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第四話
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「塔を?」
「そう。ハムⅠレースは決まって雲を突き抜けるほど高い塔で行われる。人はそれを、パンドラの塔と呼んでいるわ。その塔を登る。頂上まで行けばゴール。さまざまな障害物を人間とハムスターがいっしょにクリアして塔を登っていく――。ハムⅠレースはそんな競技よ」
店員さんの説明に、手元のハムスターもくんくんと鼻を鳴らしている。
香由花は少し考えて、
「東京タワーとか、そういうのを登るんですか?」と質問した。
店員さんは、パンドラの塔は東京タワーとちがって筒形だけど、と前置きしたうえでうなずく。
「頂上までのぼりつめればゴールだけれど、この競技はそれすらもそんなに甘くない。選手たちをたくさんの罠が待ち受けているの。それを、ハムスターと協力してなんとかかいくぐっていく。体力も頭脳も、運もいる。だからおもしろくて、熱狂するファンは何千人……いや、何万人もいるわ」
へ、へえっ……
香由花は目を丸くした。
塔をハムスターとのぼる障害物レース――でも、こんなものがあるなんて話、聞いたことがない。
「あ、聞いたことない、と思うのも無理はないわよ?」
店員さんの目が光っている。
香由花は心を読まれたのかと思ってあせった。
「ハムⅠレースは秘密の競技。誰にでも開かれるけれど、誰もが気づけるわけじゃない」
「どういうことですか?」
香由花の問いに、店員さんはにやりと笑った。
「どうして秘密に行われ続けられるのか」
店員さんはそのほほえみを絶やさずに、言葉を継ぐ。
「ふしぎに思うでしょうね。それだけの人が熱狂する競技なのに、あなたは今まで聞いたこともなかったのでしょう。そんなものが存在しているとしたら、きっともっとニュースなんかで取り上げられるはずだものね」
香由花はおそるおそるながらうなずいた。
そのとおりだ。
めずらしいものが登場した時は、新聞やニュースでどんどん流れるはずだし、家族や友達の間でも話題になる。
香由花は店員さんの言葉に、耳をすませた。
「ハムⅠレースはね、夢の中で行われるの」
夢?
「夢。だから、世界には認識されない」
香由花はなんだかキツネにつままれたような気分になった。
夢……?
いったいこの店員さんはなにを言い出すんだろう……?
香由花が頭の中にクエスチョンマークを浮かべていると、店員さんはある質問をくりだした。
「あなたは思いどおりの夢を見たことってある?」
香由花は首をかしげてみせた。
「お正月、元旦に見ると縁起のいいものといえば、一、富士・二、タカ・三、なすび、よね。その三つを初夢で見ると一年に幸が多くなると言うから、なんとかしてその初夢を見るために富士とタカとなすびを絵に描いて枕の下に敷いて寝たりする人もたくさんいる」
香由花はとりあえず黙ってうなずいた。
ハツユメ、イチフジニタカサンナスビ。
たしかにお正月によく聞く言葉だ。
実際に絵を描いて机の下に入れて寝たことはないけれど……。
「ハムⅠレースに出たかったら、まずは自ら望んだ夢を見る必要があるのよ。ハムⅠレースはね、同じようにレースの夢を見ている人たちと、その夢の中で行う競技だから」
にこにこ笑っている店員さんと、そんな店員さんをひたすら見つめ返している香由花。
夢の中で行われるレース……
自ら望んだ夢を見る必要……
同じようにレースの夢を見ている人たちと……。
緊迫した濃厚な時が流れていく。
「いや、あはは、びっくりさせちゃったみたいね」
香由花はうなずいた。
うなずいたというより、あごが震えていて勝手にうなずいたようになってしまった。
えっと、つまり――?!
ハムⅠレースっていうのは、
ハムⅠレースのことを考えて寝て、
ハムⅠレースの夢を見て、
同じくハムⅠレースの夢を考えて寝た子たちと、
勝負するレース?!
