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偽りの自分 side奏①
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俺の体をさっきとは逆にぎゅっと抱き締めて、千尋さんは大層慌てた様子で言った。
「駄目じゃない!
ぜんっぜん困らされてなんて、ないから。
むしろこちらが、ありがとうございます!」
ホント、素直過ぎるだろ。
......こんなだから俺みたいなヤツに、付け入られるんだよ。
本当の自分では引き留める事が出来そうになかったのは多少ムカつくが、まぁでも俺としては悪くない結果と言えよう。
だって最悪なのはこの人にこのまま出ていかれて、これっきり縁が途切れてしまう事だったから。
ニヤリと上がる、俺の口角。
それを見て彼女は、一瞬顔を引きつらせた。
だから俺は慌てていつものアイドルスマイルを顔面に貼り付けて、何事も無かったみたいに彼女の華奢な体に腕を回した。
いつもは完璧に、愛らしい弟系男子に擬態する事が出来るのに、この人の前だとどうやらすぐに素の自分が顔を覗かせようとするらしい。
出来る事ならば、偽りの姿ではなく本当の自分に、少しでも興味を持って欲しいなと願ってしまうせいかもしれない。
......アイドルとしてデビューして以来、こんな風に考えた事は一度たりとも無かったはずなのに。
「良かったぁ......。
嬉しいな、これからも千尋さんと一緒に過ごせるなんて」
にっこりと微笑み、彼女の顔をじっと見下ろした。
すると千尋さんは少し頬を染め、俺から体を離そうとした。
......ちっ、逃げられたか。
残念。でも、仕方あるまい。
こちらもそろそろタイムアップだし、あまり事を急いでは、せっかく得られたらしき彼女の信頼を失う事になりかねない。
「駄目じゃない!
ぜんっぜん困らされてなんて、ないから。
むしろこちらが、ありがとうございます!」
ホント、素直過ぎるだろ。
......こんなだから俺みたいなヤツに、付け入られるんだよ。
本当の自分では引き留める事が出来そうになかったのは多少ムカつくが、まぁでも俺としては悪くない結果と言えよう。
だって最悪なのはこの人にこのまま出ていかれて、これっきり縁が途切れてしまう事だったから。
ニヤリと上がる、俺の口角。
それを見て彼女は、一瞬顔を引きつらせた。
だから俺は慌てていつものアイドルスマイルを顔面に貼り付けて、何事も無かったみたいに彼女の華奢な体に腕を回した。
いつもは完璧に、愛らしい弟系男子に擬態する事が出来るのに、この人の前だとどうやらすぐに素の自分が顔を覗かせようとするらしい。
出来る事ならば、偽りの姿ではなく本当の自分に、少しでも興味を持って欲しいなと願ってしまうせいかもしれない。
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「良かったぁ......。
嬉しいな、これからも千尋さんと一緒に過ごせるなんて」
にっこりと微笑み、彼女の顔をじっと見下ろした。
すると千尋さんは少し頬を染め、俺から体を離そうとした。
......ちっ、逃げられたか。
残念。でも、仕方あるまい。
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