おまけの神子は帰ることができない~平凡な筈の俺が美形たちに囲い込まれる話〜

宮沢ましゅまろ

文字の大きさ
39 / 52
◆第2章 おまけの神子とにゃんこ(?)とワイルドエロ傭兵

苦手な男②-2

しおりを挟む
 けれど、ジークのおかしな言動はその一回だけじゃなかった。

 俺が何かミスする度、ジークは俺に対して嫌な指摘をしてくるのだ。

「何故、そんなことが出来ないんだ?」

「常識じゃないか?」

 ジークの口調にも表情にも険はないし、さらっというだけで、こちらがどんな反応を返しても「そうか」と納得してそこで延々文句を言ってくる訳じゃないんだけど、結構引っかかる物言いが多くて、さすがの俺も何かモヤモヤしてきてしまい、ジークと居合わせると嫌な感じで緊張してしまうようになっていた。

 シュナが顔を見せてくれるのに合わせて、ジークもついてくるんだけど、このやり取りがが十日も続くと正直げんなりしてしまう。

 せめて、これが演技で本当は俺のことが嫌いだから嫌味を言ってきているみたいな感じなら、まだ俺としても対応の仕方はあるんだけど……。

 嫌味で言っているわけではなく、おそらくポロリと口から出てしまったのだろうなというのが、ジークのその時の表情から毎回窺えて、俺は思わず言葉に詰まってしまい、今の所自身のモヤモヤを解消できていない。

 仕事の取引先に居た嫌な人や、ネチネチ言ってくる人を対応する時のことを思い出しながら何とか耐えているが、出来たらジークにはお引き取り願って、シュナだけと話したいのが本音だ。

 しかも、ジークのこのストレートに失礼な言い方は、俺だけではなく他のヒトにも容赦なく発揮されていて、ラインハルトもちょっと……いや、かなり怒っていた。

 ラインハルトに、俺みたいな平凡でチビのどこが良いのかみたいなことを言ってしまったんだよね。

 俺が平凡顔なのは間違いないし、この世界では俺も小柄なのでチビなのも本当なんだけど、ラインハルトはガチ切れしていた。ちなみに、たまたま居合わせたリチェルさんも無茶苦茶怒っていた。

 すんなりジークが謝ったので、一応は怒りは治まったんだけどね。

 シュナは「トオルは癒し系で可愛いよ」って慰めて来たけど、そっちはそっちで多分感覚がおかしいとは思う。





「……何なんだ、あいつは」

 何度か続くジークの失言(?)に対して、最初は純粋に怒っていただけのラインハルトも、怒ると謝るのに、時間が経過するとまた似たようなことを繰り返すジークの様子に、さすがに何かおかしいと思い始めたんだろう。
 うんざりとした様子でそう言ってきた。

 まだ、夜会の男共の嫌味や何の利益にもならない自慢話のほうが耐えられる。

 眉間に深い皺を寄せたラインハルトの言葉に、俺は乾いた笑みを浮かべるしかなかった。

 ラインハルトは俺様だし、まぁまぁ高圧的なことは平気で言うけど、やっぱり生粋の貴族だからかさすがにやっちゃいけない境界線は分かっている。何か含むことがあってたとしても、時と場合によっては口には出さない。

 俺も多分同じようなタイプだと思う。

 まぁ、駆け引きで口に出さないラインハルトと違い、俺の場合は小心者だから口に出せないんだけどね。

 ただ、ジークはそうじゃない。俺やラインハルトがよっぽど腹に据えかねないと多分言わないような言葉を、彼の場合は相手にそのまま平気で言ってしまうのだ。

(しかも、ジークに関しては一切悪気がないんだよね……)

 最初は隠しているだけで物凄く嫌な奴なのか? と思ったんだけど、ジークは嫌味とかではなく、純粋に疑問だったり思っている事をぽろりと言ってしまっているので、ある意味では最強にヤバイ男だった。

