高貴なオメガは、ただ愛を囁かれたい【本編完結】

きど

文字の大きさ
72 / 85
【ヤンデレβ×性悪α】 高慢αは手折られる

第二十五話

しおりを挟む
「フェナーラ!手を叩くなんてエイヴィアン伯爵に失礼じゃないですか!」

「そんなことはどうでもいい。それよりセラフ、俺の質問の答えは?」

伯爵に無礼を働いたフェナーラを諌めるも、フェナーラは反省する素振りなどなく、相変わらず冷たい声で一方的に聞いてくる。私の意見など聞く気がない様なフェナーラの態度に、最近芽生えた劣等感が刺激され、無意識に攻撃的な口調になる。

「そんなことってフェナーラ、あなたって人は!」

「あぁ、セラフ様、大丈夫です。気にしてませんから。バナトもそんな怖い顔すんなよ。俺はセラフ様に挨拶していただけなんだから」

「そうか。じゃあもう用は済んだよな?セラフ、部屋に戻るぞ」

不穏な空気になった私達を、伯爵がとりなす。それでもフェナーラは伯爵に対し、失礼な物言いをして伯爵の返事も聞かずに私の腕を引っ張りその場を離れる。

「ちょっと、止まりなさい!フェナーラ!」

私の制止など聞こえていないようにフェナーラは私を連れて足早にパーティー会場を後にした。

ーーー
私達が滞在している部屋に着くやいなや、フェナーラは少し手荒く私の背中を壁に押し付け、逃げ道を塞ぐように私のサイドに手をつく。フェナーラが苛立っている理由がわからなければ、こんな扱いをされる覚えもない。

「一体何なんですか!こんな風に乱暴にされる筋合いはありませんが?」

反発の声をあげ、フェナーラの胸を押し返しても、体格も力も私では敵わないのだから、びくともしなかった。

「お前になくても、俺にはある」

お前なんて言われたのは始めてで。フェナーラは声を荒げることはないが、言葉遣いには苛立ちがありありと表れていた。リドールに来る前に一度怒らせているが、今回はそれ以上な気がする。でも何故?

「それじゃ答えになっていません!何にそんなに苛立っているのですか⁈」

「お前は俺の伴侶ものなんだから、俺以外の男に気安く触らせるな」

気安く触らせるな?触らせてなんていないじゃないか。一体何を言っているんだ?と思い一瞬言葉に詰まる。私がすぐに了承しなかったからか、フェナーラの眉がピクリと動く。

「返事は?」

「触らせてなんていないじゃないですか。第一、私はあなたのものじゃな…んっ」

あなたのものじゃなくて、あなたの伴侶でしょ?そう言い切る前にフェナーラに噛み付くようなキスをされる。

「んっ…ふあっ…んっ」

キスから逃れようと顔を捩ると、フェナーラの手で頭を抑えられ舌で口内を犯される。

「んっんっ…ふぅっん」

フェナーラの足が私の股の間に入り込み、太腿で私の中心をさする。キスで反応しかけていたそこは、更なる刺激を受け体積を増していく。このままでは、話し合いどころではなくなると理性が働き、フェナーラの胸を拳で叩く。それなのにフェナーラは一向に止める気配はない。一方的な行為に私も我慢の限界を迎えた。

「っ!」

フェナーラが驚いた様子で唇を離す。私の口内に入り込んでいたフェナーラの舌に噛みついたので、口の中は血の味で一杯になる。
キスで酸欠になりかけていたせいで、息も絶え絶えになる私をフェナーラは見下ろす。その瞳にはさっきまでとは比べ物にならないほどの怒りが浮かんでいた。それに萎縮しそうな自分を奮い立たせ声を発する。

「話は…まだ…終わってません」

「話?お前は俺のものじゃないんだろ?ならこれ以上話すことは何もない」

話すことは何もないだなんて。私の何があなたをそんなに怒らせたのか教えもしないで、体を開かせようとするなんて、あまりに理不尽すぎる。
フェナーラは私の顎に手をかけ、キスしよう顔を近づける。私はその顔の横っ面を思い切り引っ叩くと、パァンと乾いた音が部屋に響く。

「…お前の気持ちはよく分かった」

フェナーラはそう言うと、足で私の足を払う。バランスを崩した私は、そのまま勢いよく床に倒れた。









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

夫には好きな相手がいるようです。愛されない僕は針と糸で未来を縫い直します。

伊織
BL
裕福な呉服屋の三男・桐生千尋(きりゅう ちひろ)は、行商人の家の次男・相馬誠一(そうま せいいち)と結婚した。 子どもの頃に憧れていた相手との結婚だったけれど、誠一はほとんど笑わず、冷たい態度ばかり。 ある日、千尋は誠一宛てに届いた女性からの恋文を見つけてしまう。 ――自分はただ、家からの援助目当てで選ばれただけなのか? 失望と涙の中で、千尋は気づく。 「誠一に頼らず、自分の力で生きてみたい」 針と糸を手に、幼い頃から得意だった裁縫を活かして、少しずつ自分の居場所を築き始める。 やがて町の人々に必要とされ、笑顔を取り戻していく千尋。 そんな千尋を見て、誠一の心もまた揺れ始めて――。 涙から始まる、すれ違い夫婦の再生と恋の物語。 ※本作は明治時代初期~中期をイメージしていますが、BL作品としての物語性を重視し、史実とは異なる設定や表現があります。 ※誤字脱字などお気づきの点があるかもしれませんが、温かい目で読んでいただければ嬉しいです。

