世界変革のすゝめ ~我が物顔で世界を害すヒト種よ、一回引っ込め~

大山 たろう

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第二部 捨てられた世界

捨てられた世界

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「さて、今日は自分のダンジョンでも作るか」

 俺は端末を操作し、自身のダンジョンを見る。

 テーマは『王都に突如出現した大迷宮』だ。

 その名に恥じないよう、一階層から十階層ぐらいまで盛って迷路にしてある。
 そして十階層から徐々にゴーレムが出現、といった具合だ。

 そしたら今日は十階層ぐらい作るか......テーマは『主人公が調子乗って昇ってきたら痛い目を見る階層』だな。

 そう考え、自身の作ったショップの使い心地を自分で確かめる。

「まぁ、普通に使えるな」

 普通に購入ができたし、種族ごとにフィルターで検索をかけることができるのも確認済みだ。

 そしてテーマに沿った風景は......やはり遺跡風だろう。そしてフィールド徘徊ボスはブラックドラゴン。これで絶望してもらおう。

 あと絶望要素は......戦天使的なゴーレムとかで多数を......いや、構造を考えるとコストがすごい、そして風景と会わない。そして低い天井だと天使の翼とか生やしても意味がない。今回は見送りかー。

 それなら逃げ道が少ないからシャドウとかアサシンとか搭載するか。

 そう思い結局召喚したのはゴースト、アサシンスネーク、シールマイマイ。

 ゴーストは影に潜み、近づく相手の視野を奪う。
 そして見えなくなったところで音もなくアサシンスネークが忍び寄る。
 シールマイマイはアクティブスキル、いわゆる任意で発動するスキルの発動を抑制する能力『封印』を持っている。まぁ、レベル差があると成功しないのだが、ワンチャンスを狙うならちょうどいいだろう。


 知識があり、なおかつ実力がないと倒せない相手。
 これなら実力チートを封じられる。

「そっちはどうだ?」

「こっちも順調」

 そう言ったぜっちゃんの端末を覗き見る。

 そこにあったのは、ダンジョンというより兵士倉庫である。

「敵が一切来ない。だから」

「確かにそうだ、それなら怪獣ぐらい追加してしまうか?」

「作り直すの面倒だからやめて、それに処理が増える」

「うっ、処理の話をされると強く出れない」

 確かに処理は増える。だが、怪獣を追加したくなるくらいにはそれはダンジョンと言えなかった。

 そう、これは全体的に見ても兵士工場。

 一階層は人口密度とは一体というレベルで詰め込んでおり、地下一階層にて兵士を製造......兵士から取り出した卵を孵化装置にかけている。

「これまさか」

「侵略の準備、あの世界をぶち壊すレベルで」



「......!!!!!」

「誰!?」

「どうしたぜっちゃん」

「今そこに、私たちじゃない第三者がいた」

「さっきからいたぞ?」

「......え」

 ちなみに俺は「敵が一切来ない」あたりから気付いていたが、きっとぜっちゃんも気づいていて話していると思っていた。
 そうして情報を流し、帰還したところを特定の流れだと思っていたが。

「私、気付いてなかったからマーキング、してない」

「俺は一応マーキングしてあるぞ」

「......有能、あなたを呼んでてよかった」

 ぜっちゃんからぽんぽんと頭をなでられた。慎重さもあり、頑張っているお姉ちゃんみたいで可愛い。

「たろー、やっぱり変態、私みたいな女の子に欲情するだなんて」

「して......ねぇよ」

 最後のほうが小声になったと思うのは気のせいだ。

 とりあえずマーキングをした位置を......ん、これは

「とりあえず、ぜっちゃん、まずいことになっているとだけ報告しておこう」

「マーキングの位置はどこだったの?」

 そう、彼女がどこかへと消えてから、情報をもって向かった先。
 もう俺が来る頃にはすでに存在だけ知らされていたもの。

「―――――あいつの本拠地は『捨てられた世界』だ」

「まさか」

「そう、その中でも極めて凶悪だったため放棄され、削除していたと思っていた世界―――――」

「―――――通称『ヘルヘイム』」

「お見事」

 しかし、俺の顔も笑ってはいなかった。
 マーキングも気づかれ、通信が途絶したその部屋で、二人の空気はどんどんと重くなっていった。

 削除したと思っていた世界。それが今も稼働しているというのはどういうことか。
 全能神とはいえ、すべてのデータを網羅しているわけではないというのは、以前も確認した。

 そして今回の場合、表面上は削除したデータ、しかしバックアップから分岐するようにして水面下で稼働し続けていた。

 しかも凶悪とはいえ、分岐したもう片方を削除し、脳の処理容量が開いたために削除を完了したと思った。
 が、実際は分岐している。何か大きな世界の分水嶺でもあったのだろう。そう言った場合はどちらの選択肢も見られるように、どちらとも用意するのだ。今回はそれがあだとなり、こうやって神の世界に足を踏み入れるといった、力を蓄えられている状態となった。

