61 / 85
【ヤンデレβ×性悪α】 高慢αは手折られる
第十五話
しおりを挟む
あれからフェナーラと何度か賭けの勝負をしたものの、私は白星を揚げることができなかった。アルファの私がベータのあの男に一勝も出来ないなんて。
やはり、私は出来損ないのアルファなのだ。今まで他のアルファと比べ能力が低いことは自覚していた。でも、ベータやオメガよりは優れているのだと信じて疑わなかった。だからこそ、ベータやオメガを卑下することで自分の自尊心を保っていたのに。
「また……あなたの勝ちですね。どうぞ私に命令してください」
本格的な夏の暑さになる前の生温い風が中庭のテラス席にそよぐ。その風を浴びると、じっとりと体温が上がるのが分かる。でも、今はそんなことを不快に思う暇などなく、目の前の男が何を言い出すのか神経を尖らせてた。
先程の勝負で勝ったフェナーラは自分の顎を撫で考える素振りをしている。
「うーん。今回も保留にして使いたいタイミングまで取っておく」
「またそれですか。もう5回分も取っておいているのだから、そのうち使いきれなくなりますよ」
「セラフにやって欲しいことはいくらでも思いつくから、使いきれないってことはないから大丈夫だ」
フェナーラは不敵に口の端を吊り上げる。それを見て身の危険を感じたが、そのことを悟られないように深く息を吐き出す。
「はぁ。……貴方が私に何をさせたいのかはだいたい想像はついています。でも先に言わせていただきますが、私が体で堕ちることはありませんから」
保留分をある程度貯めてから、それを使って私を好きだから抱きたいとでも言うつもりだろう。私が以前、アルファにしか抱かれるつもりはないと言ったことへの意趣返しで、賭けの勝ちをちらつかせれば、私が拒否しないと思っているに違いない。
そして私は冷めた視線を彼に向けると、私の話を黙って聞いていたフェナーラは俯き静かに肩を震わす。
大の男が泣いているのか?そう思い椅子から立ち上がり向かいにいるフェナーラに手を伸ばす
「ふははっ」
するとフェナーラは堰を切ったように笑い声をあげる。いや、今のどこに笑うポイントがあるのだろうか。フェナーラの様子に呆気に取られ伸ばした私の手は宙を彷徨う。
「何が面白いのですか?」
「ごめん。ごめん」
状況を把握するとフェナーラの態度に腹立ちを感じた。私が手を引く前にフェナーラは私の手のひらを両手で包みこむように握る。
「前にも言ったと思うけど、セラフが俺を求めてくるまでは無理矢理抱いたりしないから。それに、口説いている相手に嫌われることは普通はしないだろ。もしかして俺って下半身で物事を考えるタイプだとセラフに思われてる?」
嫌われたくないなら、初めて肌を合わせた相手に痛みを与えるような手酷い抱きかたは普通はしないとは思うが。まあ、現に私がフェナーラを嫌いになってないから問題はなかったということか。
「そこまでとは思っていませんよ。ただ、愛情と性欲が直結しているタイプだと思っていただけです」
「好きだから触れ合いたいし、他のやつに見せない姿を見たいとは思ってる。でも、セックス以外にも愛情は表現できるから」
フェナーラは立ち上がり、掴んでいた私の手に口付けを落とす。
「たった今、保留にしていた分の使い道を思いついた」
顔をあげそう言い、私に優しく微笑んだ。
やはり、私は出来損ないのアルファなのだ。今まで他のアルファと比べ能力が低いことは自覚していた。でも、ベータやオメガよりは優れているのだと信じて疑わなかった。だからこそ、ベータやオメガを卑下することで自分の自尊心を保っていたのに。
「また……あなたの勝ちですね。どうぞ私に命令してください」
本格的な夏の暑さになる前の生温い風が中庭のテラス席にそよぐ。その風を浴びると、じっとりと体温が上がるのが分かる。でも、今はそんなことを不快に思う暇などなく、目の前の男が何を言い出すのか神経を尖らせてた。
先程の勝負で勝ったフェナーラは自分の顎を撫で考える素振りをしている。
「うーん。今回も保留にして使いたいタイミングまで取っておく」
「またそれですか。もう5回分も取っておいているのだから、そのうち使いきれなくなりますよ」
「セラフにやって欲しいことはいくらでも思いつくから、使いきれないってことはないから大丈夫だ」
フェナーラは不敵に口の端を吊り上げる。それを見て身の危険を感じたが、そのことを悟られないように深く息を吐き出す。
「はぁ。……貴方が私に何をさせたいのかはだいたい想像はついています。でも先に言わせていただきますが、私が体で堕ちることはありませんから」
保留分をある程度貯めてから、それを使って私を好きだから抱きたいとでも言うつもりだろう。私が以前、アルファにしか抱かれるつもりはないと言ったことへの意趣返しで、賭けの勝ちをちらつかせれば、私が拒否しないと思っているに違いない。
そして私は冷めた視線を彼に向けると、私の話を黙って聞いていたフェナーラは俯き静かに肩を震わす。
大の男が泣いているのか?そう思い椅子から立ち上がり向かいにいるフェナーラに手を伸ばす
「ふははっ」
するとフェナーラは堰を切ったように笑い声をあげる。いや、今のどこに笑うポイントがあるのだろうか。フェナーラの様子に呆気に取られ伸ばした私の手は宙を彷徨う。
「何が面白いのですか?」
「ごめん。ごめん」
状況を把握するとフェナーラの態度に腹立ちを感じた。私が手を引く前にフェナーラは私の手のひらを両手で包みこむように握る。
「前にも言ったと思うけど、セラフが俺を求めてくるまでは無理矢理抱いたりしないから。それに、口説いている相手に嫌われることは普通はしないだろ。もしかして俺って下半身で物事を考えるタイプだとセラフに思われてる?」
嫌われたくないなら、初めて肌を合わせた相手に痛みを与えるような手酷い抱きかたは普通はしないとは思うが。まあ、現に私がフェナーラを嫌いになってないから問題はなかったということか。
「そこまでとは思っていませんよ。ただ、愛情と性欲が直結しているタイプだと思っていただけです」
「好きだから触れ合いたいし、他のやつに見せない姿を見たいとは思ってる。でも、セックス以外にも愛情は表現できるから」
フェナーラは立ち上がり、掴んでいた私の手に口付けを落とす。
「たった今、保留にしていた分の使い道を思いついた」
顔をあげそう言い、私に優しく微笑んだ。
2
あなたにおすすめの小説
夫には好きな相手がいるようです。愛されない僕は針と糸で未来を縫い直します。
伊織
BL
裕福な呉服屋の三男・桐生千尋(きりゅう ちひろ)は、行商人の家の次男・相馬誠一(そうま せいいち)と結婚した。
子どもの頃に憧れていた相手との結婚だったけれど、誠一はほとんど笑わず、冷たい態度ばかり。
ある日、千尋は誠一宛てに届いた女性からの恋文を見つけてしまう。
――自分はただ、家からの援助目当てで選ばれただけなのか?