あなたは僕の運命なのだと、

BL
将来を誓いあっているアルファの煌とオメガの唯。仲睦まじく、二人の未来は強固で揺るぎないと思っていた。 ──あの時までは。 すれ違い(?)オメガバース話。

婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後

結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。 ※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。 全5話完結。予約更新します。

縁結びオメガと不遇のアルファ

くま
BL
お見合い相手に必ず運命の相手が現れ破談になる柊弥生、いつしか縁結びオメガと揶揄されるようになり、山のようなお見合いを押しつけられる弥生、そんな折、中学の同級生で今は有名会社のエリート、藤宮暁アルファが泣きついてきた。何でも、この度結婚することになったオメガ女性の元婚約者の女になって欲しいと。無神経な事を言ってきた暁を一昨日来やがれと追い返すも、なんと、次のお見合い相手はそのアルファ男性だった。

愛に変わるのに劇的なキッカケは必要ない

かんだ
BL
オメガバ/α×Ω/見知らぬαの勘違いにより、不安定だった性が完全なΩになってしまった受け。αの攻めから責任を取ると言われたので金銭や仕事、生活等、面倒を見てもらうことになるが、それでもΩになりたくなかった受けは絶望しかない。 攻めを恨むことしか出来ない受けと、段々と受けが気になってしまい振り回される攻めの話。 ハピエン。

運命の番は姉の婚約者

riiko
BL
オメガの爽はある日偶然、運命のアルファを見つけてしまった。 しかし彼は姉の婚約者だったことがわかり、運命に自分の存在を知られる前に、運命を諦める決意をする。 結婚式で彼と対面したら、大好きな姉を前にその場で「運命の男」に発情する未来しか見えない。婚約者に「運命の番」がいることを知らずに、ベータの姉にはただ幸せな花嫁になってもらいたい。 運命と出会っても発情しない方法を探る中、ある男に出会い、策略の中に翻弄されていく爽。最後にはいったい…どんな結末が。 姉の幸せを願うがために取る対処法は、様々な人を巻き込みながらも運命と対峙して、無事に幸せを掴むまでのそんなお話です。 性描写が入るシーンは ※マークをタイトルにつけますのでご注意くださいませ。 物語、お楽しみいただけたら幸いです。

【完結】たとえ彼の身代わりだとしても貴方が僕を見てくれるのならば… 〜初恋のαは双子の弟の婚約者でした〜

葉月
BL
《あらすじ》  カトラレル家の長男であるレオナルドは双子の弟のミカエルがいる。天真爛漫な弟のミカエルはレオナルドとは真逆の性格だ。  カトラレル家は懇意にしているオリバー家のサイモンとミカエルが結婚する予定だったが、ミカエルが流行病で亡くなってしまい、親の言いつけによりレオナルドはミカエルの身代わりとして、サイモンに嫁ぐ。  愛している人を騙し続ける罪悪感と、弟への想いを抱き続ける主人公が幸せを掴み取る、オメガバースストーリー。 《番外編 無垢な身体が貴方色に染まるとき 〜運命の番は濃厚な愛と蜜で僕の身体を溺れさせる〜》 番になったレオとサイモン。 エマの里帰り出産に合わせて、他の使用人達全員にまとまった休暇を与えた。 数日、邸宅にはレオとサイモンとの2人っきり。 ずっとくっついていたい2人は……。 エチで甘々な数日間。 ー登場人物紹介ー ーレオナルド・カトラレル(受け オメガ)18歳ー  長男で一卵性双生児の弟、ミカエルがいる。  カトラレル家の次期城主。  性格:内気で周りを気にしすぎるあまり、自分の気持ちを言えないないだが、頑張り屋で努力家。人の気持ちを考え行動できる。行動や言葉遣いは穏やか。ミカエルのことが好きだが、ミカエルがみんなに可愛がられていることが羨ましい。  外見:白肌に腰まである茶色の髪、エメラルドグリーンの瞳。中世的な外見に少し幼さを残しつつも。行為の時、幼さの中にも妖艶さがある。  体質:健康体   ーサイモン・オリバー(攻め アルファ)25歳ー  オリバー家の長男で次期城主。レオナルドとミカエルの7歳年上。  レオナルドとミカエルとサイモンの父親が仲がよく、レオナルドとミカエルが幼い頃からの付き合い。  性格:優しく穏やか。ほとんど怒らないが、怒ると怖い。好きな人には尽くし甘やかし甘える。時々不器用。  外見:黒髪に黒い瞳。健康的な肌に鍛えられた肉体。高身長。  乗馬、剣術が得意。貴族令嬢からの人気がすごい。 BL大賞参加作品です。

処理中です...