最悪な形で自覚するくらいなら、この時に気づいておけば良かったのかもしれない。

* * *
セラフとの初対面の美しい思い出に浸れば下半身の熱も収まるかと思ったが、本能的な反応は言う事をきいてくれない。
このままくっついていると俺の下半身が暴走しかねない。そうなる前に

「セラフ、顔が赤くなってる。茹だってしまうまえに先に上がってくれ。俺はもう少し入っている」

「あなたも顔が真っ赤じゃないですか。のぼせますよ」

セラフは頭がいいのに、意外な所で天然を炸裂させるから困ったものだ。
セラフと密着していたのだから、俺の下半身は爆発寸前。そんな状態で歩けるはずがない。おあずけをくらっているのだから、少しくらい意地悪なら許されるはず。そう思い俺はセラフの手を掴み、自身の下半身に導く。

「こんな状態だから歩けないんだわ。セラフだって…男だから、分かるだろ?」

本当は、『抜いてくれるか?』と聞きたかったが、それで嫌われたら元も子もないから辞めた。

「なっ…あ、あなたって人はっ、本当にデリカシーがっ!もうっ、先にあがりますからっ」

セラフは顔を真っ赤にして俺の手を振り解いて、急いでバスタブからあがる。体を見られたくないのか、すぐに背をむけてしまう。そんなことをしても、もう何度も見ているのに。そんな意地らしい所に心をくすぐられる。

長いこと待ち望んで、やっと側にいられるようになったんだ。セラフが心を開いてくれるまでの、ほんの少しの期間なんてたいしたことない。今後はじっくり外堀を埋めて、気づいた時には俺から逃れられないようにするだけだ。そんな事を考えながら、先程のセラフの艶姿を思い浮かべ自分を慰めた。
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