「ええまあ――驚くのも無理はないわ。でも、これは嘘じゃないの」
この人は、嘘を言うような人には見えない。
それにさっき自分も、樺さんがハムⅠレースのことで猛抗議していたのを見てしまっている。
でも――それにしても――?
「そして夢は、子どもにしか見られない」
店員さんは瞳を大きく開かせて、迫りくるようにそう言ったと思うと、
「 “夢は、子どもにしか見られない ”うーん、ちょっとちがうかしら」
次は緊張を解いたかのようにその瞳をくるくると動かした。
「夢を見られる大人が、あまりに少ないから――かしら。ハムⅠレースなんて存在しない、そうやって否定し続ける限り、」
言いながらハムスターを香由花の手からそっと取り、ゲージに入れようとする。
「その人はハムⅠレースの夢を見ることができないの」
頭の毛がぽよぽよと上を向いているそのハムスターは、ゲージに戻されることをさとると、短い両手両足をばたつかせてなんだがひどく暴れはじめた。
ハムⅠレースの夢は子どもにしか見られない。
夢を見られる大人があまりに少ないから――。
店員さんは続ける。
「大人になったら、多くの人がそんな “夢 ”の感情を忘れてしまう。だから、結果的に子どもにしか見られないのよ。ううん、大人になっても夢を忘れない人はいるわ。でも、それでハムⅠレースの夢を見ることのできる大人がいたとしても、常識で動いている世界には『ハムⅠレースが……』なんて叫んでも現実とは認めてもらえない。どころか、変人あつかいされてしまう。子どもだって、ハムⅠレースの夢を見られたことを親に言ったって、想像力が豊かね、とあしらわれて終わるか、ふざけるのはよしなさいと一蹴されて終わり。だから、ハムⅠレースがあるということは世界中に知られない」
ぺらぺらと慣れたような口調だったが、なんだか少しさびしげで――
だが、そう感じたところで、今の香由花には店員さんの気持ちまで気づかう余裕はなかった。
よく、わからないけど――
この店員さんが言うには、ハムⅠレースは、夢の中で開催するレース……なのね?
店員さんはテーブルに越しに、ぐぐっと詰め寄るように問いかける。
「あなたは、信じられる?」
店の中にいるすべてのハムスターがひまわりの種から口を離し、回し車を止めて見つめているような気がした。
店員さんの手の中であばれていた白いハムスターも、ぴたりと止まった。
「信じられたら、ハムⅠレースへの扉は開かれるわ」
扉。
ハムⅠレースの夢への扉。
いつの間にか心の中の手には、その扉の鍵が握らされている。
「あなたは今日、夢の中で私と会って、ハムⅠレースを観戦できるの」
香由花は信じられない気持ちと、もしかしたらという気持ちでいっぱいになった。
心を落ち着かせて、その鍵を見つめる。
店員さんは笑みを浮かべて続ける。
「さっきのあの子……樺小梅ちゃんも、有力出場者なのよ」
香由花の脳裏に、あのドレスを着た女の子が浮かびあがる。
肩に、金色に輝くハムスター・リオレーヌちゃんを乗せて。
――あの子も――、樺さんも、そんな夢を知っている人。
夢か……。
香由花は、顔を上げた。
目の前に、店員さんが待ち構えるようにこちらを見つめている。
ハムスターも。
時が止まるような感覚。
ハムⅠレースが、ゆっくり頭の中を回り巡る。
そう、心の扉にさした鍵を、回すように――
「て、店員さん!」
「ん?」
香由花の叫びに、店員さんは首をかしげた。
「わ、私にハムⅠレースについて、もっともっと教えてください!」
ばん、とカウンターを叩いて思わず前につめよる。
そんな香由花に店員さんは、
「そう言ってくれて、うれしいわ」
小さな目を弓のようにして、にっこりほほえんだ。
「じゃあよく聞いて。ハムⅠレースの夢を見る方法、レースに参加する方法はね、絵を描いてただ枕の下に敷いて寝る――これもいいけど、一番の方法は、そのことを夢にまで見られるほど考えることなの」
店員さんはかわいらしくウインクをしてみせた。一言も聞きもらすまいとする香由花に、店員さんは人差指を立てて説明してくれる。
