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第一章 こうして俺は王都に行くことになった!
王都への出発①
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母さんの言葉で、俺は心機一転して己を磨くことに時間をかけるようになった。
今までも、決して不真面目だったり手を抜いていた訳でなかったけど、良い男を捕まえる為だと考えると、憂鬱な気分になってしまっていたのだ。
しかし、今は違う。
「ね、どう? 父さん、母さん」
この辺りで一番人気の仕立て屋さんに作って貰った高価な衣装を、両親の前で着てくるりとその場で回って見せると、二人は満面の笑みで俺の事を褒めだした。
「可愛いわ! ジーニアス!」
「さすがは私たちの子だ!」
親ばかってこういうのを言うんだろうな~。
まぁ、俺の場合は可愛いというのは決して過言ではないけどね。
(でも、さすがだよなぁ、この服)
店に服を受け取りに行った時に、店主から「最高の服が出来ました!」と熱く語られたのだけど、その時の俺はたいして興味はなかった。
そもそも、じいちゃんが紹介してくれる店はすべて一流の仕事人ばかりなのだ。だから、良質なものがそこにあるというわけでは、贅沢な事にあまり心が動かなくなっていた。
それに、貴族御用達の服は、確かに派手だし一流の素材を使用しているんだろうけど、言い方はあれだけど正直ちょっとダサイのも、俺があまり服に興味が持てなかった理由だ。
この世界、女性のドレスもちょっと派手で、正直かなりケバイんだよね。この世界の女性は身長も高くて豊満だから、正直たまに怖い時があるくらい。
しかし、この服は全然違った。
素材が一級品であるのは同じだし、貴族らしく派手ではあるのだが、派手さの中にも上品さがあるのだ。特に、俺の黒髪に合わせて縫われている厚手のリボンと、ボタン部分に使われているガラスのような透明な青色の石がとても洗練されていて、この世界で初めて、俺は服を良いなと思った。
「変わったデザインだけど、可愛いな。こういうのを私が着るとちょっとゴテゴテしてしまうだろうがが、ジーニアスみたいな細身な体型だと、とても綺麗だ」
「リボンも可愛いわ!」
どうやら両親も同じような感想を抱いたらしく、俺の服をまじまじと見つめながらはしゃいでいる。
俺の長身は二人とも美形で、かなり濃い顔立ちをしている。俺は、どちらかと言えば隔世遺伝で、両親の特徴を受け継いではいるが、顔立ちはこう薄めという感じなのだ。
ちなみに、母さんから受け継いだのは薄い綺麗な青色の目と白い肌で、父さんから受け継いだのは黒髪の綺麗な髪なんだけど、俺はとても気に入っている。
長身の家系で背丈が伸びないのはちょっと悲しいけど、可愛い系男子というのものに需要があると聞いた今では、むしろ魅力的な面だとさえ思っていた。
「あはは、父さんと母さんは、確かに外見が派手だもんね」
俺がそう言うと、母さんがそうなのよ!と熱く語る。
「今じゃすっかりなれたけど、この派手な金色の巻き毛に、濃い顔、大きな身体ってどうしても目立つのよね。褒められることは多かったけど、流行りの派手なドレスを着ると、こう周りから浮いちゃって……。はぁ、せめて髪の色がもう少し大人しい色なら、私もそういう服が着れたのかしら」
その言葉を聞いて、俺は少しだけ意外に思った。
母さんの服はどちらかと言えば地味な方で、貴族の前に出るような場でもあまり華美なドレスを着ているのは見たことが無かったからだ。てっきり、俺は母さんの趣味じゃないんだなとばかり思っていた。
「母さんもこういう可愛い感じがひょっとして好きなの?」
俺がそう言うと、母さんは頷いた。
「正直ちょっと憧れね。まぁ、魔物と戦うのにあまり装飾のある服は着れないでしょうけど」
「そっか……」
