スパダリ様は、抱き潰されたい

きど

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はじまりは、あの日

31.衝撃

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「エイ、大きいね。」

「ほんとだ。デカいね。かわ…」

水族館ではしゃいぐ姿をみて一緒にこれて良かったと思った。流石人気スポットなだけあって、平日とはいえ疎に人がいるので、川奈さんの名前を呼ばない様に配慮は怠らない。

「田浦くん、そんなに気を遣ってもらわなくても大丈夫だよ。」

「うーん。なんていうか、バレたらデートどころじゃなくなりそうじゃん?それにお忍びデートみたいで、これはこれですごく楽しいよ。」

身バレしないために目深に帽子を被っている川奈さんにそう伝える。好きな人との時間は誰にも邪魔されたくないし、どんなシチュエーションでも二人でいて楽しくない筈がないのは本音だ。

「それならよかった。アマゾンの魚とかも展示されてるみたいだから、そっち見に行きたい。」

「いいね。行こう。」

返事をしてから、横に並ぶ川奈さんの手を握る。驚いた様に俺を見上げてきたので、恋人繋ぎに変えると、はにかんだ顔になる。それを見て抱きしめたくなる衝動にかられるが必死に抑える。いま、外にいる事を少し悔やんだ。

「お昼、何か食べたいものある?」

「そうだな…あっ電話。ごめん。仕事の電話だと思うから出ても大丈夫?」

展示を一通り周り終え、次の場所を考えていると川奈さんの携帯が鳴った。川奈さんがばつが悪そうに俺に伺う。

「大丈夫だよ。」

「ありがと。…もしもし。うん…。うん。…えっ?…分かった。すぐ行く。」

俺の返事を聞いて安堵した表示を浮かべ電話に出るも、どんどんその表情が険しくなっていく。

「ごめん。職場に行かなきゃいけなくなった。」

「緊急事態?」

「うん。詳しくはいえないけど、トラブルがあったみたいで。」 

川奈さんが申し訳なさそうに言う。川奈さんの表情と休暇中に呼び出されるなんて相当まずいことが起きたに違いないと察する。

「それなら仕方ないよ。早く行ってあげた方がいいから、帰ろうか。」

「ありがとう。この埋め合わせは必ずするから!」

俺たちは帰路に着くため急いで駐車場に向かった。

* * *

川奈さんを自宅まで送り届けてから、自分の自宅に戻る。川奈さんとの帰りの道中は、起こったトラブルへの対応を考えていたみたいで、いつもよりも口数が少なかった。

川奈さん、大丈夫かな?と一抹の不安を覚えたが、それが最悪な形になったのだと夕方の報道で知る羽目になる。

流し見でつけているテレビには、夕方の報道番組が入っている。和気藹々と番組が進む中、速報が入りテレビの向こう側がバタバタとする様子が写る。アナウンサーが速報原稿に目を通してから、その内容を伝えるためテレビカメラに視線を真っ直ぐむける。

『えー。ただいま入ってきた速報です。
T市で不正会計が行われていた。と速報が入りました。』

『T市といえば、川奈市長は積極的にメディアにでてますよね』

アナウンサーが速報内容を伝えた後、コメンテーターが補足する様に川奈さんを話題に出す。衝撃の内容に思わずテレビを掴んでしまったのだった。

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