「今日、ベッドに入って目をつむって、ハムⅠレースのことを考えながら眠ってちょうだい。夢の中で目が覚めたとき、あなたにはもう、雲を突き抜けるほど高い塔が見えるはず。あとは、そのときになればわかるわ」
そう言うと、店員さんは同じく席を立った。
「そこでまた、会いましょう。レースについての説明は本場での方がいいものね。持ち物はなにもいらないわ。お風呂も済ませちゃって、パジャマで、いつものように寝ればいいからね」
ふふ、すべては夢だもの……
彼女がそういった瞬間、まるで結界が解かれたかのように、チリンチリンとドアのかねの音がして、店内に他のお客さんが入ってきた。
「いらっしゃいませー」
何食わぬ顔で、店員さんはお客さんにあいさつした。
「えっ、えっと、ハムⅠレースのことを考えながら、ふつうに、眠ればいいんですねっ?!」
香由花は確認のためにたずねる。
「そうよ。さあ、お客さんがいらっしゃって忙しくなってしまったわ。また詳しく話すから」
そうして店員さんは
「夢の中でね」
と付け加える。
店内の時計を見ると、午後五時を回っている。
香由花は驚いた。
もう二時間もここにいたの!?
ほんの十分も過ぎていないはずなのに。
「あのっ、ハムスターのことですがっ……」
「ああ……ええ、どうしたの? ゲージごと持ってってくれていいわよ? ああ、別に明日取りに来てくれても構わないけど」
(たぶん、そのほうがいいよなぁ……)
「あ、じゃあ、お母さんに一回話してから、また明日取りに来ます」
そして香由花は店を出ようとして大事なことに気がついた。
レジへ向かうところだった店員さんを、あわてて呼び止める。
「そ……! それと、店員さん!」
ふり返る店員さんに、香由花はどう説明したらいいものかと困った。
しかしめんどうになってしまったので、単刀直入に聞いた。
「ここって、えーとえーと……どこですか?」
「そう。ハムⅠレースは決まって雲を突き抜けるほど高い塔で行われる。人はそれを、パンドラの塔と呼んでいるわ。その塔を登る。頂上まで行けばゴール。さまざまな障害物を人間とハムスターがいっしょにクリアして塔を登っていく――。ハムⅠレースはそんな競技よ」
店員さんの説明に、手元のハムスターもくんくんと鼻を鳴らしている。
香由花は少し考えて、
「東京タワーとか、そういうのを登るんですか?」と質問した。
店員さんは、パンドラの塔は東京タワーとちがって筒形だけど、と前置きしたうえでうなずく。
「頂上までのぼりつめればゴールだけれど、この競技はそれすらもそんなに甘くない。選手たちをたくさんの罠が待ち受けているの。それを、ハムスターと協力してなんとかかいくぐっていく。体力も頭脳も、運もいる。だからおもしろくて、熱狂するファンは何千人……いや、何万人もいるわ」
へ、へえっ……
香由花は目を丸くした。
塔をハムスターとのぼる障害物レース――でも、こんなものがあるなんて話、聞いたことがない。
「あ、聞いたことない、と思うのも無理はないわよ?」
店員さんの目が光っている。
香由花は心を読まれたのかと思ってあせった。
「ハムⅠレースは秘密の競技。誰にでも開かれるけれど、誰もが気づけるわけじゃない」
「どういうことですか?」
香由花の問いに、店員さんはにやりと笑った。
「どうして秘密に行われ続けられるのか」
店員さんはそのほほえみを絶やさずに、言葉を継ぐ。
「ふしぎに思うでしょうね。それだけの人が熱狂する競技なのに、あなたは今まで聞いたこともなかったのでしょう。そんなものが存在しているとしたら、きっともっとニュースなんかで取り上げられるはずだものね」
香由花はおそるおそるながらうなずいた。
そのとおりだ。
めずらしいものが登場した時は、新聞やニュースでどんどん流れるはずだし、家族や友達の間でも話題になる。
香由花は店員さんの言葉に、耳をすませた。
「ハムⅠレースはね、夢の中で行われるの」
夢?
