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緊急事態③

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「アハハ、上等!報酬は色を付けてやってくれって、社長には俺から頼んどくよ。
 遅延のアナウンスはもう入れて貰ってるけど、鈴ちゃんはすぐに着替えて。
 あと鈴ちゃんと玲以外のメンバーは、一旦退室!」

 満足げに笑い、高城さんが早くしろと促すように、パンパンと二度手を叩いた。

 その言葉を耳にしたエレンの右眉が、ぴくりと上がる。
 だけど今は、緊急事態。
 高城さんもこれ以上、鈴に隠させるつもりは無いのだろうと考え、色々言いたい事もあったがおとなしく静観することした。

「おい......どういう事?
 この子に本気で、玲の代わりをやらせるつもりじゃないよな?」

 彼女を背に庇うみたいにしながらちょっと強めの口調で問い、いつになく鋭い視線を高城さんに向けるエレン。
 本当にどこまでも真面目で、どこまでも優しい男だ。
 
 だけど高城さんは信じられないモノでも見るみたいな顔をして、相当驚いたような口調で言ったのだ。

「え......ちょっと、待って。
 まさかまだコイツ、気が付いて無かったの!?」

 正解。......その、まさかだよ。
 って言うか、人の良すぎるエレンにだけは面倒だから絶対にバレないようにしろって言ったの、社長と高城さんじゃねぇか!

 今までの苦労を思い、これには危うく俺の方がキレそうになったが、俺が暴言を吐く前に、さっきまでの偉そうな態度が嘘みたいなか細い声で鈴がエレンに言った。
 
「ごめんなさい。
 今日のライブが、終わったら。
 ......エレンさん、ちゃんと全部話すから」

 困惑顔のまま、じっと鈴を見つめるエレン。
 だけど何度も言うが、今は時間がないのだ。
 彼女の言うように、後からたっぷり聞いてくれ。
 なんならもういっそ、お持ち帰りしてくれても良い。むしろ、そうしろ。

「ほら、行くぞエレン。
 女の子が着替えるって言ってんのに、いつまで居座るつもりだよ?」
  
 グッと首根っこを掴み、まだ何か言いたげな様子のエレンを引き摺るようにして退室した。
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