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歓迎会
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フリースペースとして使われている一階の真ん中の部屋に僕はタマと一緒に入った。
部屋は夕闇で薄暗く、電気を付けようと壁をまさぐる。
僕が電気をつけた瞬間、パパパパンと連続する破裂音と共に大量の紙テープと少し遅れて火薬の匂いが僕を襲う。
びっくりしていた気持ちを落ち着けた僕はクラッカーが鳴らされたのだとその時やっとわかった。
ユウジさんとタマ、あと初めて見る二人が僕にクラッカーを向けていたからだ。
「ようこそ!真宵荘へ!」
4人の声が重なる。
なんて言っていいのか分からずに黙ってしまう。
「なににやけてんだよ」
とユウジさんが肘でつついてくる。
ここが僕の居場所になるのだと実感して、無意識に少しにやけてしまったようだ。
「あたしはリナ、よろしく」
「俺はタクヤだ!よろしくな!」
みんながソファーと誰かが持ってきたらしい折りたたみ式の椅子に座ると初めて会う二人は自己紹介してくれた。
「あ、えと、リクトです。よろしくお願いします」
「ユウジから聞いたよ。ふーん、君が新しい迷い猫ね」
リナさんが値踏みするように見てきて大変居心地が悪い。
「おいリナ、そんなに見てやるなよ。緊張しちまうだろ」
タクヤさんが気づいて止めてくれる。
「面白そうな子じゃない」
リナさんはにんまりと笑って言った。
正直その笑顔が怖いんですけど。
「お、酒あんじゃん」
冷蔵庫を漁っていたユウジさんが缶チューハイを手に戻ってくる。
「あんたまだ未成年でしょ?」
リナさんは呆れ気味に言った。
「祝の席くらい良いじゃん」
と言いながらユウジさんが缶チューハイを開ける。
「じゃあ始めますか」
タクヤさんが言うとみんなが飲み物が入った紙コップや缶チューハイを掲げる。
「リクトが真宵荘の仲間になった事を歓迎して…」
「かんぱーい!」
タクヤさんの号令でみんなが唱和しながら紙コップや缶チューハイをぶつけあう。
それを合図に僕の歓迎会が始まった。
デパートで買ってきたらしいオードブルをみんなでつつきながら談笑するこの時間は、それだけで幸せな気持ちになった。
ここが僕の居場所。僕がいることが許される場所。
それを実感できてふいに涙が出そうになる。
「悲しいのか?」
隣のタマが気づいて聞いてくる。
「嬉しいんだよ。ここにいれることが」
「そうか。それはよかったな」
曇のない満面の笑みでタマが笑う。
それにつられて僕も笑う。
幸せだ。これまで感じたことがないくらいに。
歓迎会は深夜まで及んだ。
タマが騒ぎ疲れて僕の肩に体を預けて眠っている。
僕の意識も深いけれど温かい、そんな暗闇に落ちていった。
部屋は夕闇で薄暗く、電気を付けようと壁をまさぐる。
僕が電気をつけた瞬間、パパパパンと連続する破裂音と共に大量の紙テープと少し遅れて火薬の匂いが僕を襲う。
びっくりしていた気持ちを落ち着けた僕はクラッカーが鳴らされたのだとその時やっとわかった。
ユウジさんとタマ、あと初めて見る二人が僕にクラッカーを向けていたからだ。
「ようこそ!真宵荘へ!」
4人の声が重なる。
なんて言っていいのか分からずに黙ってしまう。
「なににやけてんだよ」
とユウジさんが肘でつついてくる。
ここが僕の居場所になるのだと実感して、無意識に少しにやけてしまったようだ。
「あたしはリナ、よろしく」
「俺はタクヤだ!よろしくな!」
みんながソファーと誰かが持ってきたらしい折りたたみ式の椅子に座ると初めて会う二人は自己紹介してくれた。
「あ、えと、リクトです。よろしくお願いします」
「ユウジから聞いたよ。ふーん、君が新しい迷い猫ね」
リナさんが値踏みするように見てきて大変居心地が悪い。
「おいリナ、そんなに見てやるなよ。緊張しちまうだろ」
タクヤさんが気づいて止めてくれる。
「面白そうな子じゃない」
リナさんはにんまりと笑って言った。
正直その笑顔が怖いんですけど。
「お、酒あんじゃん」
冷蔵庫を漁っていたユウジさんが缶チューハイを手に戻ってくる。
「あんたまだ未成年でしょ?」
リナさんは呆れ気味に言った。
「祝の席くらい良いじゃん」
と言いながらユウジさんが缶チューハイを開ける。
「じゃあ始めますか」
タクヤさんが言うとみんなが飲み物が入った紙コップや缶チューハイを掲げる。
「リクトが真宵荘の仲間になった事を歓迎して…」
「かんぱーい!」
タクヤさんの号令でみんなが唱和しながら紙コップや缶チューハイをぶつけあう。
それを合図に僕の歓迎会が始まった。
デパートで買ってきたらしいオードブルをみんなでつつきながら談笑するこの時間は、それだけで幸せな気持ちになった。
ここが僕の居場所。僕がいることが許される場所。
それを実感できてふいに涙が出そうになる。
「悲しいのか?」
隣のタマが気づいて聞いてくる。
「嬉しいんだよ。ここにいれることが」
「そうか。それはよかったな」
曇のない満面の笑みでタマが笑う。
それにつられて僕も笑う。
幸せだ。これまで感じたことがないくらいに。
歓迎会は深夜まで及んだ。
タマが騒ぎ疲れて僕の肩に体を預けて眠っている。
僕の意識も深いけれど温かい、そんな暗闇に落ちていった。
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