年下俺様アイドルの、正しい飼い方

ryon*

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好きだけど②

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「言い訳にしか聞こえないかもだけど、騙すつもりは無かったんだ。
 ......千尋さん、ホントにごめん」

 悲しそうにうつむき、言われた。
 だけどだからと言って簡単に、そっかと笑って許してあげられるような話じゃない。

 最初から彼が何者なのか知っていたら、私はきっと同居しようなんていう提案、いくら出された条件が良かったとしても受け入れて無かっただろうから。
 
 変だなと薄々感じながらも、ちゃんと聞かなかった私も悪いとは思うけれど。

「あのさ。私、思うんだけど。
 ......ちょっと時間を置いた方が、良いんじゃない?
 今はこの子に何を言っても、きっと伝わらない」

 何も言えないでいる私の代わりに、華月が提案してくれた。

「......そっか。確かに、そうかもね。
 分かった、今日のところは一旦ホテルに戻るよ」

 彼の言葉に、申し訳ないけれど少しだけホッとしてしまった。
 すると彼は小さく息を吐き、サングラスを外して、静かな口調で。
 真っ直ぐに、私の目を見て告げた。

「だけど、千尋さん。
 俺、何日でも待ってるから。
 ......落ち着いたら、必ず連絡して?
 勝手に全部無かった事にして出ていって、一方的に終わりにされるのだけは絶対に嫌だから」

 こんな風に言われていなかったら、私は荷物をまとめ、逃げ出していたかもしれない。
 本当に奏くんは、私の性格をよく分かっている。

「ん......分かった」

 彼の手のひらがいつものように私の頭に触れそうになったのだけれど、またしても体が強張ってビクッと震えてしまったものだから、奏くんはちょっと苦笑した。

「飯島さんも、すみませんでした。
 おかげで頭が、ちょっと冷えた」

「ううん、私は何も。
 ......どんな結論が出たとしても、この子を傷付けるような真似だけは許さないから」

 にっこりと微笑んでの、脅し文句。
 しかし奏くんはフッと小さく笑い、答えた。

「俺だって、それは本意じゃないから。
 じゃあね、千尋さん。......またね」

 それから彼は、私達に背を向けた。
 だけど私は、何て答えるのが正解か分からなくて。

 無言で彼の後ろ姿を、見送った。
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