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第二部 捨てられた世界
全能神の休眠
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「ねぇ、さっき維持できるようにしちゃったから、やることないね」
「そうだな、さっき全部やること済ませちまったしな」
二人は今、危機に直面していた。
それは、暇という怪物との戦闘だった。
二人が暇をつぶすために、そして世界の人間一強時代に終止符を打たせるために、ダンジョンという建築物を建てたのに、それを維持させてしまったためにやることがない。
本当に。ただ本当に何もない。
「神が暇だって言ってるのって、これがずっと続くからなんだろうな」
「そうだね。ずっと続くね」
隣にいる幼女は何でもないかのように答えた。
そう言えば、隣にいるこの幼女も、俺に権限を貸してくれる全能神だってことを、弾に忘れてしまう。
「時間加速も今はできないしなぁ」
「そうだね、使っても機能追加。暇だから」
能力の制限は彼女の自主的なもの、とはいえ無視して酷使すると全能神とはいえ廃人化する。たぶんどこかにある自動回復機能が作動するだろうけど、それでも人の人生じゃ足りないほどの時間、彼女が話すことができなくなるだろうことが予想される。そう考えると今のうちに自粛しておくべきなのだろう。しかし、彼女は動けるのに動けない状況が嫌らしい。回復したぎりぎりまでを使用して暇をつぶすつもりのようだ。
そうだなぁ......
「とりあえず交流的なことをさせて、それ見てみるか? こっちとしてもダンジョン全滅は望んでないしな、勇者対策でも講じると良い」
「そうだね、つくろっか」
二人は製作を始めた。それが暇を潰せるかどうかは知らない。けれど、なんか楽しそう、という思いが二人を動かしていた。全滅云々は建前だ。
「フィルターとか入れないのなら結構簡単にできた」
「もう面倒だし下ネタとか言わせておけ、一週間経過ぐらいでアップデートしてやろうぜ」
未だ経過は五日。
あと二日程度待ったほうが良いと思ったのだが......
「いや、暇だからアップデート」
「マヂカヨ」
全能神はアップデートを始めた。
ヒト......正確にはダンジョンマスターという別の種族なのだが、どちらにも認識できない速度でアップデートが起動され、そして完了した。
「完了」
「はええなおい」
やはり速い。反応すらできないというのは俺の場合、確認できない隙を見て起動、数秒で完了するような形。だが、彼女は文字通り反応する前にアップデートを終わらせる。人間業じゃねぇ。いや、人間じゃなかった。このロリは神だった。
「それじゃ見てみよ」
「待て待て、こういうのは少ししたのを確認するのがいいんだよ」
そう言って彼女を抑える。
「ほら、回復しないとダメだろ?」
「......それを持ってくるのはずるいって」
「お互い様だ」
彼女の権能回復を理由に取って、俺は彼女を休憩させる。
「ほら、俺が前出したベッドで寝とけって」
「......わかった」
これで俺のベッドに幼女のにおいがついた。ミッションコンプリ―ト......目線が怖い。いや、何もしないさ、せいぜいにおいをかいで楽しむくらい......さらに険しくなった。権能で雷を呼び出しそうだ。何故......って、忘れてた、こいつロリだけど神だった、心読めて当然か。
「においで、何するって?」
「イイエ、ナニモシマセン」
今俺の眼からは血涙が出そうだ。
幼女のにおいと権能回復を天秤にかけたとき、権能回復と言わないとどちらも手に入らない可能性まで出てくる。悲しい。
「おやすみ」
全能神はそう言ったきり、反対側を向いてしまい、何も話さなくなった。
寝顔を見せることすら俺にはご褒美だ。彼女もそれをわかって顔を見せないようだ。
そのうえ、神にとって睡眠は必要のない行為。だがそれをするということは主に二つの理由のどちらか。一部を除いて。
一つは、このような神がやむをえない休息を必要としたとき。