少し落ち込んだ母さんを父さんが抱き寄せるのを見て、やっぱり母さんも女の人なんだなぁと気づく。普段は勇ましい人なんだけどね。
でも、この仕立てやさんなら、母さんが似合う可愛い服を作れるような気もする。
「あのさ、この仕立て屋なら、母さんに似合うのを作ってくれるんじゃないかな?」
かなり忙しい店らしいけど、じいちゃんの紹介があれば、優先的に作ってくれるのではないかと言うと、母さんは嬉しそうに微笑んだ。けれど、少しだけ戸惑った様子なのは、じいちゃんに頼むのに抵抗があるのかもしれない。
仲は悪くないんだけど、母さんはじいちゃんにちょっと遠慮しているところがあるから。
もっと知性的な人が父さんと結婚していたらってそう思ってる節があるのだ。
「そ、うかしら……。でも、お義父様に悪いのでは……」
「いや、父に頼んでみよう」
父さんは、母さんの遠慮を吹き飛ばすようにそうはっきりと言った。
「あなた、でも……」
「父さんは喜ぶと思うぞ? 君はあまり父さんに我儘を言わないからね」
ウインクする父さんは、本当に様になっている。外見だけ見れば、脳筋には見えないくらいの色男っぷりである。まぁ、母さん限定で妙に聡い所があるけど。
けど、実際、じいちゃんは母さんが我儘を言ってくれたら喜ぶと俺も考えていた。じいちゃんは厳格そうに見えてるけど、俺に魅力値を上げて男をたぶらかせっていう人なので……。
それに、母さんは気にしてるけど、父さんと結婚できる人って母さんくらいしかいないと思うんだよね。父さん、今でこそ大分雰囲気は柔らかいけど、以前は結構怖がられていた戦闘狂だったらしいいし。
じいちゃんが母さんを悪く言う事なんて、殆ど無いしね。唯一あるのは脳筋ってことくらい?
まぁ、あれは夫婦そろってって感じの時くらいだから、悪意がある訳じゃないと思うけど。
「うん、俺もそう思うよ。じいちゃんなら喜んでくれるって」
俺はもうすぐこの地を離れてしまうけど、これを機会に母さんとじいちゃんがもっと仲良くなってくれると良いなって心から思った
じいちゃんが父さんたちに知恵を、父さんたちが力をじいちゃんに貸してくれたら、何でも上手く行くと俺は思うから。
今までも、決して不真面目だったり手を抜いていた訳でなかったけど、良い男を捕まえる為だと考えると、憂鬱な気分になってしまっていたのだ。
しかし、今は違う。
「ね、どう? 父さん、母さん」
この辺りで一番人気の仕立て屋さんに作って貰った高価な衣装を、両親の前で着てくるりとその場で回って見せると、二人は満面の笑みで俺の事を褒めだした。
「可愛いわ! ジーニアス!」
「さすがは私たちの子だ!」
親ばかってこういうのを言うんだろうな~。
まぁ、俺の場合は可愛いというのは決して過言ではないけどね。
(でも、さすがだよなぁ、この服)
店に服を受け取りに行った時に、店主から「最高の服が出来ました!」と熱く語られたのだけど、その時の俺はたいして興味はなかった。
そもそも、じいちゃんが紹介してくれる店はすべて一流の仕事人ばかりなのだ。だから、良質なものがそこにあるというわけでは、贅沢な事にあまり心が動かなくなっていた。
それに、貴族御用達の服は、確かに派手だし一流の素材を使用しているんだろうけど、言い方はあれだけど正直ちょっとダサイのも、俺があまり服に興味が持てなかった理由だ。
この世界、女性のドレスもちょっと派手で、正直かなりケバイんだよね。この世界の女性は身長も高くて豊満だから、正直たまに怖い時があるくらい。
しかし、この服は全然違った。
素材が一級品であるのは同じだし、貴族らしく派手ではあるのだが、派手さの中にも上品さがあるのだ。特に、俺の黒髪に合わせて縫われている厚手のリボンと、ボタン部分に使われているガラスのような透明な青色の石がとても洗練されていて、この世界で初めて、俺は服を良いなと思った。
「変わったデザインだけど、可愛いな。こういうのを私が着るとちょっとゴテゴテしてしまうだろうがが、ジーニアスみたいな細身な体型だと、とても綺麗だ」
