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13話 消える二人
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さて、現在僕は日高さんの妹である奈央ちゃんと一緒に歩いているんだけど、全くもって会話が無い。本当にただ歩いてるだけ。
目的地であるショッピングモールに着けば少しは会話ができるかな? って思ったけどそんなこともなかった。
なのにずっと僕の服の裾を掴んでるんだよね。なんだか親戚の子を連れて歩いてるみたい。同級生だけど。
「…………」
ん? 突然奈央ちゃんの足が止まった。どうしたんだろう? このエリアは婦人服売り場ですぐ近くにランジェリーショップもあるけどまさかね。
「何か必要なもの見つけたの?」
「……替えの……下着」
……だよね。だと思ったよ。あとやっぱり声可愛い。
「じゃあ僕はそこのベンチにいるから」
「……(コク)」
テクテクと店の中に足を進める奈央ちゃんを見送ると、僕は店の向かいにあるベンチに座ってスマホを取り出した。
店から出てくる人の目? そんなの気にならないよ。彼女を待ってる感が出てるはずだからね。
これで相手が彩音さんだったら、僕も店内までついていって自分好みの下着を選ぶんだけどね。
はいそこキモイとか言わない。童貞だからね。妄想力はレベルMAXだよ。
さて、奈央ちゃんが出てくるまでゲームでもやって待っていよう。
──遅い。もう30分は待ってる。その間に和野先生から五通もメッセージが届いたんだから。『さっき車で走ってたら見えたんだけど、赤坂くん女の子と一緒にじゃなかった!? どういうこと!? ねえ! どういうこと!?』って。
下着って三枚セットで980円とかじゃないの? 僕はいつもそれなんだけど。女の子は違うの? だけど確認する為に顔を上げるわけにはいかない。
見られるのはいいんだけど、「あ、あの子下着見てる~」って思われるのは無理なんだ。
だから早く出てきてくれないかな?
と、思ったところで下を向いていた僕の視界の端に足が見えた。その爪先はピタリと揃えられて僕に向いている。
やっと戻って来たみたいだね。
「気に入ったの買えた? なら次はどこにする? 布団とか見に行──え?」
顔をあげた時、そこにいたのは奈央ちゃんじゃなくて彩音さん。……彩音さん!?
「…………」
彩音さんは僕とランジェリーショップを交互に見ると、僕の脳天を打ち貫きそうな視線で見てくる。
ドキッとした。あ、間違えた。ゾクッとした。
イケナイ。これはイケナイ。このままでは僕が下着を選んでる女の人を見てニヤける変態だと思われてしまう。「あ、あの人清純そうに見えてそーゆーの付けるんだ。ふ~ん……ビッチじゃん」って思ってると勘違いされてしまう!
だから弁解の為に口を開こうとした時、彩音さんの隣にランジェリーショップの紙袋を持った奈央ちゃんが立った。そして目が合う二人。次の瞬間──
「貴様は……っ!」
ドえらいドスの効いた声が奈央ちゃんの方から聞こえた。……え?
「ここであったが100年目! あの日の恨み、はらさせてもらおうか!」
めっちゃ流暢に時代劇みたいな事を喋る奈央ちゃん。待って。理解が追いつかないんだけど。キミ誰? そして彩音さんはキョトンとしてないで反応してあげて。奈央ちゃんが痛い子みたいだから! 実際イタイけれども!
「あの日の苦しみ……決して忘れることは無い。想い人を奪われたこの胸の痛みは決して消えぬ……」
彩音さぁぁぁぁん! 今度は何をしたの!? 彩音さんは何もしてないって証明したいのに、次から次へと被害者出てきて僕はいったいどうすればいいのか分からなくなってきたよ!
そこで奈央ちゃんの手から紙袋が落ちた。
伝わる衝撃。開く袋の口。飛び出る下着。しかもなんかちょっとえっちぃの。
それを見た彩音さんは僕を見て驚いたような顔をする。いや、今? 違うびっくりするような事が目の前で起きてたよね?