失望と涙の中で、千尋は気づく。
「誠一に頼らず、自分の力で生きてみたい」
針と糸を手に、幼い頃から得意だった裁縫を活かして、少しずつ自分の居場所を築き始める。
やがて町の人々に必要とされ、笑顔を取り戻していく千尋。
そんな千尋を見て、誠一の心もまた揺れ始めて――。
涙から始まる、すれ違い夫婦の再生と恋の物語。
※本作は明治時代初期~中期をイメージしていますが、BL作品としての物語性を重視し、史実とは異なる設定や表現があります。
※誤字脱字などお気づきの点があるかもしれませんが、温かい目で読んでいただければ嬉しいです。
愛に変わるのに劇的なキッカケは必要ない
かんだ
BL
オメガバ/α×Ω/見知らぬαの勘違いにより、不安定だった性が完全なΩになってしまった受け。αの攻めから責任を取ると言われたので金銭や仕事、生活等、面倒を見てもらうことになるが、それでもΩになりたくなかった受けは絶望しかない。
攻めを恨むことしか出来ない受けと、段々と受けが気になってしまい振り回される攻めの話。
ハピエン。
縁結びオメガと不遇のアルファ
くま
BL
お見合い相手に必ず運命の相手が現れ破談になる柊弥生、いつしか縁結びオメガと揶揄されるようになり、山のようなお見合いを押しつけられる弥生、そんな折、中学の同級生で今は有名会社のエリート、藤宮暁アルファが泣きついてきた。何でも、この度結婚することになったオメガ女性の元婚約者の女になって欲しいと。無神経な事を言ってきた暁を一昨日来やがれと追い返すも、なんと、次のお見合い相手はそのアルファ男性だった。
運命の番は姉の婚約者
riiko
BL
オメガの爽はある日偶然、運命のアルファを見つけてしまった。
しかし彼は姉の婚約者だったことがわかり、運命に自分の存在を知られる前に、運命を諦める決意をする。
結婚式で彼と対面したら、大好きな姉を前にその場で「運命の男」に発情する未来しか見えない。婚約者に「運命の番」がいることを知らずに、ベータの姉にはただ幸せな花嫁になってもらいたい。
運命と出会っても発情しない方法を探る中、ある男に出会い、策略の中に翻弄されていく爽。最後にはいったい…どんな結末が。
姉の幸せを願うがために取る対処法は、様々な人を巻き込みながらも運命と対峙して、無事に幸せを掴むまでのそんなお話です。
性描写が入るシーンは
※マークをタイトルにつけますのでご注意くださいませ。
物語、お楽しみいただけたら幸いです。
兄様の親友と恋人期間0日で結婚した僕の物語
サトー
BL
スローン王国の第五王子ユリアーネスは内気で自分に自信が持てず第一王子の兄、シリウスからは叱られてばかり。結婚して新しい家庭を築き、城を離れることが唯一の希望であるユリアーネスは兄の親友のミオに自覚のないまま恋をしていた。
ユリアーネスの結婚への思いを知ったミオはプロポーズをするが、それを知った兄シリウスは激昂する。
兄に縛られ続けた受けが結婚し、攻めとゆっくり絆を深めていくお話。
受け ユリアーネス(19)スローン王国第五王子。内気で自分に自信がない。
攻め ミオ(27)産まれてすぐゲンジツという世界からやってきた異世界人。を一途に思っていた。
※本番行為はないですが実兄→→→→受けへの描写があります。
※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。
歳上公爵さまは、子供っぽい僕には興味がないようです
チョロケロ
BL
《公爵×男爵令息》
歳上の公爵様に求婚されたセルビット。最初はおじさんだから嫌だと思っていたのだが、公爵の優しさに段々心を開いてゆく。無事結婚をして、初夜を迎えることになった。だが、そこで公爵は驚くべき行動にでたのだった。
ほのぼのです。よろしくお願いします。
※ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる