年下俺様アイドルの、正しい飼い方

暗躍④

　しかし衣装チェンジ後も当然の事ながら、ライブは続く。
　エレンの動揺を余所に、鈴について語る間もなく、再び俺達はステージへ。

　とは言えエレンも、プロのアイドルなワケで。

　さっきまでの阿呆面は、何処へやら。
　舞台に上がるといつも通り、JOKERのリーダー 江連えづれ　貴俊たかとしの仮面を見事に被り、華麗な歌とダンスを披露していたから、それを見て少しだけ安心した。

　......まぁ彼の脳内ではきっと、騒がしく素のエレンが、『どういう事！？あれ、誰！？』を連発していたんだろうとは思うけれど。

　しかし、ホッとしたのも束の間。
　動揺していたのは、エレンだけでは無かった。
　......玲の方が何故か彼以上に狼狽し、しかもそれが表に出てしまったのだ。

　そして、その結果。
　ライブの第一部が間もなく終わり、これから休憩に入ろうというタイミングでアイツは、やらかしやがった。

　そう。......ダンス中に意識が散漫となった結果、足がもつれ、転倒こそしなかったもののグニャリと足を捻ったのである。
　　
　それにぎょっとしながらも平静を装い、不自然にならぬよう気遣いながら、仁と二人、両サイドから玲を支えるようにして肩を組んだ。

　俺達が即座にそうやってカバーしたお陰で、ファンの子達にはばれていなかったと思う。
　だけど事態は、思ったより深刻で。
　......ライブの真っ最中だというのに玲は、足を捻挫してしまった。

　ギリギリそのまま休憩タイムに、突入したものの。
　まだ後半戦が、丸々残っているのだ。
　......本当に、サイアクだ！

　自分が企てた事とはいえ、ライブをめちゃくちゃにして、ファンの子達を悲しませるような真似をするのは本意ではなかった。
　ただ俺はエレンと鈴に、笑っていて欲しかっただけなのに。