「厄介」

「ん? 結局削除じゃダメなのか?」

「プロテクトがかけられている。私の脳内だけど、削除できないし、データ閲覧もできない」

「なんじゃそりゃ、切り離してどこか別のところにでも置いとくか?」

「切り離す? 脳みそ出すのたろー」

「そりゃそうか、パソコンじゃねぇしな。悪い悪い」

 事態はそこまで好調ではなかった。

 しっかし、あの逃げた銀髪の少女、どこかで見たような気がするが、気のせいだろうか?
 いくら考えようと出てこないその質問に対する答え。いつもなら思考放棄でいいのだが、今回の場合は本物の命がかかっている。いつ寝首を物理的に掻かれるかわからない今、安直に思考を放棄できない。

「ちょっと調べてみる」

「わかった。私はこの世界のプロテクト強化をしておく」

 二人は突然の襲撃に忙しくデータを動かす。

「どう? その既視感の正体はわかった?」

「まだ、もう少しだ......あ」

 最悪の状況だ。
 そう、もう最悪だ。

「全能神、もしかしたらこれまでも、これからも結構まずいことに」

「どうしたの?」

 大山 たろうという一人の男は記憶力が基本的に鳥、実際に指示を三歩歩いて忘れたこともあるほどの忘却速度を誇るが、これを見て忘れたなど言えなかった。

「世界観測をしててさ、全能神は数学的に未来を求められる、そうだろう?」

「そう、少なくとも世界の住民は集積回路、ため込む知識も受ける影響もすべて計算したら、未来はいくらでも見れる」

「そしてそれを搭載したのがあの世界の『予知』というスキルであって、それに耐えうる器として知力特化、預言者というジョブ。けど、それをもってしても来るべき日の未来は見えなかったことを確認している」

「そう。そして私も予知と同じプロセスを用いる計算で未来を見れなかった」

 一つ、また一つと答え合わせをする。

「そして俺が見ていたあの主人公が、運命のねじれ、特異点となっていた。そう、特異点。運命から外れたもの。ならば、どうしてだと思う?」

「―――――何が言いたい?」

 全能神が答えを急かしてくる。が、これは簡単に言うと馬鹿らしい字面だ。だって―――――

「世界戦争だ」

「どういうこと?」

 結局はこうなる。心を、考えを、未来を読めるとはいえ、まだぐちゃぐちゃの思考をまとめているために、そして謎の力も働いているだろう、考えが全く読めていない。

「世界の中の全データを計算。つまりは、世界の外からの干渉によって小さく、そして大きな乱れが発生する。その結果が俺の疑似魂魄がやられた原因、あの主人公が神殺しの弾丸を握ることとなったそのおおもとの原因。特異点となったその決定的な瞬間」

「まさか」

「そう、あの十階層に現れたという銀髪少女。それが数多の世界を乱す『ジョーカー』になっている」

 そりゃ、殺されたおおもとの原因を、持つはずのなかった武器を持っている理由ぐらい、調べた。そしてその結果が、あのザマ。恨み言を残して死んだようになってしまった原因。

「―――――この世界がピラミッドの頂点、その下に観測世界が存在し、その下には観測を停止され削除された世界のゴミや観測されない分岐世界が存在する。世界を超え、しかもピラミッドを降りるのではなく登るエネルギー、生身の人間が耐えられるはずが――――」

「そう、だから最悪」

 ハッとした全能神。きっと可能性に気づいたのだろう。
 さらっとされている世界観測のプロテクト。世界を簡単に跳躍するその権限の高さ。

「世界戦争、しかし世界中でではなく、世界をまたいだ戦争」

「敵は」

「神の領域に手が届いたもの、もしくは神」


 全能神に立ち向かう『ジョーカー』を、二人は今初めて認識した。

「さて、そいつらの動きは正直言ってわからんし、今まで知りもできなかった相手にびくびく震えるってのもあれだし、ダンジョン放置できるようにしとけ」

「わかってる」

 二人はポチポチと端末を操作し、やがて準備を始めた。

「さて、お話の時間だ」

「肉体言語もいとわない」

 二人は、そういって分身体に乗り移り、世界を跳躍した。


「ついた」

「ここがヘルヘイムか......」

 とはいっても、世界にはほとんど何もなかった。

 灰色の地面が広がり、太陽も月も出ない、色褪せた世界。
 どこかの二人が旅行をしている世界よりひどい。なにせすべて黒白の濃淡だけで映るのだから。

「進むよ」

「おう」

 においもしないその世界を進む。風一つ吹かない世界を歩く。

 やがて見えたのは、大きなビルだった。

 とは言っても、青空を反射して青い色に見えるわけもないガラスは灰色、そして柱などが鼠色、といったところだった。

「たのもー」

「たのもー!?」

 道場破りか何かに見えなくもない。
 しかしその言葉で通じたのか、上から数人の人間が現れた。

「お、お前ら、誰だ!」

「髪も銀髪じゃないし、どうする?」

「とりあえず報告するしか」

 と、目の前の三人は相談をしている。
 しかし、三人とも銀髪という、珍しいこともあるんだな。

「今ご主人様、会議中だし」

「今何人たりとも入れるなとか言ってたけど」

「それじゃあ誰に報告?」

 三人の会議がまだ終わらぬようだ。いつまで待てば良いのだろうか?

「報告する?」

「とりあえず秘書様?」

「秘書様って、クレア様?」

 未だひそひそと会議をしているが、すべて筒抜けである。仕方がないので、この肉体に権限付与をできていないものを行っていこう。
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