「夢。だから、世界には認識されない」
香由花はなんだかキツネにつままれたような気分になった。
夢……?
いったいこの店員さんはなにを言い出すんだろう……?
香由花が頭の中にクエスチョンマークを浮かべていると、店員さんはある質問をくりだした。
「あなたは思いどおりの夢を見たことってある?」
香由花は首をかしげてみせた。
「お正月、元旦に見ると縁起のいいものといえば、一、富士・二、タカ・三、なすび、よね。その三つを初夢で見ると一年に幸が多くなると言うから、なんとかしてその初夢を見るために富士とタカとなすびを絵に描いて枕の下に敷いて寝たりする人もたくさんいる」
香由花はとりあえず黙ってうなずいた。
ハツユメ、イチフジニタカサンナスビ。
たしかにお正月によく聞く言葉だ。
実際に絵を描いて机の下に入れて寝たことはないけれど……。
「ハムⅠレースに出たかったら、まずは自ら望んだ夢を見る必要があるのよ。ハムⅠレースはね、同じようにレースの夢を見ている人たちと、その夢の中で行う競技だから」
にこにこ笑っている店員さんと、そんな店員さんをひたすら見つめ返している香由花。
夢の中で行われるレース……
自ら望んだ夢を見る必要……
同じようにレースの夢を見ている人たちと……。
緊迫した濃厚な時が流れていく。
「いや、あはは、びっくりさせちゃったみたいね」
香由花はうなずいた。
うなずいたというより、あごが震えていて勝手にうなずいたようになってしまった。
えっと、つまり――?!
ハムⅠレースっていうのは、
ハムⅠレースのことを考えて寝て、
ハムⅠレースの夢を見て、
同じくハムⅠレースの夢を考えて寝た子たちと、
勝負するレース?!
「ええまあ――驚くのも無理はないわ。でも、これは嘘じゃないの」
この人は、嘘を言うような人には見えない。
それにさっき自分も、樺さんがハムⅠレースのことで猛抗議していたのを見てしまっている。
でも――それにしても――?
「そして夢は、子どもにしか見られない」
店員さんは瞳を大きく開かせて、迫りくるようにそう言ったと思うと、
「 “夢は、子どもにしか見られない ”うーん、ちょっとちがうかしら」
次は緊張を解いたかのようにその瞳をくるくると動かした。
「夢を見られる大人が、あまりに少ないから――かしら。ハムⅠレースなんて存在しない、そうやって否定し続ける限り、」
言いながらハムスターを香由花の手からそっと取り、ゲージに入れようとする。
「その人はハムⅠレースの夢を見ることができないの」
頭の毛がぽよぽよと上を向いているそのハムスターは、ゲージに戻されることをさとると、短い両手両足をばたつかせてなんだがひどく暴れはじめた。
ハムⅠレースの夢は子どもにしか見られない。
夢を見られる大人があまりに少ないから――。
店員さんは続ける。
「大人になったら、多くの人がそんな “夢 ”の感情を忘れてしまう。だから、結果的に子どもにしか見られないのよ。ううん、大人になっても夢を忘れない人はいるわ。でも、それでハムⅠレースの夢を見ることのできる大人がいたとしても、常識で動いている世界には『ハムⅠレースが……』なんて叫んでも現実とは認めてもらえない。どころか、変人あつかいされてしまう。子どもだって、ハムⅠレースの夢を見られたことを親に言ったって、想像力が豊かね、とあしらわれて終わるか、ふざけるのはよしなさいと一蹴されて終わり。だから、ハムⅠレースがあるということは世界中に知られない」
ぺらぺらと慣れたような口調だったが、なんだか少しさびしげで――
だが、そう感じたところで、今の香由花には店員さんの気持ちまで気づかう余裕はなかった。
よく、わからないけど――
この店員さんが言うには、ハムⅠレースは、夢の中で開催するレース……なのね?