もう一つは、いわゆる一夜を共にしてもかまわないという意思表示。
これは確実に休息のパターンなので手を出すような真似はしない。そもそも急速じゃなくても言い訳つけて撤退する。yesロリータnoタッチと言われるように、紳士たるもの鋼の精神で向かわなければならないのだ。
「おやすみ、ぜっちゃん」
そう言って部屋を出た。
彼女が休眠した今、維持する活動こそ残っているものの、アクティブ、つまり能動的な能力はすべて停止している。
つまり今俺はただの人間だ。来るとしたらこのタイミングだろうな。
「あなたが大山 たろうね」
「おう、お前がクレアだな」
二人が初めて顔を合わせた瞬間だった。
銀髪の少女、というよりもう女性と言って差支えない年であろうクレア。
世界を超え、未来を改変していく、特異点。
それに対して俺は、何の力も持たない一般人。
俺に関しては権能、権限の一切を全能神に依存しているため、今この状況だと俺は彼女に傷をつけるどころか、動かすことすらできないだろう。重さ的な話ではなく、抵抗的な話でだ。
「それで、お前がここに来たのは俺と対話、ってことでいいんだな」
「そう。簡潔に言うと、私たちのスパイになってくれないかしら」
「それは無理なご相談だ」
提案された案を内容も聞かずに切り捨てる。
「理由だけ聞いていいかしら」
そう、クレアは問う。
「簡単な話だ。俺は全能神によってこの上位世界に呼ばれて、全能神によって権限を一時的に貸与されていたにすぎない。つまり今俺は生身の人間。お前が殴るだけで爆発四散してそのまま蘇ることもできないちっぽけで脆い人間だ」
「こちらにも力を与えることのできる人はいる、そうすればあの全能神に依存する生活も終わり」
「仮にも全能神の力を借りたから、あの神がまがい物ってくらいすぐにわかる。それにあいつ、世界を超える力を適正ある人にしか渡せないだろ」
「......よくわかったわね」
「ああやって銀髪しかいなければ嫌でもわかる」
「そう、あなたもなんの適正もない、ってわけではなさそうね」
「うるせぇ、それに―――――」
「それに?」
そう一言置いて、俺はこっそりと言った。
「あいつ、かわいいんだぜ? ずっと見てたいだろ」
「―――――そんな理由で断られると思ってなかった」
クレアはふっと笑うと、大きく後ろに飛び、魔法―――否、権能を起動し、いつでも発動できるように待機させた。
そんな理由、ねぇ。
「うるせぇ。これが俺の一番好きな日常なんだよ」
「そう。それならこの誘いはなかったことに」
「だが」
「?」
「個人的に仲良く、つまり友達ってやつからならどうだ?」
「何をバカなことを」
そう言って彼女は消えてしまった。
「初めての友達的な雰囲気作ったのがまずかったのか?」
ラノベを簡単に信じるのは危険だって今確信した。
全能神がおらず、生身の人間になった隙をついて俺に接触してきたのは最後の特異点、クレア。
彼女さえ一度でもデータをとることができれば、予知もすべて狂いなく起動できるはずなのだ。が、それをさせてくれるほどあいつも単調に動いてはくれなさそうだ。
とりあえず、と床に寝転んだ。
いつもは二人でいる部屋。だが、今一人でいるだけでずいぶんと広く感じてしまう。
「いつもは、あいつが隣にいるのにな」
この事態は初めてだ。一応その状況が訪れるかもとは言われていたが、実際にこうなるとは恐らく彼女―――全能神も想像していなかっただろう。
しかし、もうそうなってしまった以上は仕方がない。というより、クレアを探して弱ってしまって、そのタイミングを狙って攻められる、となるともうどうしたらいいかわからなくなってきた。
「俺も寝るか」
全能神の力も失せ、生身となった今、この体は休眠を必要としているようだ。もうあくびがとまらん。
「ふあああああああ」
今日一どころかここにきてから初めてで特大のあくびをかますと、そのまま自室に入ってベッドへ横になる。
温かい布団をかぶり、一瞬で俺は夢の世界へと旅立った。
―――――ううん、ここはどこだ―――――