 多分、俺たちでいう人間関係における暗黙の了解みたいなのが通じないんだろうなと思う。

 一応、こそっとシュナだけを呼び寄せた時に聞いてみたんだよ。シュナが最初に言っていた、俺がジークのことを苦手だって思うかもって件について。

 変に取り繕っても話が通じないだろうと思ってストレートに。

 そしたら――。

「ごめんね、トオル。あと、ラインハルトも……」

 シュナは何と、俺と更に一緒に居合わせたラインハルトにも謝って来た。

 大分、普通に話すようになっていたシュナとラインハルトだけど、やっぱりずっと張り合っていて子供みたいな応酬は続いていたので、俺もラインハルトもまさかシュナが素直に謝るとは思ってなくて驚いた。

 しおっとなった艶々の耳と尻尾を見れば、シュナが本心から申し訳ないと思っているのが伝わってきて、俺とラインハルトは思わず互いに顔を見合わせる。

「ジークはちょっと人の常識が特に通じないって言うか、分からないって言うか……」

 言葉を濁しながら、シュナはジークについて俺に色々と教えてくれた。

「ジークは竜人って種族なんだけど、竜人と人って近いようで一番遠い存在なんだよね」

「ああ、やっぱり人間じゃなかったんだ」

 俺は、その言葉に正直ほっとした。人外だと思うと、奇怪な言動も納得できる。

 竜人は、竜の血を引く種族で、全体的な割合で言えばかなりの少数派だと言われている部類に入る彼らは、竜の本能を色濃く残していると言われているそうだ。

 獣人やエルフも人とは違う価値観を持っているし、人側から見れば思わず眉を顰めるような価値観も残っているので、結構人と衝突することは多いそうだ。獣人やエルフたちが、人の価値観を受け入れ難いなと思うことも割とあるし、そこは互いに種族や文化が違う以上は仕方ないものだとも言われてはいるが、そうは言っても仕方ないと納得できないこともどうしても出てくる。

「頭ではわかってても、感性や本能みたいなので無理だなって思うとやっぱり難しいじゃん? エルフとかドワーフは一部の習慣や思想を除けば人にかなり近いし、獣人もそんなにいつだつルビ逸脱はしないから殆ど問題にはならないんだけど……竜人は価値観が根底から違うって言うか」

 すべてにおいて竜人は強烈なんだよねと、シュナは続ける。

「獣人の場合は一部凶暴な奴もいるけど、上位種がしっかりしてれば問題を起こすことも最近は殆ど無いし、博識な獣人がいれば、とりあえずは問題を起こさないくらいの言動は取れるようになる……というか、とるんだよねぇ。生存本能的で自己防衛をするためにって感じで。割と自由な僕たちでさえ、自分たちを守る為にではあるけど最低限の暗黙の了解は守るし、気を使う。でもさ、竜人ってそういう話の常識を超えて、本当自由なんだよねー」

 獣人は肉体的な強さでは殆ど伝説みたいな存在である竜族と竜人に次いで頑丈で力がある種族だが、その反面魔法に関してはシュナみたいな特別な存在を除外すれば少し頼りない。

 人と比べれば絶対数も少ないし、案外弱点も多く、匂いとか音とかの敏感な部分は利点でもあるけど欠点にもなりえるものだ。

 だから、そういう弱点があるからこそ、獣人は他の種族に配慮したりする。そうしないと、無用な争いを生んで不利な立場に置かれてしまうのを避ける為に、獣人も腹芸を覚えたのだと軽快に言うシュナに、ちょっとだけ驚いたけれど、でもそれが対人関係を上手くやるコツだよなと俺は納得した。

 勿論、優しい獣人も居るとは思うけどね。

「獣人と違って竜人は絶対的な強者だから、そういう感覚が理解できないんだよね~」

 どうやら、シュナは竜人であるジークが強者であるがゆえ、ああいう言い方になるのだと言いたいようだ。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

帝に囲われていることなど知らない俺は今日も一人草を刈る。

志子
BL
ノリと勢いで書いたBL転生中華ファンタジー。 美形×平凡。 乱文失礼します。誤字脱字あったらすみません。 崖から落ちて顔に大傷を負い高熱で三日三晩魘された俺は前世を思い出した。どうやら農村の子どもに転生したようだ。 転生小説のようにチート能力で無双したり、前世の知識を使ってバンバン改革を起こしたり……なんてことはない。 そんな平々凡々の俺は今、帝の花園と呼ばれる後宮で下っ端として働いてる。 え? 男の俺が後宮に? って思ったろ? 実はこの後宮、ちょーーと変わっていて…‥。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

処理中です...