店員さんはテーブルに越しに、ぐぐっと詰め寄るように問いかける。
「あなたは、信じられる?」
店の中にいるすべてのハムスターがひまわりの種から口を離し、回し車を止めて見つめているような気がした。
店員さんの手の中であばれていた白いハムスターも、ぴたりと止まった。
「信じられたら、ハムⅠレースへの扉は開かれるわ」
扉。
ハムⅠレースの夢への扉。
いつの間にか心の中の手には、その扉の鍵が握らされている。
「あなたは今日、夢の中で私と会って、ハムⅠレースを観戦できるの」
香由花は信じられない気持ちと、もしかしたらという気持ちでいっぱいになった。
心を落ち着かせて、その鍵を見つめる。
店員さんは笑みを浮かべて続ける。
「さっきのあの子……樺小梅ちゃんも、有力出場者なのよ」
香由花の脳裏に、あのドレスを着た女の子が浮かびあがる。
肩に、金色に輝くハムスター・リオレーヌちゃんを乗せて。
――あの子も――、樺さんも、そんな夢を知っている人。
夢か……。
香由花は、顔を上げた。
目の前に、店員さんが待ち構えるようにこちらを見つめている。
ハムスターも。
時が止まるような感覚。
ハムⅠレースが、ゆっくり頭の中を回り巡る。
そう、心の扉にさした鍵を、回すように――
「て、店員さん!」
「ん?」
香由花の叫びに、店員さんは首をかしげた。
「わ、私にハムⅠレースについて、もっともっと教えてください!」
ばん、とカウンターを叩いて思わず前につめよる。
そんな香由花に店員さんは、
「そう言ってくれて、うれしいわ」
小さな目を弓のようにして、にっこりほほえんだ。
「じゃあよく聞いて。ハムⅠレースの夢を見る方法、レースに参加する方法はね、絵を描いてただ枕の下に敷いて寝る――これもいいけど、一番の方法は、そのことを夢にまで見られるほど考えることなの」
店員さんはかわいらしくウインクをしてみせた。一言も聞きもらすまいとする香由花に、店員さんは人差指を立てて説明してくれる。
「今日、ベッドに入って目をつむって、ハムⅠレースのことを考えながら眠ってちょうだい。夢の中で目が覚めたとき、あなたにはもう、雲を突き抜けるほど高い塔が見えるはず。あとは、そのときになればわかるわ」
そう言うと、店員さんは同じく席を立った。
「そこでまた、会いましょう。レースについての説明は本場での方がいいものね。持ち物はなにもいらないわ。お風呂も済ませちゃって、パジャマで、いつものように寝ればいいからね」
ふふ、すべては夢だもの……
彼女がそういった瞬間、まるで結界が解かれたかのように、チリンチリンとドアのかねの音がして、店内に他のお客さんが入ってきた。
「いらっしゃいませー」
何食わぬ顔で、店員さんはお客さんにあいさつした。
「えっ、えっと、ハムⅠレースのことを考えながら、ふつうに、眠ればいいんですねっ?!」
香由花は確認のためにたずねる。
「そうよ。さあ、お客さんがいらっしゃって忙しくなってしまったわ。また詳しく話すから」
そうして店員さんは
「夢の中でね」
と付け加える。
店内の時計を見ると、午後五時を回っている。
香由花は驚いた。
もう二時間もここにいたの!?
ほんの十分も過ぎていないはずなのに。
「あのっ、ハムスターのことですがっ……」
「ああ……ええ、どうしたの? ゲージごと持ってってくれていいわよ? ああ、別に明日取りに来てくれても構わないけど」
(たぶん、そのほうがいいよなぁ……)
「あ、じゃあ、お母さんに一回話してから、また明日取りに来ます」
そして香由花は店を出ようとして大事なことに気がついた。
レジへ向かうところだった店員さんを、あわてて呼び止める。
「そ……! それと、店員さん!」
ふり返る店員さんに、香由花はどう説明したらいいものかと困った。
しかしめんどうになってしまったので、単刀直入に聞いた。
「ここって、えーとえーと……どこですか?」
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