年下俺様アイドルの、正しい飼い方

衝動①

　鈴の頑張りもあり、今日のライブも残すはアンコールの一曲のみとなった。

　ラストを飾るのは俺達の最新シングルに収録されている曲、『Greedグリード』。
　強欲という意味を持つこの曲は、JOKERの絶対的エースと言われる男　仁が主演を務めるサスペンス物の映画の主題歌でもあるから、またしても彼のソロパートが多めなのが全く悔しくないと言えば嘘になる。

　だけどこれが今の俺とアイツの実力の差なのだと思うから、仕方ない。
　......でもいつかは絶対、追い越してやる。

　そんな風に考えているだなんて事はおくびにも出さず、歌い、躍りながら笑顔を振り撒き続ける俺。
　
　予想外のハプニングがあり、いつも以上に緊張感のあるライブとなったが、これでようやく本当に終わるのだと思いホッとしたのもあって、ようやくステージに落ち着いて目を向ける事が出来た。

　いつもJOKERを応援してくれるファンの子達を生で見る事の出来る数少ないこういった機会は、俺だってワクワクするし楽しい。

　今はまだ無理でも、いつか千尋さんにも俺達のライブを見に来て貰えたら良いな、なんて考えていたら。
　......客席に居る、千尋さん本人と目が合った。

　は！？何、なんで！？
　あの人俺らの事なんてぜんっぜん知らなかったはずなのに、なんであんな所関係者席に居るんだよ！！

　しかも高めの位置で髪をお団子にまとめ、ちょっと大きめなJOKERのライブTシャツと、ジーンズなんていう服に身を包んだ、普段目にする事のないラフだけれど可愛過ぎる姿。

　見間違い......だよな？
　......めっちゃ、ビビったぁ！
　でも、だよな。アハハ、見間違いに決まってるじゃん。
　だってアイドルに微塵も興味がないあの千尋さんが、ライブ会場に居るはずねぇし。