「リボンも可愛いわ!」
どうやら両親も同じような感想を抱いたらしく、俺の服をまじまじと見つめながらはしゃいでいる。
俺の長身は二人とも美形で、かなり濃い顔立ちをしている。俺は、どちらかと言えば隔世遺伝で、両親の特徴を受け継いではいるが、顔立ちはこう薄めという感じなのだ。
ちなみに、母さんから受け継いだのは薄い綺麗な青色の目と白い肌で、父さんから受け継いだのは黒髪の綺麗な髪なんだけど、俺はとても気に入っている。
長身の家系で背丈が伸びないのはちょっと悲しいけど、可愛い系男子というのものに需要があると聞いた今では、むしろ魅力的な面だとさえ思っていた。
「あはは、父さんと母さんは、確かに外見が派手だもんね」
俺がそう言うと、母さんがそうなのよ!と熱く語る。
「今じゃすっかりなれたけど、この派手な金色の巻き毛に、濃い顔、大きな身体ってどうしても目立つのよね。褒められることは多かったけど、流行りの派手なドレスを着ると、こう周りから浮いちゃって……。はぁ、せめて髪の色がもう少し大人しい色なら、私もそういう服が着れたのかしら」
その言葉を聞いて、俺は少しだけ意外に思った。
母さんの服はどちらかと言えば地味な方で、貴族の前に出るような場でもあまり華美なドレスを着ているのは見たことが無かったからだ。てっきり、俺は母さんの趣味じゃないんだなとばかり思っていた。
「母さんもこういう可愛い感じがひょっとして好きなの?」
俺がそう言うと、母さんは頷いた。
「正直ちょっと憧れね。まぁ、魔物と戦うのにあまり装飾のある服は着れないでしょうけど」
「そっか……」
少し落ち込んだ母さんを父さんが抱き寄せるのを見て、やっぱり母さんも女の人なんだなぁと気づく。普段は勇ましい人なんだけどね。
でも、この仕立てやさんなら、母さんが似合う可愛い服を作れるような気もする。
「あのさ、この仕立て屋なら、母さんに似合うのを作ってくれるんじゃないかな?」
かなり忙しい店らしいけど、じいちゃんの紹介があれば、優先的に作ってくれるのではないかと言うと、母さんは嬉しそうに微笑んだ。けれど、少しだけ戸惑った様子なのは、じいちゃんに頼むのに抵抗があるのかもしれない。
仲は悪くないんだけど、母さんはじいちゃんにちょっと遠慮しているところがあるから。
もっと知性的な人が父さんと結婚していたらってそう思ってる節があるのだ。
「そ、うかしら……。でも、お義父様に悪いのでは……」
「いや、父に頼んでみよう」
父さんは、母さんの遠慮を吹き飛ばすようにそうはっきりと言った。
「あなた、でも……」
「父さんは喜ぶと思うぞ? 君はあまり父さんに我儘を言わないからね」
ウインクする父さんは、本当に様になっている。外見だけ見れば、脳筋には見えないくらいの色男っぷりである。まぁ、母さん限定で妙に聡い所があるけど。
けど、実際、じいちゃんは母さんが我儘を言ってくれたら喜ぶと俺も考えていた。じいちゃんは厳格そうに見えてるけど、俺に魅力値を上げて男をたぶらかせっていう人なので……。
それに、母さんは気にしてるけど、父さんと結婚できる人って母さんくらいしかいないと思うんだよね。父さん、今でこそ大分雰囲気は柔らかいけど、以前は結構怖がられていた戦闘狂だったらしいいし。
じいちゃんが母さんを悪く言う事なんて、殆ど無いしね。唯一あるのは脳筋ってことくらい?
まぁ、あれは夫婦そろってって感じの時くらいだから、悪意がある訳じゃないと思うけど。
「うん、俺もそう思うよ。じいちゃんなら喜んでくれるって」
俺はもうすぐこの地を離れてしまうけど、これを機会に母さんとじいちゃんがもっと仲良くなってくれると良いなって心から思った
じいちゃんが父さんたちに知恵を、父さんたちが力をじいちゃんに貸してくれたら、何でも上手く行くと俺は思うから。
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