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しおりを挟む「ほんと、意地悪なんだから」
膝の上で丸くなっている三毛猫の額をつつくと、煩わしそうに「みゃあ」と返ってくる。葉名が不満そうに眉間に皺を寄せていると、隣に座る彼女の母親は笑った。
「仕方ないでしょう。葉名が帰ってくるのずっと待っていたのに、可愛い子を連れてくるんだからみぃが怒るのも無理ないわ」
「だって……大体お母さん、みぃのあの顔見てないでしょ。すごく意地悪な顔してたんだから」
「そうなの?」
「みぃって、いつもお母さんの前だけでは猫被ってるのよ」
「猫が猫被ってるって……」
葉名の母は可笑しそうに笑うが、葉名はまだ腹を立てていた。三毛猫はこの家に来たばかりの頃から葉名の母が大好きで、未だに四六時中纏わりついている。逆に葉名や葉名の妹たちには冷たい態度ばかり取る二面性のある猫なのだ。特に葉名は三毛猫が嫌う風呂や爪切りの世話をよくしていたものだから、更に冷たくされていた。だから、葉名に対する執着を見せるなんて思ってもみなかった。
「みぃ、お願い。颯ちゃんに優しくしてあげて。大切な子なの」
葉名の必死な願いも虚しく、三毛猫は面倒そうに葉名の顔を見るとプイっと視線を逸らした。ピョン、と膝から降りると葉名の母の方へと向かい、彼女の膝の上で丸くなった。
「みぃにも心の準備が必要なのよ」
「ややこしい猫ね……」
悪口を言われていることは敏感に感じ取ったようで、三毛猫は苦言を呈するように「にゃあ」と声を上げた。その時、玄関の方から扉が開く音が聞こえ、三毛猫の耳がぴくぴくと動いた。
「颯ちゃん、お帰りなさい」
「はなちゃん……おこりんぼしてごめんなさい」
「ううん、大丈夫よ」
笑顔で颯と旺也を迎え、旺也に抱き上げられていた颯を受け取り抱き締める。しばらく葉名に抱き締められていた颯だったが、意を決したように葉名の膝から降りると三毛猫の傍まで近付いた。
「みぃ……おこってごめんね。ねこじゃらし、ぶつけてごめんね」
三毛猫はちらりと颯を見ると不機嫌そうに膝から降り、くるりと背を向けどこかへと行ってしまった。
「みぃ……」
「颯ちゃん、大丈夫よ」
小さな肩を落とす颯の頭を撫でながら、葉名の母は口を開いた。
「みぃもね、悪かったな~って思ってるのよ」
「……そうなの?」
「ええ。みぃはね、“いいよ”って言うのが、ちょっと苦手なの」
「そっか。まだちいさいもんね」
「ふふ、そうね」
本当なら三毛猫の方が颯よりずっと年上なのだが、葉名の母は否定しなかった。三毛猫の姿は見えないがどこからか「みゃあ」と異議を唱える声が聞こえた。
「きっと仲良くなれるわ。そうそう、リッキーにも挨拶してあげて?」
「そうだ、リッキー!」
三毛猫のことで到着早々バタバタしてしまい、挨拶をすっかり忘れていたが、葉名の実家には三毛猫だけでなくリッキーという名の犬も暮らしていた。リッキーは葉名が子どもの頃に拾ってきた犬で、三毛猫と違い葉名によく懐いていた。
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