目の前に広がるのは淡い色で描かれるどこかの草原。
日本でここを何と呼んでいたか、そもそも訪れたことがあっただろうか。あったとしても記憶の彼方だろうに、その光景だけは深く心の底で覚えていた。いや、刻み込まれていた、というべきだろうか。
わからない、けれどわかる。
少し小高い丘にある、大きな枝垂桜。舞う花弁一つ一つが淡く光を帯び、輝いている。
枝垂桜の根っこに立った時、周囲に見えたのは終わりのない終わりだった。
草原が続いているわけではなく、青い空が地面と地平線を描くこともなく、ただ白い世界の終わりがそこにたたずんでいた。
「何処だろうか」
その問いに答えるものなど、誰もいない。
それもそのはず、この世界には一人しかいないのだから。
「もう、行かなくちゃ―――――」
何故だか、そう感じる。どんどんとからだが空へと浮いていく。存在が確定しなくなる。どんどんぶれて、ここと向こうの境目があいまいになる。
「また、ここに戻ってくる気がする」
そう、どこか確信めいた音色でつぶやいた。
けれど、それはまた別のお話。
「んにゅ―――――」
目を覚ます。日の光もくそもない部屋で、ただ腹時計だけが俺を眠りから覚ます材料となる。
「それにしても、久々に寝た」
いつぶりだろうか、とてもすっきりした寝覚めだ。腹が減ったのにすっきりという珍しさに身を任せる。
温かい掛布団をもう一度かぶって―――――かぶって――――あれ?
くるまろうとしたが、どうにもくるまれない。
まるで、隣で誰か寝ているかのように―――――
「ぜっちゃん!?」
つい大声を出してしまった。
「うにゅう―――――っ、た、たろー!?」
目を覚ましていきなり顔を赤面させて、俺の顔に大きな紅葉を作った。おかげで俺も腫れで顔が赤面だよ!
「手、出してないよね」
「あぁ、それどころか昨日の記憶すら」
うっすらと眠くなったあたりは覚えていたのだが......そのあと、眠いって言ってからどうだっけ......?
「ログ見ればいいじゃん」
「だめ、休眠中はログも取れないの。言わなかった?」
つまり、あの間の出来事は何も覚えてない、というわけか―――――
「あの間の出来事って、何かあったの?」
「ナニモナイデス」
そう、本当に何もなかった。何にもなかったんや―――――
「そうだな、さっき全部やること済ませちまったしな」
二人は今、危機に直面していた。
それは、暇という怪物との戦闘だった。
二人が暇をつぶすために、そして世界の人間一強時代に終止符を打たせるために、ダンジョンという建築物を建てたのに、それを維持させてしまったためにやることがない。
本当に。ただ本当に何もない。
「神が暇だって言ってるのって、これがずっと続くからなんだろうな」
「そうだね。ずっと続くね」
隣にいる幼女は何でもないかのように答えた。
そう言えば、隣にいるこの幼女も、俺に権限を貸してくれる全能神だってことを、弾に忘れてしまう。
「時間加速も今はできないしなぁ」
「そうだね、使っても機能追加。暇だから」
能力の制限は彼女の自主的なもの、とはいえ無視して酷使すると全能神とはいえ廃人化する。たぶんどこかにある自動回復機能が作動するだろうけど、それでも人の人生じゃ足りないほどの時間、彼女が話すことができなくなるだろうことが予想される。そう考えると今のうちに自粛しておくべきなのだろう。しかし、彼女は動けるのに動けない状況が嫌らしい。回復したぎりぎりまでを使用して暇をつぶすつもりのようだ。
そうだなぁ......
「とりあえず交流的なことをさせて、それ見てみるか? こっちとしてもダンジョン全滅は望んでないしな、勇者対策でも講じると良い」
「そうだね、つくろっか」
二人は製作を始めた。それが暇を潰せるかどうかは知らない。けれど、なんか楽しそう、という思いが二人を動かしていた。全滅云々は建前だ。
「フィルターとか入れないのなら結構簡単にできた」
「もう面倒だし下ネタとか言わせておけ、一週間経過ぐらいでアップデートしてやろうぜ」
未だ経過は五日。
あと二日程度待ったほうが良いと思ったのだが......
