Doll Master

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【忍び寄る魔の手】⑨

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事が動いたのは、快斗と新一が一緒に暮らし始めて5日が経った朝だった。何時ものようにコーヒーを淹れてリビングへ行くと、快斗が険しい顔で新聞と睨めっこしていた。

「快斗。どうしたんだ?怖い顔なんかして…」

「ん?ああ、ちょっとな。まぁ、先ずはこれ見ろよ」

新一の問いかけに、快斗は険しい顔のまま新聞のある場所を指差した。

「遂に動いたぜ。ご丁寧に案内状まで付けてさ」

「…何?」

その言葉に、新一は持っていたコーヒーをテーブルに置いて向かい側のソファーに座り、快斗から新聞を貰って指差された所を読む。

そこには、『Doll Masterからの挑戦状!!』と大々的な見出しでこう書かれていた。

【親愛なる警察諸君へ。前回は楽しいshowをありがとう。これは私から君達へ楽しませてくれた礼だ。月の加護が満ちる夜、対極に別れし彼の者達を我許へ誘おう。私は静かに星達が良く見える場所で、君達が別れを告げる時を待っているよ。タイムリミットは日が変わるまで。私が待つ場所が分かれば、それ相応のご褒美をあげようじゃないか。さぁ、女神はどちらに微笑むか。私を見つけられるかな?】

新聞には他に、警察はどう動くのかやら、次のターゲットは誰か等面白おかしく書かれていた。だがそれ以上、目ぼしい情報もなかった為、新一は新聞をテーブルに置いて何時ものように顎に手を当てた。

「確かに案内状だな。…【月の加護が満ちる夜】って事は、おそらく次の満月が犯行日か」

「ああ。それと、新聞と一緒にポストにこれが入ってた」

「それ…っ!!」

快斗が取り出してきたそれは、以前快斗がDollMasterから送られてきた物と全く同じーー真っ黒な封筒だった。

ご丁寧に、宛名は『九條新一様、久神快斗様』と連名になっている 。

「DollMaster からの挑戦状、か。お前はもう読んだのか?」

「いや、新一が来てからと思ってまだ読んでない。まぁ、あんまり良いことは書いてなさそうだけどね」

手紙をヒラヒラと振りながら、実に嫌そうに言う快斗。その気持ちが痛いほどわかる新一は、苦笑いで返した。

……確かに。

外には警官がいるはずなのに、これをポストに投函できるDollMasterは流石と言えるだろう。

その技術を違う方向に使えば良いものを…と思いつつ快斗が持つ手紙を睨み付けるのだった。

「………まるで不幸の手紙みたいだよなぁ」

「実際、不幸の手紙だと思うけど?狙われてる立場としてはさ」

「…だよなぁ」

あー、開けたくねぇなぁ。
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