拾ったハンカチが推しのものだとは知らずに〜ハンカチを拾ったことで仲良くなった美少女は、俺が憧れの人の話をするとなぜか動揺する

「あの……ハンカチ落としましたよ」

「そこの君! なんでそれがハンカチだって分かったのですか? パンツだったらどうするんですか?」

 偶然、ハンカチを拾ったことをきっかけに、俺は彼女―渚花恋と出会った。俺の憧れているアイドル―えりこにそっくりな女の子。

 彼女の爆弾発言によって、俺は大慌てで自分が持っているものはなんなのかを確認していた。そんな彼女は近寄ってきてRINEのQRコードを俺に見せた。

「ハンカチ返すのは今度でいいよ」

 そう言って彼女は微笑んだ。


「聞いたぞ! 雅」

「お前ってえりこを追いかけてるのってホント!?」

「誰に聞いたの?」

「琴葉ちゃんよ」

 そう問い詰めてきたのは俺と同じ文芸部の桜木湊と神代瑞希、そして、彼らに俺がえりこを好きだってチクったのは俺の幼馴染の七海琴葉……

 えりこは今や人気急上昇のアイドルだけど、実はその前から俺は密かに彼女に憧れていた。


 ハンカチを返すために、俺は渚さんと花見の約束をした。

 それから、一歩、一歩と俺と渚さんの距離が縮まっていく。

 ただ、彼女はいつも忙しいって言ってるし、出会った時以外はいつもマスクを付けている。

 そんな彼女に俺は問いかける。

「なんでいつもマスク付けてるの?」

「重度な花粉症だから!」

 渚さんは慌ててそう答えた。


 奇しくも、その後、俺の作品の書籍化が決まり、その宣伝を務めるのがえりこだった。

「えりこです。よろしくね、雅先生〜」

「よ、よ、よろしく……」

 ずっと憧れているえりこを目の前にして、胸が熱くなって上手く喋れなかった。

 えりこと出会い、俺は彼女への恋心を認識させられた。


 渚さんが実はえりこであることを、俺は未だに知らない。

 運命の赤い糸、あなたは信じますか?

※「ページ1 出会い」の素敵な挿絵はのの様(@07nono06)の作品です。
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