「いや、暇だからアップデート」
「マヂカヨ」
全能神はアップデートを始めた。
ヒト......正確にはダンジョンマスターという別の種族なのだが、どちらにも認識できない速度でアップデートが起動され、そして完了した。
「完了」
「はええなおい」
やはり速い。反応すらできないというのは俺の場合、確認できない隙を見て起動、数秒で完了するような形。だが、彼女は文字通り反応する前にアップデートを終わらせる。人間業じゃねぇ。いや、人間じゃなかった。このロリは神だった。
「それじゃ見てみよ」
「待て待て、こういうのは少ししたのを確認するのがいいんだよ」
そう言って彼女を抑える。
「ほら、回復しないとダメだろ?」
「......それを持ってくるのはずるいって」
「お互い様だ」
彼女の権能回復を理由に取って、俺は彼女を休憩させる。
「ほら、俺が前出したベッドで寝とけって」
「......わかった」
これで俺のベッドに幼女のにおいがついた。ミッションコンプリ―ト......目線が怖い。いや、何もしないさ、せいぜいにおいをかいで楽しむくらい......さらに険しくなった。権能で雷を呼び出しそうだ。何故......って、忘れてた、こいつロリだけど神だった、心読めて当然か。
「においで、何するって?」
「イイエ、ナニモシマセン」
今俺の眼からは血涙が出そうだ。
幼女のにおいと権能回復を天秤にかけたとき、権能回復と言わないとどちらも手に入らない可能性まで出てくる。悲しい。
「おやすみ」
全能神はそう言ったきり、反対側を向いてしまい、何も話さなくなった。
寝顔を見せることすら俺にはご褒美だ。彼女もそれをわかって顔を見せないようだ。
そのうえ、神にとって睡眠は必要のない行為。だがそれをするということは主に二つの理由のどちらか。一部を除いて。
一つは、このような神がやむをえない休息を必要としたとき。
もう一つは、いわゆる一夜を共にしてもかまわないという意思表示。
これは確実に休息のパターンなので手を出すような真似はしない。そもそも急速じゃなくても言い訳つけて撤退する。yesロリータnoタッチと言われるように、紳士たるもの鋼の精神で向かわなければならないのだ。
「おやすみ、ぜっちゃん」
そう言って部屋を出た。
彼女が休眠した今、維持する活動こそ残っているものの、アクティブ、つまり能動的な能力はすべて停止している。
つまり今俺はただの人間だ。来るとしたらこのタイミングだろうな。
「あなたが大山 たろうね」
「おう、お前がクレアだな」
二人が初めて顔を合わせた瞬間だった。
銀髪の少女、というよりもう女性と言って差支えない年であろうクレア。
世界を超え、未来を改変していく、特異点。
それに対して俺は、何の力も持たない一般人。
俺に関しては権能、権限の一切を全能神に依存しているため、今この状況だと俺は彼女に傷をつけるどころか、動かすことすらできないだろう。重さ的な話ではなく、抵抗的な話でだ。
「それで、お前がここに来たのは俺と対話、ってことでいいんだな」
「そう。簡潔に言うと、私たちのスパイになってくれないかしら」
「それは無理なご相談だ」
提案された案を内容も聞かずに切り捨てる。
「理由だけ聞いていいかしら」
そう、クレアは問う。
「簡単な話だ。俺は全能神によってこの上位世界に呼ばれて、全能神によって権限を一時的に貸与されていたにすぎない。つまり今俺は生身の人間。お前が殴るだけで爆発四散してそのまま蘇ることもできないちっぽけで脆い人間だ」
「こちらにも力を与えることのできる人はいる、そうすればあの全能神に依存する生活も終わり」
「仮にも全能神の力を借りたから、あの神がまがい物ってくらいすぐにわかる。それにあいつ、世界を超える力を適正ある人にしか渡せないだろ」
「......よくわかったわね」
「ああやって銀髪しかいなければ嫌でもわかる」
「そう、あなたもなんの適正もない、ってわけではなさそうね」
「うるせぇ、それに―――――」
「それに?」
そう一言置いて、俺はこっそりと言った。
「あいつ、かわいいんだぜ? ずっと見てたいだろ」
「―――――そんな理由で断られると思ってなかった」