「やだ……見ないで……」
奈央ちゃんも奈央ちゃんでそこで恥ずかしがりモードにならないでくれるかな? どっちが本当なのか頭が混乱してくるよ。
もうほんとに訳が分からなくて下を向いて頭を抱えた時、若い女の子の声でこんな会話が聞こえた。
「西館のアニメ斎藤に【オレ奏】のアクキーとクリアファイル入ったんだって。早く買いにいこ~?」
「え、それやばいジャン! 売り切れる前にちょっぱやで行かないと! 縮地使わないとジャン!」
「そうだよ! 縮地を越えた縮地で行かないと!」
──情報量の多い会話だなぁ。縮地って簡単に使わないで貰えるかな? 僕、縮地にはちょっとうるさいよ? 昔いろいろ調べたから。
ってそれどころじゃないや。彩音さんと奈央ちゃんだ。どうにかして収拾つけないと……って思ったのに、
「あれ?」
僕が再び顔をあげた時、二人の姿は消えていた。
見回してもどこにも見当たらない。
「…………神隠し?」
目的地であるショッピングモールに着けば少しは会話ができるかな? って思ったけどそんなこともなかった。
なのにずっと僕の服の裾を掴んでるんだよね。なんだか親戚の子を連れて歩いてるみたい。同級生だけど。
「…………」
ん? 突然奈央ちゃんの足が止まった。どうしたんだろう? このエリアは婦人服売り場ですぐ近くにランジェリーショップもあるけどまさかね。
「何か必要なもの見つけたの?」
「……替えの……下着」
……だよね。だと思ったよ。あとやっぱり声可愛い。
「じゃあ僕はそこのベンチにいるから」
「……(コク)」
テクテクと店の中に足を進める奈央ちゃんを見送ると、僕は店の向かいにあるベンチに座ってスマホを取り出した。
店から出てくる人の目? そんなの気にならないよ。彼女を待ってる感が出てるはずだからね。
これで相手が彩音さんだったら、僕も店内までついていって自分好みの下着を選ぶんだけどね。
はいそこキモイとか言わない。童貞だからね。妄想力はレベルMAXだよ。
さて、奈央ちゃんが出てくるまでゲームでもやって待っていよう。
──遅い。もう30分は待ってる。その間に和野先生から五通もメッセージが届いたんだから。『さっき車で走ってたら見えたんだけど、赤坂くん女の子と一緒にじゃなかった!? どういうこと!? ねえ! どういうこと!?』って。
下着って三枚セットで980円とかじゃないの? 僕はいつもそれなんだけど。女の子は違うの? だけど確認する為に顔を上げるわけにはいかない。
見られるのはいいんだけど、「あ、あの子下着見てる~」って思われるのは無理なんだ。
だから早く出てきてくれないかな?
と、思ったところで下を向いていた僕の視界の端に足が見えた。その爪先はピタリと揃えられて僕に向いている。
やっと戻って来たみたいだね。
「気に入ったの買えた? なら次はどこにする? 布団とか見に行──え?」
顔をあげた時、そこにいたのは奈央ちゃんじゃなくて彩音さん。……彩音さん!?
「…………」
彩音さんは僕とランジェリーショップを交互に見ると、僕の脳天を打ち貫きそうな視線で見てくる。
ドキッとした。あ、間違えた。ゾクッとした。
イケナイ。これはイケナイ。このままでは僕が下着を選んでる女の人を見てニヤける変態だと思われてしまう。「あ、あの人清純そうに見えてそーゆーの付けるんだ。ふ~ん……ビッチじゃん」って思ってると勘違いされてしまう!
だから弁解の為に口を開こうとした時、彩音さんの隣にランジェリーショップの紙袋を持った奈央ちゃんが立った。そして目が合う二人。次の瞬間──
「貴様は……っ!」
ドえらいドスの効いた声が奈央ちゃんの方から聞こえた。……え?
「ここであったが100年目! あの日の恨み、はらさせてもらおうか!」
めっちゃ流暢に時代劇みたいな事を喋る奈央ちゃん。待って。理解が追いつかないんだけど。キミ誰? そして彩音さんはキョトンとしてないで反応してあげて。奈央ちゃんが痛い子みたいだから! 実際イタイけれども!
「あの日の苦しみ……決して忘れることは無い。想い人を奪われたこの胸の痛みは決して消えぬ……」
彩音さぁぁぁぁん! 今度は何をしたの!? 彩音さんは何もしてないって証明したいのに、次から次へと被害者出てきて僕はいったいどうすればいいのか分からなくなってきたよ!
そこで奈央ちゃんの手から紙袋が落ちた。
伝わる衝撃。開く袋の口。飛び出る下着。しかもなんかちょっとえっちぃの。
それを見た彩音さんは僕を見て驚いたような顔をする。いや、今? 違うびっくりするような事が目の前で起きてたよね?
「やだ……見ないで……」
奈央ちゃんも奈央ちゃんでそこで恥ずかしがりモードにならないでくれるかな? どっちが本当なのか頭が混乱してくるよ。
もうほんとに訳が分からなくて下を向いて頭を抱えた時、若い女の子の声でこんな会話が聞こえた。
「西館のアニメ斎藤に【オレ奏】のアクキーとクリアファイル入ったんだって。早く買いにいこ~?」
「え、それやばいジャン! 売り切れる前にちょっぱやで行かないと! 縮地使わないとジャン!」
「そうだよ! 縮地を越えた縮地で行かないと!」
──情報量の多い会話だなぁ。縮地って簡単に使わないで貰えるかな? 僕、縮地にはちょっとうるさいよ? 昔いろいろ調べたから。
ってそれどころじゃないや。彩音さんと奈央ちゃんだ。どうにかして収拾つけないと……って思ったのに、
「あれ?」
僕が再び顔をあげた時、二人の姿は消えていた。
見回してもどこにも見当たらない。
「…………神隠し?」
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