短編集【BLACK】

タピオカ

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トンネルの奥には

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 俺は、噂話は確かめたい人間だ!近所で噂の、長い長いトンネル、とやらを見に来たんだ。
 そのトンネルはとても長くて、その通り抜けた先は誰も知らないらしいが。
 トンネルを見てきた人の話によると、途中で飽きて帰ってきたんだとよ。

「全く、せっかく長いトンネルをわざわざ見に行ったってのに、最後まで見ずに、途中で帰るなんて奴は馬鹿だな!」

 まあ、一人でトンネルの中をずっと車に乗って運転するのはさ、暇ではあるし独り言でも喋るとする!
 進んでも進んでも同じ景色だし、飽きるのも分からなくは無いけどな!
 だが食料もあるし、途中で止まって、退屈しのぎにするゲームも持ってきてるから平気だぜ。



 …もう、数日か、だいぶトンネルの中を進んだかな。しかし、なんだか暑い、暑すぎるぞ!今は夏じゃないが、冷房でもつけようか。

「…これでもまだ暑い」

 進むにつれて、どんどん暑くなるな!
 全く、なんでこんなに暑いんだよ!…ん?向こうに見える、あの白いのはなんだ?
 よし、近くまで来た!

「…ぎゃああああ!骨が沢山!?」

 …衝撃的すぎる!怖いけど車から降りて、土産話のためにも、この骨がどういうことなのか確かめるぞ。


 …ふぅ。しかし、車から降りると更に暑い。全く、どうなってるんだ!この季節外れの温度は。
 オマケにトンネルの中で、空気も悪いからか、少し気分が悪くなってきたぞ。

「う~ん、骨があるということだけしか、分からないな、車の中に戻るか…」

 …あれ?車へと足を進めたはずが、進めずに倒れてしまったぞ。
 起き上がれない、何でだ。
 …というか、骨に気を取られていたが、今とても苦しい!

「どうなってんだ、俺の体…」

 …あぁ、そうか!もしかして、ここには毒か何かが漂っているのか。この暑さといい、とてもおかしな場所なんだな。 
 だからトンネルの抜けた先を、誰も知ることはできないわけか。

 飽きずにここまで来たやつは俺含め、探究心が強いんだよな。
 この骨を見て怖くありつつも、一目見ようと車から降りて近づくから、空気中の毒にやられるわけだ。

「そして俺もこの骨と、同じ存在になるのか…。俺がこれを見つけたように、このトンネルに探究心が強い奴が再び訪れたら、俺の骨を見つけるのかな…」

 くそっ…そんなの嫌だ!この骨と同じ存在になりたくねぇ!
 死にたくねぇ、生きていたいんだ!死にたくねぇ!死にたくねぇ!死にたくねぇ!死にたく………
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