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102話

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トウヤside

アナの病院の帰りに気を紛らわせようとカフェに行ったけど、頭に浮かぶのはアナのことばかりでもうちょっとだけアナに会いたくなった。

今日を逃せば退院するまで会えそうにない。

俺はそう思うと居ても立ってもいられず小走りでアナの病院へと戻った。

アナの病室が近づくと部屋の前で誰かが立っているのが分かった。

ジョウキ?なんで病室の中にはいらないあんなとこで立ってんだ?

不思議に思った俺が早足で近づくとジョウキは大きな体を小刻みに震わせていた。

ジョウキがゆっくりと俺を見るが、その顔には顔色はなく、いつも強気なジョウキの目に涙がたまっていた。

T「ジョウキ!しっかりしろよ!何があった!?」

俺は力加減を忘れてジョウキの腕を力任せに動かす。

J「わかんねぇ…病室きたら…アナが…アナが…」

こんな取り乱したジョウキなんて俺は今まで一度も見たことなんてない。

俺は驚きを隠せずにいるとアナの病室からお医者さんが出てきた。

お医者様の話によってアナが錯乱状態になっていたことを知り、俺はお医者様に軽く頭を下げアナの元へ行く。

アナはぼんやりと虚な目で俺をみつめて愛しい笑顔でこう言った。

A「トウヤだったんだね…ずっと会いたかったよ…ずっと探してんだから…」

俺はアナの言葉に違和感を感じながらも心臓は驚くほどに早く動きはじめ、今すぐアナを抱きしめたい衝動に駆られる。

ジョウキにもアナの言葉が耳に届いていて、ジョウキは眉間に深いシワをよせて何も言わずに部屋を出ようとした。

すると、その様子に気づいたアナの目はあきらかに焦っていた。

A「ジョウキ…待って…行かないで…」

アナの必死な声にジョウキは足をとめ、ジョウキはゆっくりとアナの元へと戻った。

俺だってそんなバカじゃない。

あんなに愛おしそうにジョウキを見つめるアナの目を見てしまったら、何が本音なのかぐらい俺でも分かる。

ジョウキは優しく微笑みながらアナの手を握って言った。

J「アナ…大丈夫?」

A「ごめんね心配かけて…泣いてたの?」

そう言ったアナの細い指がジョウキの頬をなで涙を拭う。

J「泣いた…泣いたよ。アナがいなくなるかもって思ったら怖くてめっちゃ泣いた…」

A「ごめんね…」

やっぱり邪魔者は俺だな。

2人の空気感に取り残された俺は改めて、現実を思い知らされたような気がした。

つづく
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