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はじまりは、あの日
39.あなただけ
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「川奈さん、もう一回言って」
見慣れた部屋で、いつもと変わらない様子なんだから、きっと聞き間違いに違いない。苦し紛れに自分に言い聞かせる。
「もうこの関係を終わらせたいんだよね」
あぁ、聞き間違いじゃなかった。川奈さんの表情は真面目で揶揄っている訳ではないと分かった。でもそれを素直に受け入れられなくて、川奈さんの真意を知りたくて言葉を重ねる。
「どうして?川奈さんも気持ちを向けてくれていると感じていたのは俺の自惚れ?この間、良平さんが来た時だって俺と親しい関係って言ってくれたじゃん」
「良平とヨリを戻すことにしたんだ」
俺の質問には答えずに川奈さんが残酷な言葉を吐く。
「なんで…」
「俺が良平の事を引きずっていること、田浦くんも気づいてたでしょ?忘れられなかった相手が自分の元に戻ってきたら元鞘に納まるのは自然の流れでしょ。俺からはこれ以上言う事は何も無いよ」
「そんな理由じゃ納得出来ない。関係を精算したいなら俺の事はもう嫌い、顔も見たくないって言って」
良平さんの名前を聞いたときからずっと危惧していた。いつか再開してしまったら、その時、川奈さんはどうするのかと不安だった。
でも、川奈さんが俺に気持ちを傾けてくれていると思えたから、今まで核心に触れずに誤魔化して関係を続けていた。そのツケが回ってきたのかもしれない。だけど関係に終止符を打つ理由は良平さんという第三者の存在ではなく、気持ちが俺に向いてないからだと思い知らせて欲しい。
「はぁ。もう終わらせるって決めたのに、今更それを言う事に意味があるの?」
「川奈さんが俺を好きになることはないって言うなら諦めて身を引くよ。でも、まだ少しでも可能性があるなら、川奈さんを手放したくない」
「田浦くんの本来の恋愛対象は女性だよね?」
「そうだけど、川奈さん話を逸らさないで」
「前にも言ったけど、俺は一時の恋愛感情なんて信じない。君だって男の俺とは一時の火遊びだったって思う日が必ずくるよ。どんなに強く思っていたって、時間が経てば気持ちなんて変わっていくんだから」
「そんなこと」
「ないって言い切れる?ないなら、ほとんどの人が初めての恋人と添い遂げるんじゃないかな。でも違うよね?」
川奈さんが良平さんに振られた事がトラウマになって恋愛に一歩踏み出せないことは分かっていたけど、本当に欲しかったのは気持が変わらないという約束だったのかもしれない。
"川奈さんとずっと一緒にいたい"と言葉を紡ぎ出す前に俺の唇を川奈さんの唇が塞ぐ。
「ねぇ、最後に抱いて。体から始まった俺達らしい終わり方でさよならしよう」
振られたのは俺のはずなのに、何故か川奈さんの方が今にも泣き出しそうな顔をしていた。
* * *
「あっ…んっ、まだ?」
「まだ解れてないでしょ?痛い思いをするのは川奈さんだよ」
一糸纏わぬ姿でベッドのサイドボードに上半身を預け、俺に見える様に脚を開いて自分で後孔を解す様は扇情的で、こんな状況でなければ興奮して我を忘れたに違いない。
「でも田浦くんも…ふあっ」
「俺のことはいいから、きちんと解して。じゃないと挿れられないよ」
心とは裏腹に淫靡な光景に体は熱を持ち下半身は反応を示す。俺のそこに触れようとする川奈さんの手をやんわり拒絶し、もう片方の手の指が後孔に深く入る様に手の甲を押す。
「んっ…ふっ…ねぇもう…お願い」
「誘うのは相変わらず上手いよね」
川奈さんが指を動かすたびにグチュッと卑猥な音が鳴る。そんな中、快感で頬を赤く染め上目遣いで俺を求める。それに応える様に川奈さんの腰を引き寄せて体の一番奥まで無遠慮に貫く。
「ひあっ…いいっ…あっ」
「くっ」
川奈さんの体が絞り取る様に締め付ければ、俺の屹立は刺激に従順に反応し質量を増す。体が熱くなればなるほど心の痛みは強くなる。抱き合っているはずなのに、求められているのは体だけ。どんなに望んでも心は手に入らなかった。互いに達してこの時間が終われば、もう二度と触れる事はできない。
そう思い川奈さんの体を抱き起こすと、奥深くまで穿つ。
「あ"っ…いたっ…だめっ」
これから先誰に抱かれても俺を思い出す様に川奈さんの体に俺を刻みつけて、抱き潰してしまいたい。
「あ"…やぁっ…あ"」
奥まで入り込んだ圧迫感で苦しそうに喘ぐ川奈さんに何度も何度も腰を打ち付け、俺の形を忘れない様に執拗に中を擦る。
本当はこんな一方的な抱き方なんてしたくない。最後ならグズグズに甘やかして、川奈さんを目一杯可愛いがりたかった。
ねぇ川奈さん。誰よりも愛してる。
