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好き②

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「何をニヤニヤしてんの?」

 ククッと肩を揺らして笑いながら、顔を覗き込まれた。
 突然の至近距離に驚き、一歩後退ろうとしたら足元がふらつき、転けそうになってしまったら慌てた感じで彼は手を伸ばし、私の腰を抱いた。

 綺麗な顔をしているし、一見華奢な感じに見えてもやっぱり彼は男性なのだと、その瞬間当たり前の事を改めて感じた。
 そしてこの見目麗しい人が自分の恋人なのだと思い、思わずうっとりと見つめてしまうと、彼は今度はニヤリと意地悪く口元を歪めて笑った。

「えっと......千尋さん。
 そういう顔されたら俺、飯なんかより千尋さんが食べたくなっちゃうんだけど?」

 つつつ、と卑猥な感じで私の背中に這わされた、彼の細く長い指先。
 それにゾクリとして、体が小さく震えた。

 瞳を細めてじっと私の事を見下ろされると、自然と体が再び熱を帯びていくのを感じた。

 すると彼はふぅと小さく溜め息を吐き、荒々しく、噛み付くみたいに私の唇をキスで塞いだ。
 それにまたびっくりして、彼の体にしがみつくみたいにして抱き付いた。
 
 だけど奏くんは私の背中に回していた手を離し、困り顔で笑った。

「......ホント千尋さんって、たちが悪いよね」

 意地悪を言われた上に、いきなりまたキスをされたのだ。
 こんなにも翻弄されているのは私の方だというのに、そんな事を言われるだなんて。
 それがどうしても納得がいかず、またしても尖る私の唇。

「なんで、そうなるのよ?
 奏くんの方が、よっぽどたちが悪いと思うけど!」

 キッと睨み付けて言ってやったのに、彼はやれやれとでも言いたげに呆れた様子で軽く肩をすくめて、私の頭をポンポンと軽く撫でた。

「......そういうとこだよ。
 まぁ、いいや。とりあえず飯、作っちゃおう!」

 ニッといつもみたいに笑った彼の表情からは、先程までの色っぽい雰囲気は完全に霧散していた。
 だからなんとなく納得がいかないままではあったけれど、私は渋々頷いた。
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