エルダーストリア-手垢まみれの魔勇譚―

秋山静夜

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第三譚:憎悪爆散の魔人譚

その中身

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「ちょっと、今わざとイリアから私を引き離したでしょ。アンタがイリアのことを信用してないようには見えなかったけど?」
 イリアたちが外に出ていき、取り残されたアミスアテナはさっそくクロムに物言いをつける。


「……まあ、人を見る目はそれなりにある、つもりだ。だが世に出回っている出来損ないならいざ知らず、お前のような聖剣なんぞで斬られた日にはあの小僧は生き延びれまい。それは少し、忍びなくてな。」


「──────アンタ、何者なの? 普通の人間なら私を手にしたからって傷を負うことはない。逆にただの魔族が聖剣わたしを手にした日にはそんな火傷じゃ済まないわ。」

 クロムの右手はアミスアテナを手にしたことにより軽い火傷を負っている。

 クロムはその手を見つめながら、

「何者、か。それはこっちの台詞だな。?」

「何ってそりゃ、由緒正しい正真正銘の聖け……」


「違う、そうじゃない。この聖剣がまごうことなき本物だってのは一目見て分かった。間違いなくコレはおれたち刀鍛治が人生を掛けて追いつこうとした一品だ。おれが聞きたいのはその聖剣の中に潜んでいるお前は何者かってことだ。」


「!? 何で、それを、」


「百年以上、刀と向き合っているからこそ見えるモノもある。お前は本来聖剣に備わっていないはずの異物だ。」


「そう、そんなことが分かるんだ。──────でも答えられないわね。…………いえ、答えたくなんかないわ。」


「そうか、それならおれと一緒だな。おれもお前さんの質問には答えんさ。」


「………………嫌な男。って、さっきからあなた何をしているの?」

 クロムは先ほどから何事かゴソゴソと準備をしていた。


「いやなに、これでも刀鍛冶の端くれだ。せっかく本当の聖剣を拝めるんだから、じっくりと研究しない手はないだろ?」
 クロムの厳つい手がアミスアテナへと伸びていく。

「!? ちょっと、イヤー! やっぱりイリア助けて~!! 私、汚されちゃうー!!!!」

 アミスアテナの悲痛な叫びはイリアに届くこともなく、ただ虚空へと響いて消えていった。

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