Doll Master

亜黒

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【忍び寄る魔の手】⑪

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核心の部分を読む前に、精神安定のために淹れていたコーヒーをそれぞれ一口飲み、手紙の続きを再び読み始める。

「じゃ、読むぞ。【ああ、遊びと言っても簡単なゲームさ。詳細は、同封したSDカードに容れてあるよ。勿論、君達が勝てば報酬を約束する。そうだね…報酬は、私の自慢のDollの居場所について教えてあげよう。だが、負ければ、あの子達の事は何も教えてやらない。一生、私の、物だ。どうだい?やる気になってくれたかな。君達が私の元へ来るまでのお遊び、気に入ってくれると嬉しいね。では、検討を祈るよ。】………だってさ」

「くそっ…どうしても俺達と遊びたいらしいな。被害者の居場所が解るなんて書かれたら、その挑戦受けるしか無いじゃねぇか」

奴に拐われた数十人の被害者については、今現在捜索しているが健闘空しくその生死も含め全く不明なのだ。その為、今回の挑戦状が唯一の手掛かりと言っても良い。

だが、あの執着心の強いDollMasterが、そう簡単に手に入れた『Doll』を手放す訳がない。絶対に無理難題を吹っ掛けられるだろう。

しかし、それが解っていても、それでもそれらをクリアし、何としてでも情報を手に入れなければならないわけだ。………きついなぁ。

まだSDカードの中身は見ていないが、手紙同様、開けたくない気持ちになってくる。

それは快斗も同じようで、手紙を机の上にぞんざいに放り投げて親の仇でも見るかのような顔で、SDカードを睨み付けていた。

だが、結局のところ中身を見ないことには何も始まらないというのは変わらず。

快斗は深い溜め息を付いた。そして立ち上がり、重い足取りでリビングを出ていく。

「………快斗?」

「はぁ。………俺、部屋からパソコン取ってくるわ。結局見なきゃ始まんねぇし。色々対策してから中身開くから、ちょっと準備してくる。新一は、警部さんにでもこの事連絡しといて」

「そうか。解った。一応、志乃にも連絡しとくか。機械関係ならあいつかなり詳しいし、もしかしたら早く解決出来るかもしれない」

「おう、よろしくー」

部屋を出ていった快斗を見送り、新一も各所にそれぞれ連絡していく。

連絡を受けた面々は、それぞれの場所から急いで来てくれるらしい。

志乃に至っては、本気も本気で解析用の自作パソコン込みで色々持ってくると言っていたが、後で現物をこちらから持っていくから止めてという話でどうにか落ち着かせることが出来た。

あれ、かなりの重量になるからなぁ。それにスペックが高すぎて、簡単に電化製品等がショートするので基本家では使えない代物なのだ。

実際、一度こっちに持ってきた時にやらかしてからは、志乃も自重していたのに、そんなことも忘れるくらい動揺しているみたいだ。
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