あなたが俺じゃない男を選んでも、俺はあなたを忘れることなんてできずに、あなただけを想い続けるよ。
見慣れた部屋で、いつもと変わらない様子なんだから、きっと聞き間違いに違いない。苦し紛れに自分に言い聞かせる。
「もうこの関係を終わらせたいんだよね」
あぁ、聞き間違いじゃなかった。川奈さんの表情は真面目で揶揄っている訳ではないと分かった。でもそれを素直に受け入れられなくて、川奈さんの真意を知りたくて言葉を重ねる。
「どうして?川奈さんも気持ちを向けてくれていると感じていたのは俺の自惚れ?この間、良平さんが来た時だって俺と親しい関係って言ってくれたじゃん」
「良平とヨリを戻すことにしたんだ」
俺の質問には答えずに川奈さんが残酷な言葉を吐く。
「なんで…」
「俺が良平の事を引きずっていること、田浦くんも気づいてたでしょ?忘れられなかった相手が自分の元に戻ってきたら元鞘に納まるのは自然の流れでしょ。俺からはこれ以上言う事は何も無いよ」
「そんな理由じゃ納得出来ない。関係を精算したいなら俺の事はもう嫌い、顔も見たくないって言って」
良平さんの名前を聞いたときからずっと危惧していた。いつか再開してしまったら、その時、川奈さんはどうするのかと不安だった。
でも、川奈さんが俺に気持ちを傾けてくれていると思えたから、今まで核心に触れずに誤魔化して関係を続けていた。そのツケが回ってきたのかもしれない。だけど関係に終止符を打つ理由は良平さんという第三者の存在ではなく、気持ちが俺に向いてないからだと思い知らせて欲しい。
「はぁ。もう終わらせるって決めたのに、今更それを言う事に意味があるの?」
「川奈さんが俺を好きになることはないって言うなら諦めて身を引くよ。でも、まだ少しでも可能性があるなら、川奈さんを手放したくない」
「田浦くんの本来の恋愛対象は女性だよね?」
「そうだけど、川奈さん話を逸らさないで」
「前にも言ったけど、俺は一時の恋愛感情なんて信じない。君だって男の俺とは一時の火遊びだったって思う日が必ずくるよ。どんなに強く思っていたって、時間が経てば気持ちなんて変わっていくんだから」
「そんなこと」
「ないって言い切れる?ないなら、ほとんどの人が初めての恋人と添い遂げるんじゃないかな。でも違うよね?」
川奈さんが良平さんに振られた事がトラウマになって恋愛に一歩踏み出せないことは分かっていたけど、本当に欲しかったのは気持が変わらないという約束だったのかもしれない。
"川奈さんとずっと一緒にいたい"と言葉を紡ぎ出す前に俺の唇を川奈さんの唇が塞ぐ。
「ねぇ、最後に抱いて。体から始まった俺達らしい終わり方でさよならしよう」
振られたのは俺のはずなのに、何故か川奈さんの方が今にも泣き出しそうな顔をしていた。
* * *
「あっ…んっ、まだ?」
「まだ解れてないでしょ?痛い思いをするのは川奈さんだよ」
一糸纏わぬ姿でベッドのサイドボードに上半身を預け、俺に見える様に脚を開いて自分で後孔を解す様は扇情的で、こんな状況でなければ興奮して我を忘れたに違いない。
「でも田浦くんも…ふあっ」
「俺のことはいいから、きちんと解して。じゃないと挿れられないよ」
心とは裏腹に淫靡な光景に体は熱を持ち下半身は反応を示す。俺のそこに触れようとする川奈さんの手をやんわり拒絶し、もう片方の手の指が後孔に深く入る様に手の甲を押す。
「んっ…ふっ…ねぇもう…お願い」
「誘うのは相変わらず上手いよね」
川奈さんが指を動かすたびにグチュッと卑猥な音が鳴る。そんな中、快感で頬を赤く染め上目遣いで俺を求める。それに応える様に川奈さんの腰を引き寄せて体の一番奥まで無遠慮に貫く。
「ひあっ…いいっ…あっ」
「くっ」
川奈さんの体が絞り取る様に締め付ければ、俺の屹立は刺激に従順に反応し質量を増す。体が熱くなればなるほど心の痛みは強くなる。抱き合っているはずなのに、求められているのは体だけ。どんなに望んでも心は手に入らなかった。互いに達してこの時間が終われば、もう二度と触れる事はできない。
そう思い川奈さんの体を抱き起こすと、奥深くまで穿つ。
「あ"っ…いたっ…だめっ」
これから先誰に抱かれても俺を思い出す様に川奈さんの体に俺を刻みつけて、抱き潰してしまいたい。
「あ"…やぁっ…あ"」
奥まで入り込んだ圧迫感で苦しそうに喘ぐ川奈さんに何度も何度も腰を打ち付け、俺の形を忘れない様に執拗に中を擦る。
本当はこんな一方的な抱き方なんてしたくない。最後ならグズグズに甘やかして、川奈さんを目一杯可愛いがりたかった。
ねぇ川奈さん。誰よりも愛してる。
あなたが俺じゃない男を選んでも、俺はあなたを忘れることなんてできずに、あなただけを想い続けるよ。
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