クレアはふっと笑うと、大きく後ろに飛び、魔法―――否、権能を起動し、いつでも発動できるように待機させた。
そんな理由、ねぇ。
「うるせぇ。これが俺の一番好きな日常なんだよ」
「そう。それならこの誘いはなかったことに」
「だが」
「?」
「個人的に仲良く、つまり友達ってやつからならどうだ?」
「何をバカなことを」
そう言って彼女は消えてしまった。
「初めての友達的な雰囲気作ったのがまずかったのか?」
ラノベを簡単に信じるのは危険だって今確信した。
全能神がおらず、生身の人間になった隙をついて俺に接触してきたのは最後の特異点、クレア。
彼女さえ一度でもデータをとることができれば、予知もすべて狂いなく起動できるはずなのだ。が、それをさせてくれるほどあいつも単調に動いてはくれなさそうだ。
とりあえず、と床に寝転んだ。
いつもは二人でいる部屋。だが、今一人でいるだけでずいぶんと広く感じてしまう。
「いつもは、あいつが隣にいるのにな」
この事態は初めてだ。一応その状況が訪れるかもとは言われていたが、実際にこうなるとは恐らく彼女―――全能神も想像していなかっただろう。
しかし、もうそうなってしまった以上は仕方がない。というより、クレアを探して弱ってしまって、そのタイミングを狙って攻められる、となるともうどうしたらいいかわからなくなってきた。
「俺も寝るか」
全能神の力も失せ、生身となった今、この体は休眠を必要としているようだ。もうあくびがとまらん。
「ふあああああああ」
今日一どころかここにきてから初めてで特大のあくびをかますと、そのまま自室に入ってベッドへ横になる。
温かい布団をかぶり、一瞬で俺は夢の世界へと旅立った。
―――――ううん、ここはどこだ―――――
目の前に広がるのは淡い色で描かれるどこかの草原。
日本でここを何と呼んでいたか、そもそも訪れたことがあっただろうか。あったとしても記憶の彼方だろうに、その光景だけは深く心の底で覚えていた。いや、刻み込まれていた、というべきだろうか。
わからない、けれどわかる。
少し小高い丘にある、大きな枝垂桜。舞う花弁一つ一つが淡く光を帯び、輝いている。
枝垂桜の根っこに立った時、周囲に見えたのは終わりのない終わりだった。
草原が続いているわけではなく、青い空が地面と地平線を描くこともなく、ただ白い世界の終わりがそこにたたずんでいた。
「何処だろうか」
その問いに答えるものなど、誰もいない。
それもそのはず、この世界には一人しかいないのだから。
「もう、行かなくちゃ―――――」
何故だか、そう感じる。どんどんとからだが空へと浮いていく。存在が確定しなくなる。どんどんぶれて、ここと向こうの境目があいまいになる。
「また、ここに戻ってくる気がする」
そう、どこか確信めいた音色でつぶやいた。
けれど、それはまた別のお話。
「んにゅ―――――」
目を覚ます。日の光もくそもない部屋で、ただ腹時計だけが俺を眠りから覚ます材料となる。
「それにしても、久々に寝た」
いつぶりだろうか、とてもすっきりした寝覚めだ。腹が減ったのにすっきりという珍しさに身を任せる。
温かい掛布団をもう一度かぶって―――――かぶって――――あれ?
くるまろうとしたが、どうにもくるまれない。
まるで、隣で誰か寝ているかのように―――――
「ぜっちゃん!?」
つい大声を出してしまった。
「うにゅう―――――っ、た、たろー!?」
目を覚ましていきなり顔を赤面させて、俺の顔に大きな紅葉を作った。おかげで俺も腫れで顔が赤面だよ!
「手、出してないよね」
「あぁ、それどころか昨日の記憶すら」
うっすらと眠くなったあたりは覚えていたのだが......そのあと、眠いって言ってからどうだっけ......?
「ログ見ればいいじゃん」
「だめ、休眠中はログも取れないの。言わなかった?」
つまり、あの間の出来事は何も覚えてない、というわけか―――――
「あの間の出来事って、何かあったの?」
「ナニモナイデス」
そう、本当に何もなかった。何にもなかったんや―――――
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